概要
消費税は、国内において行われる資産の譲渡等及び特定仕入れ並びに保税地域から引き取られる外国貨物を課税の対象としていますが、その取引の中には、(1)消費に負担を求める税としての性格から見て課税の対象とすることになじまないものや、(2)社会政策的な配慮から課税することが適当でないものがあります。
このような取引については、非課税取引として消費税を課さないこととされていますが、消費全般に広く負担を求めるという消費税の性格上、極めて限定されています(消法6①、②、別表第一及び第二)。
なお、非課税の規定は、税法以外の法律の規定を引用している場合がほとんどです。
国内取引における非課税
国内において行われる資産の譲渡等のうち、次に掲げるものが、非課税です(消法6①、別表第一)。
(1)税の性格から課税対象とすることになじまないもの
1 土地の譲渡、土地の貸付け
2 有価証券、支払手段などの譲渡
3 利子を対価とする金銭の貸付けなど
4-1 郵便切手、印紙などの譲渡
4-2 商品券、プリペイドカードなどの譲渡
5-1 住民票・戸籍抄本の交付等の行政サービス手数料など
5-2 外国為替など
(2)社会政策的な配慮に基づくもの
6 社会保険医療など
7-1 介護保険法に基づく居宅サービスなど
7-2 社会福祉事業など
8 助産
9 埋葬料、火葬料
10 身体障害者用物品の譲渡など
11 授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学証明等手数料など
12 教科用図書の譲渡
13 住宅の貸付け
1 土地の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合等を除く。)(消法別表1一)
土地の上に存する権利
土地には、「土地の上に存する権利」を含みますが、「土地の上に存する権利」とは、地上権(空中地上権を含む。)、土地の賃借権、地役権、永小作権等の土地の使用収益に関する権利をいいます(消基通6-1-2)。土地の使用収益に関する権利とは、土地そのものを使用収益することを目的とした権利のことです。
鉱業権、土石採取権、温泉利用権及び土地を目的物とした抵当権はこれに含まれず課税対象とされます。
一時的に使用させる場合等
課税対象とされる「一時的に使用させる場合等」とは、「土地の貸付期間が1月に満たない場合」及び「建物、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」をいいます(消令8)。
「土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合」に該当するかどうかは、その土地の貸付けに係る契約において定められた貸付期間によって判定します(消基通6-1-4)。
「その他の施設の利用」に伴って土地が使用される場合のその土地を使用させる行為は土地の貸付けから除かれますので、例えば、建物(オフィスビル等)、野球場、プール又はテニスコート等の施設の利用が土地の使用を伴うことになるとしても、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれないため、テニスコートや野球場等の貸付けは課税対象とされます(消基通6-1-5)。
なお、この場合において、建物の貸付け等に係る対価と土地の貸付けに係る対価とに区分しているときであっても、その対価の額の合計額がその建物の貸付け等に係る対価の額となります(消基通6-1-5(注)2)。
事業者が駐車場又は駐輪場として土地を利用させた場合において、その土地につき駐車場又は駐輪場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき(駐車又は駐輪に係る車両又は自転車の管理をしている場合を除く。)は、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれます(消基通6-1-5(注)1)。
土地(非課税)と建物(課税)を一括して譲渡した場合
土地(非課税)と建物(課税)を一括して譲渡した場合には、原則として、その全体の譲渡代金を土地と建物のそれぞれの対価の額に合理的に区分して、土地と建物の譲渡対価を算出することになります。
なお、土地、建物等を同一の者に対し同時に譲渡した場合において、それぞれの対価につき、所得税又は法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例の計算における取扱いにより区分しているときは、その区分したところによります(消基通10-1-5)。
合理的に区分されていない場合には、それぞれの譲渡に係る通常の取引価額を基礎として区分することになります。
駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合は、消費税の課税対象であるとされた大阪高裁平成28年7月28日判決(税資266号-115(順号12893))要旨
(消費税)法が土地の貸付けを非課税取引としている趣旨に鑑みれば、土地の使用を伴う取引であっても、駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合には、駐車場という施設の貸付け又は車両の管理という役務の提供について消費を観念することができるから、単なる土地の貸付けと同列に論じることはできず、消費税の課税対象とすることが合理的である。(消費税法)施行令8条は、このような観点から、土地の貸付けにつき、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合を消費税の課税対象として定めているものと解される。したがって、土地の貸付けであっても、それが駐車場という施設の利用に伴って土地が使用されるものであれば、法6条1項所定の非課税取引には当たらず、法4条1項により消費税の課税対象とされることとなる。(原審判決引用)
施行令8条の「駐車場」とは、屋根付きやシャッター付き、ビル式駐車場のみを指すのではない。駐車場として使えるように通路部分も含めて整地し、区画割のためにロープや白線を設置し、駐車場所を特定するために番号が記載されたコンクリートブロックや札を設置することによって、限られた面積の土地上において相当数の車両を効率的かつ整然と駐車させることができるという効果がもたらされているのであれば、そのような設備も駐車場ということができる。
2 有価証券及び支払手段等の譲渡(消法別表1二)
有価証券と有価証券に類するもの(消基通6-2-1)
非課税の対象となる「有価証券」とは、例えば次のものをいいます。
・ 国債証券、地方債証券、社債券、新株予約権証券、株券
・ 日本銀行等の発行する出資証券
・ 投資信託、貸付信託の受益証券
・ コマーシャル・ペーパー(CP)、外国法人が発行する譲渡性預金証書(海外CD)
なお、船荷証券、倉荷証券、複合運送証券又はゴルフ会員権(株式、出資若しくは預託の形態のもの)等は、非課税とされる有価証券に含まれず課税対象とされます(消基通6-2-2)。
船荷証券等の譲渡は、これらに表彰された資産の譲渡が行われたことになり、また、ゴルフ会員権等の譲渡は、ゴルフ場を優先して利用できる権利等の譲渡が行われたことになるため、非課税の対象となる有価証券等の範囲から除かれています。
非課税の対象となる「有価証券に類するもの」とは、例えば次のものをいいます。
・ 登録された国債、地方債、社債、株券の発行がない株式等
・ 合同会社等の社員の持分、協同組合等の組合員や会員の持分等
・ 貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権
支払手段と支払手段に類するもの(消基通6-2-3)
非課税の対象となる「支払手段」とは、例えば次のものをいいますが、これらのうち収集品や販売用のものは課税対象とされます。
・ 銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨
・ 小切手(旅行小切手を含む。)、為替手形、約束手形、信用状
非課税の対象となる「支払手段に類するもの」とは、例えば次のものをいいます。
・ 暗号資産
3 利子を対価とする貸付金等(消法別表1三)
例えば、次のものが非課税とされます(消基通6-3-1)。
・ 国債、地方債、社債、新株予約権付社債、預金、貯金及び貸付金の利子
・ 集団投資信託、法人課税信託等の収益として分配される分配金
・ 信用の保証料、保険料、共済掛金、手形の割引料
・ 金銭債権の買取又は立替払に係る差益
・ 割賦販売、ローン提携販売及び割賦購入あっせんの手数料(契約においてその額が明示されているものに限る。)
クレジット加盟店が信販会社に対して支払うクレジット手数料は非課税となります。法的には、加盟店が信販会社に債権譲渡をし、信販会社が加盟店に譲渡代金を支払うことになります。
つまり、クレジット手数料とは、信販会社が加盟店から譲り受ける債権の額と加盟店への支払額との差額(債権譲渡の対価が安くなる部分)であり、消費税法施行令10条3項8号に該当し、非課税となります。
クレジット手数料は消費税法上の非課税取引の対価となり、課税仕入れの対象とならないとされた東京地裁平成11年1月29日判決(税資240号574頁)要旨
