概要
配偶者控除は、納税者本人に控除対象配偶者がいる場合に適用を受けられます。控除対象配偶者とは、納税者と生計を一にする配偶者で、その年の合計所得金額が48万円以下の人のことです(ただし、青色事業専従者として給与の支払を受ける者・白色専従者を除きます。)。
扶養控除は、納税者本人に生計を一にする配偶者以外の16歳以上の親族等で、合計所得金額が48万円以下の人(控除対象扶養親族)がいる場合に適用を受けられます。
48万円の壁
妻の年間の合計所得金額が48万円を超える場合、夫は配偶者控除を受けられなくなります。ただし、妻の合計所得金額が48万円を超える場合、夫は配偶者控除を受けられなくなりますが、妻の合計所得金額が133万円以下で一定の場合は、配偶者特別控除を受けることができます。
逆に言えば、妻の合計所得金額が48万円以下の場合は、夫は配偶者控除を受けることができます(もちろん、その他、一定の要件を満たせばですが)。
同様に、子供の年間の合計所得金額が48万円以下であることが、扶養控除の要件の1つを満たすことになります。
なお、配偶者控除も扶養控除も年間合計所得金額48万円か否かが線引きとなりますので、以下、配偶者の所得について記載しますが、子供の所得も同じと考えて問題ありません。
考え方としては、妻が受取った上場株式等の配当・譲渡益については、源泉(特別)徴収のみで課税関係を終わらせる場合には、 妻の合計所得金額に含まれません。
ただし、確定申告をした場合には、合計所得金額に含まれますので注意してください。
合計所得金額
合計所得金額は、以下で判定します。
(1)所得税法に規定する特別控除は控除「後」
(2)措置法に規定する特別控除は控除「前」(収用、居住用等の特別控除)
(3)損益通算は通算「後」
(4)繰越控除は控除「前」
上場株式等の配当
上場株式等の配当については、金額の大小にかかわらず確定申告せずに納税を終わらせることができます(大口株主が受取る配当を除きます)。
そして、妻が受取った上場株式等の配当について確定申告しない場合は、その配当は妻の合計所得金額に含まれません。したがって、妻の配当以外の所得が48万円以下である場合には、夫の税額計算において配偶者控除の適用があります。
なお、妻が受取った上場株式等の配当について確定申告する場合、その配当所得は妻の合計所得金額に含まれます。したがって、妻の配当所得とその他の所得の合計が48万円以下の場合は、夫の税額計算において配偶者控除の適用がありますが、48万円を超える場合には、配偶者控除の適用はありません。
上場株式等の譲渡益
妻が株式売却益を確定申告することにより、妻の合計所得金額が48万円を超える場合、夫は配偶者控除を受けられなくなりますが、妻の合計所得金額が48万円以下の場合は、夫は配偶者控除を受けることができます。
なお、特定口座(源泉あり)内の譲渡所得は源泉徴収されるので、譲渡所得が多額となっても申告不要を選択できます。
そして、妻が特定口座(源泉あり)内における所得を申告しないのであれば、妻の合計所得金額には含まれません(措令25の10の12①一)。
したがって、その他の所得の合計が48万円以下の場合は、夫の税額計算において配偶者控除の適用があります(所法2①三十三、三十三の二)。
申告をする場合は、以下のように取り扱われます。
① 口座間で通算する場合
2つ以上の口座があり、益と損の口座があり通算する場合は、その通算した結果の所得で判定します。
② 妻が、「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」を受けて、上場株式等の譲渡所得を通算(繰越控除)する場合
妻が、「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」を受けるために、上場株式等の譲渡所得を申告分離課税により確定申告した場合には、繰越損失を控除する前の譲渡所得の金額とその他の所得金額の合計が48万円以下であるかどうかによって、配偶者控除の適用の有無を判定します。つまり、配偶者控除の適用の有無を判定する際の「合計所得金額」は、前年からの上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用前の金額をもって判定するということになります(措法37の10⑥一、37の11⑥、37の12の2)。
上場株式等の売却損と上場株式等の配当を通算する場合
① 妻が、同一年に生じた上場株式等の売却損と上場株式等の配当を損益通算する場合
妻が、上場株式等の売却損との損益通算を行うために、上場株式等の配当を申告分離課税により確定申告した場合には、その損益通算後の配当所得の金額とその他の所得金額の合計が48万円以下であるかどうかによって、配偶者控除の適用の有無を判定します。
② 妻が、「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」を受けて、上場株式等の配当を通算(繰越控除)する場合
妻が、「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」を受けるために、上場株式等の配当を申告分離課税により確定申告した場合には、繰越損失を控除する前の配当所得の金額とその他の所得金額の合計が48万円以下であるかどうかによって、配偶者控除の適用の有無を判定します。
夫で配偶者控除が利用でき、妻の方でも申告をしなくて済むには、妻の所得をどうすればよいのか?
夫が配偶者控除を利用するには妻による所得を48万円以下にする必要があります。ただし、超えた場合でも所得133万円以下で一定要件を満たせば、配偶者特別控除の適用を受けることはできます(所法83の2)。
一方、妻本人自体は所得税の基礎控除48万円、住民税の非課税枠45万円(東京23区内の場合)以下に所得を抑えれば、原則、申告必要ありません。ただし、お住いの自治体や妻本人の状況によっては非課税枠内であっても住民税の申告を求められる場合があります。
住民税については、自治体によって取り扱いが違う可能性もあるので、最終的には、お住いの自治体で確認していただきたいのですが、多くの自治体では以下のような取り扱いになります。
妻の所得 | 夫での配偶者控除の適用 (所得税・住民税とも) | 夫での配偶者特別控除の適用 (所得税・住民税とも) | 妻の所得税 | 妻の住民税 |
45万円以下 | あり | なし | かからない | かからない |
45万円超48万円以下 | あり | なし | かからない | かかる |
48万円超133万円以下 | なし | あり | かかる | かかる |
133万円超 | なし | なし | かかる | かかる |