概要
定期保険とは、一定期間内に被保険者が死亡した場合(いわゆる死亡保障)にのみ保険金が支払われる生命保険をいい、養老保険のように生存保険金の支払はありません。
また、第三分野保険とは、保険業法3条4項2号に掲げる保険(これに類するものを含む。)をいいます(第一分野保険は生命保険、第二分野保険は損害保険)。
例えば、被保険者が病気や怪我等の一定の事由に該当した場合に保険金等が支払われる保険で、医療保険、がん保険や介護費用保険などがあります。
法人が契約者(保険料負担者)となる契約については、基本的に、定期保険及び第三分野保険は両方とも掛捨て保険であるため、法人税上同様な取り扱いとなります。
以下、「定期保険等」という場合は、定期保険及び第三分野保険のことをいっています。
令和元年7月8日以後契約分の定期保険等の取扱い
令和元年(2019年)7月8日(解約返戻金相当額のない一定のものは令和元年10月8日)以後に契約した定期保険等の法人税上のベースの取扱いは以下のようになります(法基通9-3-5)。
契約者 | 被保険者 | 保険金等受取人 | 経理処理 |
---|---|---|---|
法人 | 役員・従業員 | 法人 | 保険料 |
法人 | 役員・従業員 | 被保険者又はその遺族 | 福利厚生費又は給与(注) |
(注)役員または部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合には、その保険料の額はその役員または使用人に対する給与となります。つまり、源泉所得税がかかり社会保険の対象となります。また、役員に対する給与とされる保険料の額で、法人が経常的に負担するものは、その役員が受ける経済的な利益の額が毎月おおむね一定であるので、定期同額給与となります。なお、給与とされた保険料は、その役員または使用人の生命保険料控除の対象となります。
掛捨ての保険と謳いながらも、多額の解約返戻金の受取が可能な商品があったため、通達改正となったという経緯があり、保険の最高解約返戻率に応じて法人税上の取扱いが以下のように異なります(解約返戻率=解約返戻金相当額/支払保険料合計額)。簡単にいうと、最高解約返戻率が高いと資産計上する金額が高くなり、損金算入できる金額が少額という仕組みとなっています。
(1)最高解約返戻率が50%以下及び少額保険等の定期保険等
(2)最高解約返戻率が50%超70%以下の定期保険等
(3)最高解約返戻率が70%超85%以下の定期保険等
(4)最高解約返戻率が85%超の定期保険等
最高解約返戻率とは、その保険の保険期間を通じて解約返戻率(保険契約時において契約者に示された解約返戻金相当額について、それを受けることとなるまでの間に支払うこととなる保険料の額の合計額で除した割合)が最も高い割合となる期間におけるその割合をいいます。
なお、契約内容の変更があった場合は、保険期間のうち変更以後の期間においては、変更後の契約内容に基づいて取扱いがされます。
(1)最高解約返戻率が50%以下及び少額の定期保険等
最高解約返戻率が50%以下の定期保険等は、上述したベースの取扱い通りとなります。また、「最高解約返戻率が70パーセント以下で、かつ、年換算保険料相当額が一の被保険者につき合計30万円以下の保険」「保険期間が3年未満の保険」に係る保険料を支払った場合についても同様な取り扱いとなります。
ただし、原則として、保険期間の経過に応じて損金の額に算入されます。よって、全期間分の保険料を一括で払込んだような場合は、当期の分については損金算入できますが、残額の翌期以降の期間分については資産計上をしなければなりません。
ただし、1年以内に役務提供を受ける短期前払費用に該当するような年払いの保険料については、支払い時に損金算入することも認められます(法基通2-2-14)。
なお、法人が令和元年10月8日以後に、保険期間を通じて解約返戻金相当額のない定期保険等(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短いものに限ります。)に加入した場合において、一の被保険者につきその事業年度に支払った保険料の額が30万円以下であるものについては、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときには、その処理が認められます。
(仕訳例)
① 保険料 〇円 現金預金 〇円
② 保険料 〇円 現金預金 〇円
前払保険料 〇円
③ 福利厚生費(又は給与) 〇円 現金預金 〇円
(2)最高解約返戻率が50%超70%以下の定期保険等
最高解約返戻率が50%超の定期保険等については、相当多額の前払部分の保険料が含まれるものとされるため、資産計上が原則となります(法基通9-3-5の2)。
そして、一定の期間後、その資産計上した金額について取り崩され損金の額に算入します。
これは、「(3)最高解約返戻率が70%超85%以下の定期保険等」「(4)最高解約返戻率が85%超の定期保険等」についても、同様な考え方です。
資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
---|---|---|
保険期間の開始日から40%相当期間まで(1月未満切捨て) | 当期分支払保険料の額×40% | 保険期間の75%相当期間経過後から、保険期間の終了日まで(1月未満切上げ) |
(仕訳例)
① 資産計上期間
保険料 〇円 現金預金 〇円
前払保険料 〇円
② 据置期間
保険料 〇円 現金預金 〇円
③ 取崩期間
保険料 〇円 現金預金 〇円
前払保険料 〇円
(3)最高解約返戻率が70%超85%以下の定期保険等
資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
---|---|---|
保険期間の開始日から40%相当期間まで(1月未満切捨て) | 当期分支払保険料の額×60% | 保険期間の75%相当期間経過後から、保険期間の終了日まで(1月未満切上げ) |
(4)最高解約返戻率が85%超の定期保険等
資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
---|---|---|
保険期間の開始日から最高解約返戻率となる期間(当該期間経過後の各期間において、その期間における解約返戻金相当額からその直前の期間における解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が70%を超える期間がある場合には、その超えることとなる期間)まで (注) 最低5年(保険期間が10年未満の場合には、保険期間の開始の日から保険期間の50%を経過する日まで)とする。 | 〇保険期間の開始の日から10年を経過する日まで 当期分支払保険料の額×最高解約返戻率×90% 〇11年目以降 当期分支払保険料の額×最高解約返戻率×70% | 最高解約返戻額となる期間(資産計上期間がこの表の資産計上期間の欄に掲げる(注)に該当する場合には、当該(注)による資産計上期間)から、保険期間の終了日まで |
令和元年7月8日前契約分定期保険の取扱い
契約者 | 被保険者 | 死亡保険金受取人 | 経理処理 |
---|---|---|---|
法人 | 役員・従業員 | 法人 | 保険料 |
法人 | 役員・従業員 | 被保険者の遺族 | 福利厚生費又は給与(注) |
(注)役員または部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合には、その保険料の額はその役員または使用人に対する給与となります。
支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入します。
保険に関する個別通達の廃止等
通達改正に伴い、次の保険に関する個別通達が令和元年6月28日廃止されています。ただし、令和元年7月8日前契約分に係る定期保険又は第三分野保険の保険料については、改正通達による改正前の取扱い並びに改正通達による廃止前の通達の取扱いの例によることとされています。
(1)平成24年4月27日付課法2-5他1課共同「法人が支払う「がん保険」(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010810/pdf/240418.pdf
(2)平成13年8月10日付課審4-100他1課共同「法人契約の「がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)」の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010810/01.htm
(3)平成元年12月16日付直審4-52他1課共同「法人又は個人事業者が支払う介護費用保険の保険料の取扱いについて」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/891216/01.htm
(4)昭和62年6月16日付直法2-2「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/870616/01.htm
(5)昭和54年6月8日付直審4-18「法人契約の新成人病保険の保険料の取扱いについて」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/790608/01.htm