代金の返還事務の処理に照らしても、本件手数料は一般的なカード会員組織の利用の対価ではなく、個別的な売買代金の回収に対するものであることが明らかであり、本件カード会社及びカード会員にとつても、原告のためにカード会員からの代金回収を行う役務の提供は、他のカード利用代金の回収と同様、専ら代金の決済手段として認識されているものと解することができ、その法律構成も債権の譲渡又は立替払(加盟店契約又は会員規約において代金債権の譲渡が記載されていないもの)とされていることが認められる。しかも、本件カード会社の提供する具体的な事務内容は極めて定型化されていることからすると、本件手数料は、右事務の対価というよりも、迅速簡便な販売、回収組織としてのカード会員組織の利用の対価という面を有するのであつて、その法的な性質は、他のカード利用代金に関する振替委託業務と同様に具体的に発生した商品代金の決済手段のための債権の譲渡又は立替払に止まるものというべきである。
本件手数料は、加盟店契約又は会員規約に規定された個別的な売買代金の決済手段としての債権譲渡又は立替払の差益というべきであるから、これに対して消費税が課されることはない。
4-1 郵便切手類、印紙及び証紙の譲渡(消法別表1四イ、ロ)
次のものが非課税とされます(消基通6-4-1)。
・ 日本郵便株式会社が行う「郵便切手類」又は印紙の譲渡
・ 簡易郵便局法第7条第1項に規定する委託業務を行う施設又は郵便切手類販売所、印紙売りさばき所が行う郵便切手類又は印紙の譲渡
・ 地方公共団体又は売りさばき人が行う証紙の譲渡
「郵便切手類」とは、郵便切手、郵便葉書、郵便書簡のことをいい、郵便切手帳、現金封筒、小包郵便物包装物品等は含まれません(消基通6-4-2)。
郵便切手類等がいわゆる金券ショップやチケット業者で販売される場合には課税対象とされます。
4-2 物品切手等の譲渡(消法別表1四ハ)
「物品切手等」とは、「物品の給付請求権を表彰する証書」及び「役務の提供又は物品の貸付けに係る請求権を表彰する証書」をいいますが、例えば、商品券、ギフト券、ビール券等が該当します(消基通6-4-3、6-4-4)。
商品券などの物品切手等の譲渡に課税すると、最終的に提供を受ける商品やサービスが同じ一つのものであるにもかかわらず、二重に課税されることになります。したがって、このような二重課税を避けるために商品券などの譲渡には課税しないことになっています。
なお、次の要件のいずれも満たす証書は、物品切手等として取り扱われます。
イ 証書と引換に一定の物品の給付や貸付け、特定の役務の提供を約するものであること
ロ 給付請求権利者が証書と引換えに一定の物品の給付や貸付け、特定の役務の提供を受けたことによって、その対価の全部又は一部の支払債務を負担しないものであること
物品(乗車券を含む。)の譲渡又は役務の提供を受けるためのカード(プリペイドカード等)その他これに類するもの(数回にわたって任意の金額部分だけの給付を受けるものを含む。)は、物品切手等に該当します。
なお、百貨店等の事業者が、物品切手等を発行し、交付した場合において、その交付に係る相手先から収受する金品は、資産の譲渡等の対価に該当しません(消基通6-4-5)。つまり、物品切手等の「発行」は不課税、「譲渡」は非課税となります。
上記「4-1 郵便切手類、印紙及び証紙の譲渡」 で、郵便切手類等がいわゆる金券ショップやチケット業者で販売される場合には課税対象とされると解説しましたが、物品切手等の販売は非課税取引になります。
5-1 国、地方公共団体等の手数料等(消法別表1五イ、ロ、ハ)
住民票、戸籍抄本の交付などの行政手数料等を対価とする役務の提供が、これに該当しますが、次のものが非課税とされます(消基通6-5-1、6-5-2)。
① 次の全ての要件を満たす手数料等
イ 国、地方公共団体、公共法人、公益法人等が法令に基づいて行う事務で、登記、登録、許可、指定、検査、証明、公文書の交付等に係るものであること
ロ 手数料等の徴収が法令に基づくものであること
② ①イに類する一定の登録等(法令にその徴収の根拠が規定されていないもの)
③ 執行官、公証人の手数料
5-2 外国為替業務に係る役務の提供(消法別表1五ニ)
次のものが非課税とされます(消基通6-5-3)。
・ 外国為替取引、対外支払手段(信用状、旅行小切手)の発行及び売買
6 公的な医療保障制度に係る医療の給付等(消法別表1六)
例えば、次の医療等が非課税とされます(消基通6-6-1)。
・ 健康保険法、国民健康保険法、船員保険法、国家公務員共済組合法等の規定に基づいて行われる社会保険医療等
・ 高齢者の医療の確保に関する法律の規定に基づく療養の給付、入院時食事療養費・特別療養費の支給に係る療養等
・ 生活保護法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の規定に基づく医療等
・ 公害健康被害の補償等に関する法律の規定に基づく療養の給付等
健康保険法等の規定に基づかない医療等は、非課税とはなりません。例えば、美容整形、健康診断(人間ドック)、診断書作成料等の自由診療は非課税とはなりません。
