概要

 合同会社は、新たに社員を加入させることができます(会社法604)。ただし、以下の2つの手続きが必要です。
(1)当該社員に係る定款の変更をする
(2)新たに社員となろうとする者は、出資に係る払込み又は給付をする

 新たに出資させ社員として加入させれば会社の財産が増えるため、通常、債権者にとっても反対する理由はありません。ただし債権者保護のため、払込みに関する規制があります。

 また、合同会社において社員は定款の絶対的記載事項であるため、社員を加入させる場合には定款の変更が必要です。そのため、新たな社員の加入は原則として、その社員にかかわる定款の変更をしたときに、その効力を生じます。

 ただし、新たに社員になろうとする者が、定款の変更をしたときにその出資にかかわる払込みまたは給付を履行していないときは、払込みまたは給付を完了したときに合同会社の社員となります。

 つまり、「定款の変更」と「払込み等の完了」の両方が終わっていないと、社員の加入の効力が生じないというわけです。

定款の変更

 新たに社員を加入させる場合にしなくてはいけない定款の変更の部分は、社員の氏名及び住所、出資の価額並びに責任の箇所であり、他の社員と同様に以下のように記載します。

(定款記載例)
 金10万円 東京都港区六本木九丁目2番3号
 有限責任社員 法務太郎

 なお、定款に別段の定めがない限り、定款の変更には総社員の同意が必要です。そのため定款に別段の定めがない限り、社員の加入にも総社員の同意が必要ということになります。

資本金

 新たに社員となる者から払い込まれた金銭等は資本金または資本剰余金とします。払い込まれた金銭等について、いくらを資本金、資本金剰余金とするかは自由です。

登記変更の有無

 新たに加入した社員が業務執行社員となる場合は、登記が必要となります(会社法914六)。持分の譲渡ではなく、新たな出資であり資本金の額が増加する場合は、登記が必要となります(会社法914五)。資本金に計上しなかった残余の額は資本剰余金となりますが、資本剰余金は登記には関係ありません。

加入した社員の責任

 合同会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた合同会社の債務についても、これを弁済する責任を負うことになります(会社法605)。

 つまり、合同会社の成立後に新たに社員になるといっても、加入する前からある会社の債務についても責任は負うということです。もっとも、合同会社の社員は有限責任ですので、最悪、出資した分が戻らないですみます(会社の連帯保証人となるような場合は別)。

社員となる予定の者に定款を確認させておく

 合同会社における社員の入社とは、上記の「新たに出資させ社員を加入させる」ことの他に、「非社員が社員の持分を譲り受ける」場合にも生じますが、以下のような注意点があります。

 「持分の譲受人や成立後の新規加入者は、定款規定に真に合意している保障はないのではないかという指摘はありうる。しかし、持分会社の持分については、株式会社の株式と異なり、その流通の円滑化等を図る必要はなく、会社法上は、定款の内容を十分に確認しないで社員となる者を保護するための規定は存せず、通常の契約と同様、詐欺、錯誤等の民法の一般原則が適用されるのみ(省略)である。したがって、社員となる者は、定款規定を十分に確認してから入社等をすべきであり、その確認のための手段は法定されていないものの、確認することができなければ入社や譲受けを断ればよいという整理をするほかない」(立案担当者による新・会社法の解説/相澤哲(編著)166頁)

 合同会社では定款で別段の定めをすることができることが多いため、会社法の原則とは違うような規定を盛り込んで定款を作成していることが当然あるでしょう。そのような場合において、その定款を確認させないまま社員として入れてしまった場合、のちにトラブルになる可能性があります。新たに社員となる者には、あらかじめ定款を確認させておいたほうが望ましいといえます。

 株式会社では、定款を本店に備え置かなければならないことになっています。また、株式会社の株主および債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、閲覧などの請求をすることができることになっています。いわゆる「定款の備置き及び閲覧等」の規定ですが、持分会社ではそのような規定はありません。

 ただし、合同会社においても定款を本店に備え置き、社員や社員となる者がいつでも閲覧できるような状態になっているのが望ましいでしょう。

税務上の取扱い

合同会社側の税務

 新たに社員となる者から払い込まれた金銭等は資本金、資本剰余金の増加となりますが、どちらにしろ資本金等の額の増加となります(法令8①一)。

 資本等取引であるため、原則として、課税関係は生じません。法人税の申告書の別表5(1)に記載します。

社員側の税務

 出資に係る払込金額が時価相当額である場合は、新たに社員となる者および既存の社員も不利益が生じないため、課税関係は生じません。一方、出資に係る払込み等の金額が時価相当額でない場合は、課税関係が生じる場合があります。

会社法604条(社員の加入)

 持分会社は、新たに社員を加入させることができる。
2 持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる。
3 前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる。