宅地は、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。以下同じ。)を評価単位とします(評基通7-2)。「1画地の宅地」は、必ずしも1筆の宅地からなるとは限らず、2筆以上の宅地からなる場合もあり、1筆の宅地が2画地以上の宅地として利用されている場合もあります(評基通7-2注1)。
貸宅地の評価に当たり、借地権者の所有する3棟の建物が個別の事業の用に供されていても、その土地全体が一体として貸し付けられており、かつ分割されることなく相続されていることから、本件土地全体を1画地として評価すると判断した平成10年6月23日裁決(裁事55集479頁)は、利用の単位となっている1区画の宅地を評価単位とする理由について、次のように示しました。
「1画地の宅地とは、一般的には、その宅地又は借地権等を取得した者(権利者)が、その土地を使用収益、処分をすることができる利用単位ないし処分単位であつて、その土地を自用地として使用している限り、他から制約を受けることがないので、それを1利用単位つまり1画地として評価するものと解されている。」
東京地裁平成8年1月26日判決(税資215号93頁)は、評価通達が、宅地については利用の単位となつている一画地の宅地ごとに評価することとしているのは、土地の現実の利用状況に即して土地の評価を行う趣旨であつて、土地の時価の評価方法として妥当であると判断しました。
仙台地裁昭和40年2月22日判決(税資41号142頁)は、評価基準としての路線価方式の適用上、宅地の筆数を単位とすべきである旨の納税者の主張を排斥しました。控訴審の仙台高裁昭和41年5月24日判決(税資44号660頁)も、原審判決を支持しています。
東京地裁昭和59年2月29日判決(税資135号240頁)は、6筆の一団の土地が4つに区分され、それぞれ利用されている場合、相続税の課税価格の算定にあたつては筆の区分や各相続人の取得した区分に関わりなく、相続当時の利用状況に従い利用の単位となつていた1区画の宅地ごとに評価するのが相当であると判断しました。控訴審の東京高裁昭和59年10月31日判決(税資140号206頁)も、原審判決を支持しています。
静岡地裁平成5年5月14日判決(税資195号298頁)は、贈与により取得した宅地の評価に際して、現在においては一体利用されていないとしても、近い将来それが見込まれ、かつその実現が確定的である場合には、一体利用が見込まれる他の筆の宅地をも併せた一画地の宅地についての評価を通じて、個別の宅地の評価をすることが相当であると判断しました。控訴審の東京高裁平成6年1月26日判決判決(税資200号131頁)、上告審の最高裁平成7年6月9日第二小法廷判決(税資209号981頁)も、一審判決を支持しています。
千葉地裁平成10年10月26日判決(税資238号811頁)は、相続財産の評価に当たり、自用地と使用貸借により貸し付けられている部分とが一団の画地を形成している場合には、これを合わせて、自用地として一体評価すべきと判断しました(同旨:質疑応答事例「宅地の評価単位-使用貸借」)。控訴審の東京高裁平成11年8月30日判決(税資244号387頁)も、原審判決を支持しています。
贈与、遺産分割等による宅地の分割が行われた場合
贈与、遺産分割等による宅地の分割が行われた場合には、原則として、その分割後の画地を「1画地の宅地」として評価します。ただし、贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われた場合において、例えば、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」とするとされています(評基通7-2(1)注)。
平成21年8月26日裁決(東裁(諸)平21第12号)は、次のように示しています。
「評価基本通達7-2の注書によれば、遺産分割が著しく不合理であると認められるときは、分割前の画地を『1画地の宅地』とするが、かかる事情がない限り、原則として分割後の画地を『1画地の宅地』とすることとなる。これは、相続税の計算について、いわゆる法定相続分課税方式による遺産取得者課税を採用していることに加え、民法(909条)が遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生じる旨規定していることなどから、土地の時価の算定に当たり、遺産分割等による宅地の分割後の所有者単位で評価することが相当であるとの理由に基づくものと解され(る。)」