また、健康保険法等の規定に基づく医療等であっても、差額ベット代、特別給食費等は非課税とはなりません(消基通6-6-3)。
7-1 介護保険に係る資産の譲渡等(消法別表1七イ)
例えば、介護保険法の規定に基づいて行われる次のものが非課税とされます(消基通6-7-1~6-7-2)。
・ 居宅要介護者の居宅において行われる訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション等
・ 居宅要介護者について、特別養護老人ホーム等の施設に通わせて行う通所介護、通所リハビリテーション等
・ 居宅要介護者について、介護老人保健施設等に短期間入所させて行う短期入所生活介護、短期入所療養介護等
・ 特別養護老人ホームに入所する要介護者について行われる介護福祉施設サービス
介護保険制度では、厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の9割が保険給付されることになりますが、原則として、要介護者が負担する1割相当額も消費税は非課税となります。
ただし、以下のような場合は課税対象となります(国税庁HP質疑応答事例「要介護者が負担する介護サービス費用の取扱い」)。
居宅介護サービスの場合で、利用者の選定に係る負担部分(利用者の居宅の所在地が通常の事業実施区域となっていない介護サービス事業者を利用した場合の交通費や訪問入浴介護における特別の浴槽水等)は、課税対象となります。また、施設介護サービス費の支給対象となる施設サービスの場合で、要介護者が選定する特別な居室の室料、特別な食事の料金等の負担部分については、課税対象となります。
なお、居宅サービス事業者等からの委託により、他の事業者が介護サービスに係る業務の一部、例えば、調理、清掃等の業務を行う場合、その委託業務は、居宅サービス事業者等に対して行われるものであるため、非課税とはなりません(消基通6-7-4)。
7-2 社会福祉法に規定する社会福祉事業等(消法別表1七ロ、ハ)
例えば、次の事業に係るものが非課税とされます(消基通6-7-5~6-7-9)。
・ 生活保護法に規定する救護施設、更生施設等を経営する事業
・ 児童福祉法に規定する乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、助産施設、保育所等を経営する事業
・ 老人福祉法に規定する養護老人ホーム等を経営する事業
・ 児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法等に規定する児童自立生活援助事業、老人デイサービス事業、介助犬訓練事業などの事業
・ 更生保護事業法に規定する更生保護事業
授産施設等における生産活動としての作業に基づく資産の譲渡等は課税対象とされます(消基通6-7-5)。
なお、社会福祉関係の各法律の規定に該当するかどうかは、税法の解釈ではなく、各法律の解釈によりますので、市区町村や都道府県の担当部署に確認するなど、慎重に対応する必要があります。消費税は、各法律に規定する事業に該当すれば非課税、該当しなければ課税ということになります。
8 助産に係る資産の譲渡等(消法別表1八)
医師、助産師等による助産に係る資産の譲渡等ですが、例えば、次のものが非課税とされます(消基通6-8-1)。
・ 妊娠しているか否かの検査
・ 妊娠していることが判明した時以降の検診、入院
・ 分娩の介助
・ 出産の日以後2月以内に行われる母体の回復検診
・ 新生児に係る検診及び入院
なお、保険診療に係る部分は「6の公的医療」として非課税とされます。
9 埋葬料、火葬料等(消法別表1九)
墓地、埋葬等に関する法律に規定された次のものは非課税とされます(消基通6-9-1)。
・ 死体を土中に葬るための埋葬料
・ 死体を葬るために焼く場合の火葬料
なお、葬儀業者等に支払う葬儀料は課税対象とされます。
10 身体障害者用物品の譲渡、貸付け等(消法別表1十)
一定の身体障害者用物品の譲渡、貸付け、製作の請負及び修理は、非課税とされます(消令14の4、平成3年6月7日厚生省告示第130号)。
対象とされる身体障害者用物品とは、義肢、視覚障害者安全つえ、義眼、点字器、車椅子等で身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有するものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定したものとされています。
具体的には、「平成3年6月7日厚生省告示第130号」に規定されていますが、この告示に掲げられていない物品については、身体障害者が購入する場合であっても非課税とはなりません(消基通6-10-1)。
