従業員持株会

従業員持株会等を通じて取得した株式の配当

 従業員持株会等の法的性質がどのようなものかによって配当の所得税上の取扱いが異なることになります。

(1)民法上の組合(証券会社方式)
 上場企業の大半が採用している方式です。理事長名義で保有する持株会の株式に対して支払われる配当金の課税については、各会員が各自が有する持分についてそれぞれ配当金の支払を受けたものとして会員各自に対して配当所得(所法24)として課税されます。
 なお、各会員は、確定申告を行うことで、配当控除(総合課税の場合)や源泉所得税額の控除等の適用が受けられます。
 余談となりますが、民法上の組合である従業員持株会が存在する場合の相続税における「同族株主」の判定に当たっては、当該持株会として行使する議決権は、各会員が出資持分に応じて保有するものとなります。つまり、従業員持株会自体が大株主となることはないということになります。

(2)任意の団体(信託銀行方式)
 配当金は受益者等課税信託として受益者である持株会の各会員に帰属する(所法13①)ため、会員各自の配当所得(所法24)として課税されます。

(3)人格のない社団(権利能力なき社団)
 持株会が人格のない社団に該当する場合は、配当金は持株会に帰属することになるため、その配当金を持分に応じて各会員に分配した場合には雑所得(所法35、所基通35-1(7))として課税されます。雑所得に該当する場合、配当控除の対象とはなりません。

従業員持株会等において取得した株式の取得価額

 従業員持株会等において取得した株式の取得価額は、持株会から交付される「投資等報告書」や「退会(引出)精算書」などの記載から把握します。

 持株会から交付された資料では取得価額がわからない場合には、持株会から引き出したときの名義書換日の終値を取得価額とすることができます。

国税庁課税部資産課税課情報「株式譲渡益課税のあらましQ&A」(平成31年1月)問19「従業員持株会を通じて取得した株式の取得費等」より

1 従業員持株会(以下「持株会」という。)を通じて取得した株式は、手元にある「投資等報告書」(注1)や「退会(引出)精算書」(注2)などに記載されている「簿価単価」(注3)を基に取得費を計算して差し支えない。

(注1) 「投資等報告書」(名称は持株会によって異なる。)は、半年に1回、持株会から各会員に通知され、拠出金額、取得株式数、簿価単価(1株あたりの取得単価)などが記載されている。ただし、その記載内容は持株会によって異なり、簿価単価が記載されていない場合もある。
(注2) 「退会(引出)精算書」(名称は持株会によって異なる。)は、退会時又は一部引出し時に持株会から各会員に交付され、退会時点又は一部引出し時点での拠出金額、取得株式数、簿価単価(1株あたりの取得単価)などが記載されている。ただし、その記載内容は持株会によって異なり、簿価単価が記載されていない場合もある。
(注3) 「簿価単価」の記載がない場合には、「拠出金額」を「取得株式数」で除した金額とする。

2 投資等報告書等がない場合や投資等報告書等では上記1の方法による取得費の計算ができない場合には、(持株会から引き出したときの)名義書換日の相場(金融商品取引業者のデータベースや当時の新聞記事等による終値)を基に取得費を計算して差し支えない。

※ 持株会を通じて取得した株式のほかに、同一銘柄株式を購入等している場合には、持株会を通じて取得した株式の取得価額と持株会以外で購入等した株式の取得価額とを基に、総平均法に準ずる方法により計算した1株当たりの取得費に売却株数を乗じて計算した金額が株式の収入金額から控除される取得費となる。

従業員持株会等を通じて取得した上場株式の特定口座への受入れ

 従業員持株会等を通じて取得した上場株式等を一定の方法により従業員持株会等の口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所に開設する特定口座へ受け入れることができ、具体的には次のように取り扱われます(措令25の10の2⑭二十三)。

(1)対象となる上場株式等の範囲
 特定口座への受入れ対象となる株式等とは、居住者又は恒久的施設を有する非居住者が締結した持株会契約(上場株式等を発行する会社の役員(法法2十五)、従業員等が、その会社の他の従業員等と共同して、その会社が発行する上場株式等の買付けを一定の計画に従って個別の投資判断に基づかずに継続的に行うことを約する契約をいう。)その他これに類する契約として財務省令で定めるものに基づき取得した上場株式等をいいます。

(2)特定口座への振替の方法
 特定口座(持株会契約等に基づき取得した上場株式等をその取得の日から引き続きその持株会契約等に基づき開設された口座(以下「持株会等口座」という。)に係る振替口座簿への記載若しくは記録をし、又は保管の委託をしている金融商品取引業者等の営業所において開設されているものに限る。)への受入れは、その持株会等口座からその特定口座への振替の方法により行います。

(3)特定口座へ受入れる際の取得日及び取得に要した金額
 取得日は、持株会等口座から特定口座への振替日となります。
 取得に要した金額は、持株会等口座から特定口座への振替日における「持株会等口座で管理されていた平均取得単価(簿価単価)」となります。