概要

 原則として、土地(土地の上に有する権利を含む。)の譲渡及び貸付けは非課税とされています(消法6①、別表第二第一)。

 ただし、土地の貸付けのうち、「貸付けの期間が1月に満たない場合」及び「駐車場その他の設備の利用に伴って土地が使用される場合」には課税の対象になります(消令8)。

貸付けの期間が1月に満たない場合

 「土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合」に該当するかどうかは、その土地の貸付けに係る契約において定められた貸付期間によって判定します(消基通6-1-4)。

駐車場その他の設備の利用に伴って土地が使用される場合

駐車場

 駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合には、駐車場という施設の貸付け又は車両の管理という役務の提供について消費を観念することができます。

 そのため、単なる土地の貸付けと同列に論じることはできず、消費税の課税対象となります。

 なお、事業者が駐車場又は駐輪場として土地を利用させた場合において、その土地につき駐車場又は駐輪場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき(駐車又は駐輪に係る車両又は自転車の管理をしている場合を除く。)は、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれます(消基通6-1-5(注)1)。

 例えば、更地を借り受け、アスファルト舗装等の地面の整備をして、駐車場として貸し付けを行った場合、自己の負担で駐車場の設備を行い駐車場として貸し付けていますので、駐車場の賃貸料収入は課税売上げになります。

 一方、支払地代は、例えその土地が駐車場に使うものとして貸し付けられていても、もともと何ら駐車場としての設備をしていない更地を借り受けたのですから、非課税となり課税仕入れの対象とはなりません。

 なお、将来、更地として返還する場合の現状回復費用(設備の取壊し費用等)は課税仕入れの対象になります。

その他の設備

 「その他の施設の利用」に伴って土地が使用される場合のその土地を使用させる行為は土地の貸付けから除かれますので、例えば、建物(オフィスビル等)、野球場、プール又はテニスコート等の施設の利用が土地の使用を伴うことになるとしても、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれないため、テニスコートや野球場等の貸付けは課税対象とされます(消基通6-1-5)。

 なお、この場合において、建物の貸付け等に係る対価と土地の貸付けに係る対価とに区分しているときであっても、その対価の額の合計額がその建物の貸付け等に係る対価の額となります(消基通6-1-5(注)2)。

駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合は、消費税の課税対象であるとされた大阪高裁平成28年7月28日判決(税資266号-115(順号12893))要旨

 (消費税)法が土地の貸付けを非課税取引としている趣旨に鑑みれば、土地の使用を伴う取引であっても、駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合には、駐車場という施設の貸付け又は車両の管理という役務の提供について消費を観念することができるから、単なる土地の貸付けと同列に論じることはできず、消費税の課税対象とすることが合理的である。(消費税法)施行令8条は、このような観点から、土地の貸付けにつき、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合を消費税の課税対象として定めているものと解される。したがって、土地の貸付けであっても、それが駐車場という施設の利用に伴って土地が使用されるものであれば、法6条1項所定の非課税取引には当たらず、法4条1項により消費税の課税対象とされることとなる。(原審判決引用)

 施行令8条の「駐車場」とは、屋根付きやシャッター付き、ビル式駐車場のみを指すのではない。駐車場として使えるように通路部分も含めて整地し、区画割のためにロープや白線を設置し、駐車場所を特定するために番号が記載されたコンクリートブロックや札を設置することによって、限られた面積の土地上において相当数の車両を効率的かつ整然と駐車させることができるという効果がもたらされているのであれば、そのような設備も駐車場ということができる。

令和3年3月23日裁決(熊裁(諸)令2第7号)(棄却)

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人Xが行った土地の貸付けは、駐車場その他の施設の利用に伴って、土地が使用される場合に当たり、課税資産の譲渡等に該当するとして、原処分庁が消費税等の決定処分等をしたのに対し、Xが、当該土地の貸付けは、課税資産の譲渡等に該当しないとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2)本件の主な争点

 本件土地の貸付けは、消費税法施行令8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に該当し、課税資産の譲渡等に該当するか否かである。

(3)裁決要旨(棄却)

① 賃貸借契約の締結時点において、本件土地には、駐車場用地としてのアスファルト舗装等がされ、駐車場としての用途に応じる地面の整備がされていたと認められる。
 Xは、賃貸借契約に基づき、本件土地が無人時間貸駐車場として利用されることに合意し、実際に駐車場としての用途に応じるアスファルト舗装等がされた本件土地を貸し付け、賃借人Aは、必要な設備を設置して無人時間貸駐車場として本件土地を継続して利用していたと認められる。
② そうすると、XとAとの間の賃貸借契約に基づく本件土地の貸付けは、単なる土地の貸付けではなく、消費税法基本通達6-1-5の注書1に定める「駐車場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき」に該当せず、消費税法施行令第8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たるというべきであるから、課税資産の譲渡等に該当する。
③ Xは、原状回復に係るアスファルト舗装等の費用を支出していない及び駐車場を運営するまでの費用を負担していないため、消費する財として、駐車場用設備等を取得しておらず、本件土地の貸付けは、消費を伴わない土地そのものの貸付けであり、消費税の性格上、非課税取引と解することができる旨主張する。
④ しかしながら、Xは、Bからアスファルト舗装等がされた本件土地の返還を受けた後、Aが本件土地において必要な設備を設置して無人時間貸駐車場経営を行うことに合意し、Aに対してアスファルト舗装等がされた本件土地を継続して貸し付けて賃料を得ていたことが認められる。そして、消費税は、物品の消費に税負担を求める性格のものであり、消費税法施行令8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」は、土地そのものの貸付けではなく、駐車場その他の施設の利用に消費としての性格が認められることから課税の対象としたものであり、本件土地の貸付けは、単なる土地の貸付けではなく、駐車場としての機能を備えた施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するものと判断される以上、原状回復に係る本件アスファルト舗装等の費用をXが支出していないことを理由に、本件の判断が左右されるものではない。
 したがって、Xの主張には理由がない。