また、この告示に掲げられている物品であれば、それを購入する者が身体障害者以外の者であっても非課税となります。
11 学校等の授業料、入学金、施設設備費等(消法別表1十一)
例えば、次のもの(学校教育法に規定する学校、専修学校、各種学校及び職業能力開発校等において行われるものに限る。)が非課税とされます(消令14の5)。
・ 授業料
・ 入学金及び入園料
・ 施設設備費
・ 入学・入園のための試験に係る検定料
・ 在学証明、成績証明等に係る手数料
学校教育法に規定する学校、専修学校及び各種学校が受け取る授業料、入学検定料は非課税となりますが、これらの学校等に該当しない予備校、進学塾、そろばん塾等が受け取る授業料、入学検定料は課税されます(国税庁HP質疑応答事例「予備校等の授業料」)。
学習塾、英会話教室、自動車教習所、各種のカルチャースクール等、学習塾やけいこごと塾(茶道、ピアノ、剣道、水泳等)は、一般的には学校教育法上の各種学校とはなっていないと認められることから、当該塾等の入学金、授業料等は課税の対象となります(国税庁HP質疑応答事例「学習塾等の授業料」)。
なお、これらの塾等であっても、学校教育法134条1項の各種学校に該当し、年間授業時間数等一定の要件を満たすものに係る入学金、授業料等は非課税となります(法別表第一11ハ)。
平成13年4月9日裁決(裁事61集635頁)
(1)事案の概要
本件は、専修学校の認可を受けた大学予備校を経営する審査請求人Xが、同校の入校生を主な対象者とした大学受験のための夏期講習会及び冬期講習会を開催した場合に、当該講習会における役務の提供が消費税法上非課税となる専修学校の「一般課程」における教育として行う役務の提供に該当するか否かを争点とする事案である。
(2)裁決要旨
Xは、 本件講習会は本件予備校が設置する課程として行っている授業の一環であり、専ら本校生徒を対象に行っているので、 本校生徒から徴収する本件講習料は消費税法に規定する非課税取引に係る対価であると主張する。
しかしながら、 本件予備校の学則では教養一般課程に設置された各学科の教科、 科目及び授業時間の定めの中に本件講習会の授業時数が含まれておらず、 また、 休業日の定めの中で教育上必要がありやむを得ない事情があった場合以外は授業を行わないとし、 夏期休業及び冬期休業の期間を具体的に規定しているにもかかわらず、 本件講習会は本件予備校が授業を行わない休業期間中に開催していること及び受講者を本校生徒に限らず大学入学試験を受験する者を対象に広く一般に募集していることからして、 本件予備校の課程とは別枠に設置された独立した授業、 講習と認められ、 消費税法の非課税規定にある課程における教育としての役務の提供に該当しないからXの主張には理由がない。
12 教科用図書の譲渡(消法別表1十二)
次のものが非課税とされます(消基通6-12-1)。
・ 文部科学大臣の検定を受けた教科用図書の譲渡
・ 文部科学省が著作の名義を有する教科用図書の譲渡
なお、参考書又は問題集等で学校における教育を補助するためのいわゆる補助教材の譲渡については、その補助教材を学校が指定した場合であっても非課税とはなりません(消基通6-12-3)。
13 住宅の貸付け(消法別表1十三)
住宅の貸付けで非課税となるのは、契約において人の居住の用に供することが明らかにされているもの(契約において貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に、当該貸付けに係る賃貸人や住宅の状況等からみて、人の居住の用に供されていることが明らかな場合を含む。消基通6-13-11)に限られます。
なお、次に該当する場合は住宅の貸付けから除かれ、非課税とはなりません(消令16の2)。
イ 貸付期間が1月未満の場合
ロ 旅館業法2条1項に規定する旅館業に係る施設の貸付けに該当する場合
例えば、ホテル、旅館、リゾートマンション、貸別荘等は、その利用期間が1月以上となる場合であっても、非課税とはなりません(消基通6-13-4)。
住宅の範囲
住宅とは、人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいい、一戸建ての住宅のほかマンション、アパート、社宅、寮等が含まれます。
庭、塀等住宅の附属設備及び家具、じゅうたん、照明設備、冷暖房設備等通常住宅に付随する施設は、住宅に含まれます(消基通6-13-1)。
なお、住宅の附属設備又は通常住宅に付随する施設等と認められるものであっても、当事者間において住宅とは別の賃貸借の目的物として、住宅の貸付けの対価とは別に使用料等を収受している場合には、当該設備又は施設の使用料等は非課税とはなりません。
駐車場付き住宅の貸付け
駐車場付き住宅における駐車場の貸付けは、次のいずれにも該当する場合、非課税となります(消基通6-13-3)。
