概要
合同会社の設立にかかる費用と期間は、株式会社のそれと比べて半分ほどの「少額・短期間」で済みます。
合同会社設立の設立費用
株式会社の場合は、定款を作成して公証人の認証を受ける必要があります。公証人による定款認証の手数料は1件当たり、資本金の額等が100万円未満の場合「3万円」、100万円以上300万円未満の場合「4万円」、300万円以上の場合「5万円」となります(令和4年1月1日以降)。
また、謄本代(定款の原本をそのまますべて写しとった「謄本」の手数料)が約2000円かかります。
一方、合同会社を設立する場合には、定款の作成は必要ですが、公証人の認証は必要ないので、認証手数料と謄本代はかかりません。なお、設立時に書面で作成する定款の原本には、合同会社、株式会社ともに収入印紙が4万円必要です。
そのほかの費用として、株式会社、合同会社ともに印鑑証明書代や会社代表者印代、交通費などに1万円くらいかかるでしょう。
※資本金300万円以上の場合の設立費用
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
定款印紙代 | 40,000円 | 40,000円 |
定款認証手数料と謄本代 | 52,000円 | 0円 |
登録免許税 | 150,000円~ | 60,000円~ |
その他 | 約10,000円 | 約10,000円 |
合 計 | 252,000円~ | 110,000円~ |
電子定款
設立時に書面で作成する定款の原本には、本来、収入印紙が4万円必要なのですが、電磁的記録による会社の電子定款については、印紙を貼付する必要はありません。
ただし、一般の方が電子定款を作成するのはハードルが高いため、電子定款にする場合は行政書士などの専門家に依頼することが多いでしょう。現時点では、インターネットで探せば5000円程度で作成してもらえるような感じです。
登録免許税の金額
合同会社の設立登記に関する登録免許税の金額は、資本金の1000分の7もしくは6万円のいずれか高い金額が必要です。資本金100万円の会社の設立でいえば、登録免許税は7000円ではなく6万円が必要となります。
ざっくりいえば、資本金の額が857万円までは登録免許税は6万円になるということです。ちなみに、株式会社の場合は、登録免許税として資本金の1000分の7もしくは15万円のいずれか高い金額が必要です。
そのほかに、株式会社、合同会社ともに、専門家である司法書士に設立登記の手続きを依頼すると、その報酬(手数料)などが別途必要となります。
特定創業支援等事業制度の利用
急いで会社を設立しようとせずに、設立までに数か月間時間が取れる方は、特定創業支援等事業制度を利用されると良いでしょう。
一定以上の期間・回数の相談やセミナーを受けることにより、自治体が証明書を発行し、その証明書を設立登記申請書に添付すれば、 登録免許税が半額となります。
例えば株式会社設立時には、最低でも15万円の登録免許税が必要ですが、半額の7万5,000 円となります。合同会社の場合は、6万円が3万円になるということです。
なお、事業を開始した日以後5年を経過している個人事業主が、新たに会社を設立する(いわゆる法人成り)場合には利用できません。
つまり、全く、事業もしていない状態で新たに会社を設立するか、事業を開始した日以後5年を経過していない方が、新たに会社を設立する場合に利用できます。
また、この特定創業支援等事業制度ですが、会社設立しようとする方が動き出してから証明書発行までに最短でも1 ヶ月必要ということ以外、自治体によって結構違いがあります。
例えば、同じ東京23区内で会社設立をするにあたって、この制度を利用しようとしても、豊島区、渋谷区と文京区では以下の違いがあります(令和4年8月現在)。
豊島区 | 渋谷区 | 文京区 | |
---|---|---|---|
開催頻度(1年) | 毎月数回 | 2回 | 2回 |
形式 | 個別相談(予約制) | セミナー形式 | セミナー形式 |
費用 | 無料 | 無料 | 有料(1万円ぐらい) |
回数 | 4回以上(1回あたり1時間ぐらい)、また、創業計画書を作成し提出する必要あり。 | 4回(1回あたり4時間ぐらい)、交流会含む合計5回出席 | 5回( 1回あたり3時間ぐらい ) |
なお、「登録免許税が半額」についての優遇措置の場合、本店所在地の自治体の証明書である必要があります。つまり、豊島区外で起業の場合、豊島区発行の証明書では優遇措置は利用できないということになります。
ですから、本店所在地にある自治体に、特定創業支援等事業制度がどのようなものであるかを確認する必要があります。
〇 登録免許税半額以外の優遇措置
証明書取得による支援制度は登録免許税が半額以外にも以下のような優遇措置が受けれます。下記例は、東京都豊島区での証明書取得の場合ですが、他の自治体による取得の場合でも同じような優遇措置が受けれます。
(1) 新創業融資(日本政策金融公庫)の融資要件が緩和されます
日本政策金融公庫の「新創業融資」を利用する場合の、自己資金要件が免除になります。
(2) 新規開業支援資金(日本政策金融公庫)の貸付利率が引き下げられます
日本政策金融公庫の「新規開業支援資金」について、貸付利率の引き下げ対象として同資金を利用することができます。
(3) 東京都の創業融資の金利が優遇されます
東京都の創業融資について、特例措置として金利が優遇されます。
(4) 創業関連保証の申込要件が緩和されます
創業関連保証枠を利用した融資について、通常なら事業開始2ヵ月前から申込みのところ、前倒しして6ヵ月前から申込みが可能となります。
(5) 国や東京都の創業に関する補助金・助成事業に申請することができます
国が取り扱う「創業・事業承継補助金」や、東京都及び東京都中小企業振興公社が取り扱う「創業助成事業」は、国・東京都が指定する創業支援(豊島区の特定創業支援事業を含む)を受けた方が対象となります。
設立に必要な期間
設立に必要な期間も、合同会社のほうが株式会社よりも比較的短期間で済みます。株式会社の設立手続きには、発起設立(発起人が全株式を引き受ける設立)と募集設立(発起人が全株式を引き受けず、株主となる人を募集する設立。一般的に、小規模な会社の設立には募集設立よりも発起設立が採用される)があります。
発起設立のほうが募集設立よりも短期間で会社を設立できますが、それでも会社設立登記までにはおおむね10日間必要となります。
一方、合同会社はおおむね4〜5日間程度で設立登記が可能です。それは、合同会社が「社員の決定」「社員による定款の作成」「出資金の払込み」「書式の作成」「設立登記の申請」という短いフローで立ち上げることができるからです。
なお、株式会社、合同会社ともに、登記申請をしてから約1~2週間ぐらいで登記が完了します。以上のように、株式会社と比べると合同会社は、設立にかかる費用も少なく短期間で設立が可能です。
手続きの1日目で、いわゆる合同会社の基本事項を決めます。「会社名」「事業目的」「本店所在地」「社員」などが基本事項です。2日目は実際の書式を作成するための準備をします。3日目は書式を作成します。4日目に登記申請をします。登記申請後、登記事項証明書が取れるようになったら、税務署等役所へ届出をします。下はその一例です。
第1日目 基本事項を決める(例:令和○年6月1日)
社員の構成と出資金額を決める
業務執行社員と代表社員を決める
会社名(商号)を決める(つけられない商号がある)
本店所在地を決める
資本金はどのくらいにすべきか資本金の額の決定
事業目的を決める
事業年度(決算期)を決める
第2日目 書式作成の準備をする(例:令和○年6月2日)
代表社員になる人の印鑑証明書を取りに行く
商号調査をする
登記所の窓口で相談する
会社の印鑑(会社代表者印等)をつくる
第3日目 書式を作成する(例:令和○年6月3日)
定款を作成する
代表社員、本店所在地及び資本金決定書を作成する
代表社員の就任承諾書を作成する
資本金の払込みをする(出資の履行)
払込みがあったことを証する書面を作成する
合同会社設立登記申請書を作成する
印鑑届書を作成する
第4日目 登記申請をする(例:令和○年6月4日)
登記申請をする
会社設立(登記完了)後 (例:令和○年6月11日)
登記事項証明書、印鑑証明書を取得する
金融機関での預金口座を開設する
税務署などへ届出をする