概要
合同会社を経営している方が、事業が大きくなり、資金を広く集めようとしたときには株式会社への変更を考えるでしょう。合同会社が株式会社に変更をすることを組織変更といいます。
合同会社から株式会社への組織変更をする場合の手続き
合同会社から株式会社への組織変更をする場合の手続きは(1)組織変更計画の作成、(2)総社員の同意、(3)債権者保護の手続き、(4)組織変更の効力発生、(5)組織変更の登記の順となります。
(1)組織変更計画の作成
法定事項を定めた組織変更計画を作成する必要があります。法定事項とは、組織変更後の株式会社の目的、商号、本店の所在地、発行可能株式総数、取締役の氏名や効力発生日といったものです。
(2)総社員の同意
組織変更の効力発生日(上記「組織変更計画」の記載事項の1つ)の前日までに、組織変更計画について総社員の同意を得なければならないことになっています。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りではありません。なお、社員の同意は、組織変更の効力発生日の前日までに得ればよいので、(3)債権者保護の手続きのほうを先行させてもよいということになります。
(3)債権者保護の手続き
債権者保護のために、次に掲げる事項を官報に公告をし、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならないことになっています。
①組織変更をする旨
②債権者が一定の期間内(1か月以上)に異議を述べることができる旨
(4)組織変更の効力発生
組織変更計画で定めた効力発生日に株式会社となります。効力発生日に、組織変更計画の定めに従い、定款の変更をしたものとみなされます。そして、組織変更をする合同会社の社員は、効力発生日に、組織変更計画の定めに従い、組織変更後の株式会社の株主となります。
(5)組織変更の登記
会社が組織変更をしたときは、その効力が生じた日から2週間以内に、その本店の所在地において、組織変更前の会社については解散の登記をし、組織変更後の会社については設立の登記をしなければならないことになっています。つまり、合同会社の解散と株式会社の設立の登記をするということになります。
持分会社の組織変更(持分会社→株式会社)の登記申請書記載例(法務局HP)【R4.11.11更新】
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001367816.pdf
合同会社から株式会社へ組織変更にする場合の税務上の注意点
(1)会社は同一の法人格が維持される
合同会社から株式会社への組織変更をした場合には、異動届出書を所轄の税務署、都道府県税事務所および市町村役場に速やかに提出します。
ただし、組織変更をして株式会社となった場合でも、組織変更前の合同会社の法人税法上の事業年度および消費税法上の課税期間は、その組織変更によっては区分されず、そのまま継続します。
また、組織変更前の合同会社が有していた資産および負債の帳簿価額を変更することはできないとされています。つまり、合同会社が有していた資産等が帳簿価額のままで株式会社に移転するということになりますので、移転にかかわる譲渡損益は生じないということになります。また、組織変更前の合同会社が繰越欠損金を有していた場合は、それも株式会社に引き継がれることになります。
つまり、登記上は、合同会社の解散と株式会社の設立の登記をすることになりますが、税務上は解散および設立はなかったものが如く同一の法人格を維持する取り扱いがされるということになります。
(2)社員は「株主」となる
合同会社から株式会社への組織変更をした場合には、組織変更前の合同会社の社員は、株式会社の株主となります。この場合において、次のとおりとなります。
ア 組織変更前の合同会社の社員が有していた出資に代えて、株式会社の株式のみが交付される場合
この場合には、有していた出資の取得価額が株式の取得価額に引き継がれるため、課税関係は生じません。
イ ア以外の場合
例えば、組織変更前の合同会社の社員が有していた出資に代えて、株式と現金が交付されたとします。このような場合には、みなし配当が生ずることがあります。会社法上の配当ではないけれども、経済的実態が配当と異ならないものについては、税法上、配当とみなされます。これをみなし配当といい、課税関係が生じます。