概要
ストックオプションが公正な評価額で有償発行(金銭の払い込みにより取得)されたいわゆる有償ストックオプションは、広義では税制非適格ストックオプションに該当しますが、権利行使時に給与所得等として課税されることはありません。
取締役や従業員等の付与対象者が新株予約権の発行価格を金銭で払い込むことにより新株予約権を購入するものであるため、従来の税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型)のように会社から付与されたものを受動的に受け取るものではなく、付与対象者が自らの判断で購入することになります。
取締役や従業員等の付与対象者が新株予約権を公正な金額(適正な対価)で購入するのであれば、付与対象者は何ら経済的利益を受けません。
当該ストックオプションの行使時の経済的利益(ストックオプションの値上がり益)については、所得税法上、認識しないこととされています(所法 36②、所令 109①一)。
よって、新株予約権の取得時と株式を取得する権利行使時のいずれにおいても課税されず、取得した株式を売却した時に、株式譲渡所得の課税がされるのみです。
株式の取得価額は、「当該新株予約権の取得時の払込金額」と「権利行使時の払込金額」の合計となります。そして、取得した株式を売却した時に、譲渡収入額から取得価額を差し引いた金額が株式譲渡所得として課税されます。
所得税法上の取扱い
譲渡制限の付された税制非適格ストックオプション(有償型)の所得税法上の取扱いを具体例で説明します。
①権利(新株予約権)購入時
株価が1株1,200円の時に、ストックオプションを適正な時価1株300円で有償取得しました。税制非適格ストックオプション(有償型)は、当該ストックオプションを適正な時価で購入していることから、経済的利益は発生せず、課税関係は生じません。
②権利行使時
取締役等が、例えば株価が2,000円になった時にストックオプションを権利行使した場合、権利行使価額である1,200円を払込んで2,000円の株を取得します。当該ストックオプションの行使時の経済的利益(ストックオプションの値上がり益)については、所得税法上、認識しないこととされています(所法 36②、所令 109①一)。
③株式売却時
取締役等がストックオプションを権利行使して取得した株式を、株価が2,500円になった時に売却した場合は、株式の譲渡所得として課税されます。譲渡時の株価2,500円から、当該ストックオプションの購入価額300円と権利行使価額1,200円の合計額1,500円を差し引いた1,000円となります。
<算式>
(売却価格 - ストックオプションの購入価額 - 権利行使価額) × 株式数 = 所得金額
留意点
- 新株予約権を公正価値より低い額で付与対象者が取得すれば、経済的利益が発生し取得時に課税されます。
- 取締役に対して付与した場合であっても、報酬として発行するストックオプションではないため、株主総会において報酬決議を経る必要がありません。ただし、株式の譲渡が制限されている非公開会社では、新株予約権の発行自体に株主総会決議が必要となります。