為替

法人税、消費税、源泉所得税での取り扱い

為替差損益

 為替差損益は、法人税の対象となります。一方、消費税の計算上、為替差損益自体は考量する必要はありません。

利子

 国内の銀行に外貨預金を行った場合は、円での預金と同様に、利子に所得税等15.315%の源泉徴収が行われます(所法174、175、措法3)。源泉徴収された所得税等は。所得税額等の控除の対象となります。なお、2016年1月1日以降は、個人と違い、住民税5%は徴収されません。

 消費税については、以下のように考えます。

 外貨預金の受取利息が国内取引に該当しない場合は、不課税取引となります。

 預金の預入れについては非課税とされていますが(消法別表第一3、消令10③一)、預金の預入れが国内で行われたかどうかの判定は、預金の預入れを行う者の当該預金の預入れに係る事務所の所在地が国内にあるかどうかにより行うものとされています(消令6③)。

 よって、預金口座契約等を締結した事務所が国内にある法人の外貨預金の預入れは国内取引に該当し、当該外貨預金口座に係る利息については非課税資産の譲渡等に係る対価の額に該当することになります(消基通6-3-1)。

 また、預金の預入れのうち、その債務者が「非居住者」であるものについては、消費税法31条《非課税資産の輸出等を行った場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の適用に当たっては、ここでいう輸出取引等に該当することとされていますから(消令17③)、外貨預金口座に預金を預け入れる行為は輸出取引等に該当します。

 この輸出取引等に該当するものの対価の額は、課税売上割合の計算にあたっては課税資産の譲渡等の対価の額に含まれることとされていますので(消令51②)、この場合の外貨預金口座から生ずる受取利息の金額については、課税資産の譲渡等の対価の額とみなして、課税売上割合を計算することになります。

 つまり、「非居住者」へ預け入れた外貨預金の利息は、本来は非課税売上だけど、免税売上とみなして税額計算をします。

 なお、「非居住者」とは、国内に主たる事務所を有しない法人がこれに該当し、非居住者の国内の支店、出張所その他の事務所は、法律上の代理権があるかどうかにかかわらず、その主たる事務所が外国にある場合においても居住者とみなされます(消基通7-2-15)。

 よって、国内銀行、国外銀行を問わず、国内支店は居住者となるため、その国内支店に預け入れていたことによる外貨預金利息は非課税売上となります。

 一方、国内銀行、国外銀行を問わず、国外支店は非居住者となるため、その国外支店に預け入れていたことによる外貨預金利息は非課税資産の輸出取引等に該当します。

期末評価

 法人税法上の外貨預金の期末換算方法には、発生時換算法(取得時または発生時の為替相場で換算する方法)と期末時換算法(期末時の為替相場で換算する方法)の2つがあります(法法61の9①三)が、次の区分に応じて換算をします(法法61の9、法令122の4、122の7)。

 なお、所轄税務署に「外貨建資産等の期末換算方法等の届出書」を提出を行わなかった場合には、法定換算方法となり、下記表でいう「〇(法定)」により換算することになります。

 また、会計上の換算方法(中小企業の会計に関する指針) によれば、決算時の為替相場により換算します。

発生時換算法期末時換算法
短期〇(法定)
長期〇(法定)

 外貨預金における「短期」とは、決済日が当期末(事業年度終了日)の翌日から1年を経過した日の前日までに到来するものをいいます(法令122の4五)。

 なお、外貨普通預金は、満期日(決済(受取)可能日)が当該事業年度終了の日の翌日から1年を経過した日の前日までに到来するものとして「短期外貨預金」に該当すると考えられるため、期末時の法定換算方法としては期末時換算法を適用することになります。

 期末時換算法により生じた期末換算差損益は益金又は損金に算入し、翌事業年度に洗替え処理をします(法法61の9②、法令122の8①) 。

当期の処理翌期の処理
為替差益の益金算入為替差益と同額を損金算入
為替差損の損金算入為替差損と同額を益金算入

 なお、為替予約をして為替レートを確定している場合は、その為替レートによって期末評価を行います(法法61の8②)。

 また、外貨預金から生ずる利子の額は、その利子の計算期間の経過に応じ当該事業年度に係る金額を当該事業年度の益金の額に算入します。つまり、期末時において未収利息を計上します。

 ただし、主として金融及び保険業を営む法人以外の法人が、その有する外貨預金から生ずる利子でその支払期日が1年以内の一定の期間ごとに到来するものの額につき、継続してその支払期日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、未収利息を計上しないことも認められます(法基通2-1-24、13の2-2-1)。

仕訳

外貨預金預入時

外貨普通預金 1,300,000円  円貨普通預金 1,300,000円

 原則として、預入日における電信売買相場の仲値(TTM)により換算します(法基通13の2-1-2)。ただし、継続適用を条件として、電信買相場(TTB)によることもできます。

 また、継続適用を条件として、外貨建取引の内容に応じてそれぞれ合理的と認められる為替相場も使用できます(法基通13の2-1-2(注2))。これについては、(法基通13の2-1-2)に関するものであれば、以下も同じ取扱いです。

利子受取時

外貨普通預金       22,018円  受取利子 26,000円
法人税等(源泉所得税等) 3,800円
雑損失(為替差損)     182円

 原則として、受取利子は電信売買相場の仲値(TTM)により換算します(法基通13の2-1-2)。ただし、為替予約等により確定している場合は、その円換算額で計上します(法基通13の2-1-4)。

 一般的に、受取利子とその繰り入れられた外貨普通預金は利子受取時のレートで換算し、源泉所得税は源泉徴収時のレートで換算します。

 よって、利子受取時のレートと源泉徴収時のレートの差額の金額が生じ、それについては為替差損益となり「雑損失」「雑収入」で処理します。

外貨預金で仕入れをした時

仕入高 1,400,000円  外貨普通預金 1,300,000円
            雑収入(為替差益)100,000円

 外貨建取引による仕入れは、原則として、仕入時における電信売買相場の仲値(TTM)により換算します(法基通13の2-1-2)。ただし、継続適用を条件として、電信売相場(TTS)によることもできます。

円転した時

普通預金 1,400,000円  外貨普通預金 1,300,000円
            雑収入(為替差益)100,000円

 原則として、円転した日における電信売買相場の仲値(TTM)により換算します(法基通13の2-1-2)。

他の外貨預金口座に預け替えした時

外貨普通預金 1,400,000円  外貨普通預金 1,300,000円
              雑収入(為替差益)100,000円

 原則として、預け替え日における電信売買相場の仲値(TTM)により換算します(法基通13の2-1-2)。

期末時換算法により評価した場合

外貨普通預金 1,500,000円  外貨普通預金 1,400,000円
              雑収入(為替差益)100,000円

 原則として、期末における電信売買相場の仲値(TTM)により換算します(法基通13の2-2-5)。ただし、継続適用を条件として、電信買相場(TTB)によることもできます。

 また、継続適用を条件として、TTM又はTTBについて、事業年度終了日を含む1月以内の一定期間におけるそれぞれの平均値によることができます(法基通13の2-2-5(注1))。

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