イ 一戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されており、かつ、自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられている等の場合
ロ 家賃とは別に駐車場使用料等を収受していない場合
この消費税基本通達6-13-3の合理性について、名古屋地裁平成17年3月3日判決(税資255号-68(順号9949))は、以下のように判示しています。
「本件通達は、駐車場の貸付けが住宅の附属施設として一体として行われる場合であって、住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないものに限り、全体を住宅の貸付けとして扱い、駐車場部分についても非課税とする取扱いを定めているところ、このような基準は、駐車場の貸付けが原則として課税売上げに当たり、住宅の貸付けに含まれて両者の区別が不可能ないし著しく困難である場合に例外的に非課税とする消費税法の上記趣旨に合致すること、実際にも、住宅の使用料とは別個に駐車場使用料等が定められ、収受されている場合には、住宅の貸付けと駐車場の貸付けとの区別が容易であると考えられることなどを考慮すると、その合理性を十分に肯認することができる。」
店舗等併設住宅の貸付け
店舗等併設住宅の居住用部分は住宅に該当しますから、その居住用部分の貸付けは非課税となります(基通6-13-5)。
この場合において、建物の貸付けに係る対価の額を住宅に係る対価の額と事業用の施設に係る対価の額とに面積比等により合理的に区分することになります。
〇平成22年6月25日裁決(裁事79集591頁)判断要旨
「請求人は、関係法人に有料老人ホーム施設として賃貸した建物のうち、介護職員が使用する事務室、スタッフステーション、宿直室、厨房等は、いずれも当該施設の入居者が使用するものではなく、住宅の貸付けに該当しないから非課税とならない旨主張する。しかしながら、消費税法上、非課税となる住宅の貸付けの範囲の判定に当たっては、住宅に係る賃借人が日常生活を送るために必要な場所と認められる部分はすべて住宅に含まれると解するのが相当であるところ、介護付有料老人ホームは、単なる寝食の場ではなく、入居した老人が介護等のサービスを受けながら日常生活を営む場であるから、介護付有料老人ホーム用の当該建物の内部に設置された事務室、スタッフステーション、宿直室、厨房等の介護サービスを提供するための施設は、入居者が日常生活を送る上で必要な部分と認められることから、これらの部分の貸付けは非課税となる住宅の貸付けに該当する。」
転貸する場合
借主が他に転貸する場合であっても、転貸後において住宅として使用されることが契約上において明らかにされている場合は、住宅の貸付けとして非課税とされます(消基通6-13-7)。
例えば、事業者が社宅として借り受ける場合であり、契約において従業員等が居住の用に供することが明らかであれば非課税とされます。この場合において、貸主へ支払われる家賃と社員から徴収される賃料のいずれも非課税となります。
居住用マンションの所有者等が不動産業者等に一括して貸し付ける場合のいわゆる丸貸しマンション等も非課税となります。
用途変更の場合
住宅として貸し付けられた建物について、契約当事者間で住宅以外の用途に契約変更した場合には、契約変更後のその建物の貸付けは課税となります(消基通6-13-8)。
賃借人が賃貸人との契約変更を行わずに、その賃借人において事業の用に供した場合、その建物の借受けは、当初の契約により非課税となります(消基通6-13-8(注))。
対価たる家賃の範囲
対価たる家賃の範囲は以下の通りです(消基通6-13-9)。
イ 家賃には、月決め等の家賃のほか、敷金、保証金、一時金等のうち返還しない部分を含みます。
ロ 共同住宅における共用部分に係る費用(エレベーターの運行費用、廊下等の光熱費、集会所の維持費等)を入居者が応分に負担する、いわゆる共益費も家賃に含まれます。
共益費以外の専有部分の電気、ガス、水道等の利用料は、非課税とされる住宅の貸付けに該当しないことから、課税されます。
〇国税庁HP質疑応答事例「集合住宅の家賃、共益費、管理料等の課税・非課税の判定」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/09/02.htm
輸入取引における非課税(消法別表2)
国内における非課税取引とのバランスを図るため、保税地域から引き取られる外国貨物のうち、次に掲げるものが非課税とされています(消法6②、別表第二)。
①有価証券等、 ②郵便切手類、 ③印紙、 ④証紙、 ⑤物品切手等、 ⑥身体障害者用物品、⑦教科用図書