個人
個人が株式等の有価証券を購入で取得した場合、取得価額は購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)となります(所令109①五)。
有価証券の購入のために要した費用とは、株式等を購入するに当たって支出した買委託手数料(当該委託手数料に係る消費税及び地方消費税を含む。)、交通費、通信費、名義書換料等をいいます(措通37の10・37の11共-10)。
法人
法人が株式等の有価証券を購入で取得した場合、取得価額は購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)となります(法令119①一)。
ただし、有価証券の購入のために要した費用のうち、通信費、名義書換料は有価証券に含めずに一時の損金とすることができます(法基通2-3-5)。一般的にその金額が少額であるためです。
また、外国有価証券の取得に際して徴収される有価証券取得税その他これに類する税についても、同様に一時の損金とすることができます。
買収した会社に係るデューデリジェンス費用について株式の取得価額に算入すべきとされた事例-令和6年1月24日裁決(高裁(法)令5第4号)(棄却)
(1)事案の概要
法人である審査請求人Xは、企業買収を行うに当たり、買収の対象となる会社に意向表明書を提出し、当該会社が応諾した後、デューデリジェンス(以下「DD」という。)を実施し、DDの結果を踏まえて、当該会社を買収するか否かについて、取締役会又は常務会で決定することとしていた。
Xが、買収した会社に係るデューデリジェンス費用(以下「本件DD費用」という。)について損金の額に算入していたところ、原処分庁が、本件DD費用は、当該会社の株式の購入のために要した費用であり当該株式の取得価額に算入すべきものとして、法人税等の更正処分等(以下「本件更正処分等」という。)を行ったことから、Xが原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)本件の主な争点
本件DD費用は、法人税法施行令119条1項1号に規定する「その有価証券の購入のために要した費用」に当たるか否かである。
(3)裁決要旨(棄却)
① 有価証券の取得価額に加算すべき「有価証券の購入のために要した費用」とは、実際に取得した有価証券について、原則として、当該有価証券の取得を目的としてその取得に関連して支出する一切の費用が含まれると解されるところ、この判断に当たっては、例えば、取得しようとする有価証券の候補が複数ある場合において、いずれの有価証券を取得すべきかを決定するために行うDDに係る費用は、通常、取得を目的とする株式が特定されていないことから、実際に取得した有価証券の取得との関連性は希薄であるといえる。
しかし、少なくとも、特定の有価証券を取得する前提で行うDDに係る費用は、その特定の有価証券の取得を断念した場合を除き、当該有価証券の取得を目的としてその取得に関連して支出する費用というべきである。
② これを本件についてみると、買収対象会社に対するDDに係る見積書、DDの報告書及び業務委託契約書において、いずれも対象業務や委託する業務等として買収対象会社の株式取得に伴うなどと記載されていることからすると、Xは、買収対象会社に対するDDを、買収対象会社の株式という特定の株式の取得を目的として委託したものと認められる。
③ Xが行った上記②の委託は、Xが企業買収を行う際の通常の手順に沿ったものであり、XにとってDDは、買収する会社の株式を取得するために必要なプロセスの一つと評価でき、本件DD費用は、買収対象会社の株式という特定の株式の取得を目的としてその取得に関連して支出した費用であると認められる。したがって、本件DD費用は、法人税法施行令119条1項1号に規定する「その有価証券の購入のために要した費用」に当たる。
④ Xは、「その有価証券の購入のために要した費用」は、株式を購入すると決めた後の費用のみが該当し、本件DD費用は、取締役会等の意思決定前に発生したものであることから、株式を購入するか否かの意思決定を得るための必要経費であり、「その有価証券の購入のために要した費用」に当たらない旨主張する。
しかしながら、企業買収において、実際に特定の株式の取得が完了するまでの一連の流れからみれば、特定の株式を購入するか否かの意思決定を得るための費用も当該株式の取得を目的としてその取得に関連した支出であることに変わりはなく、また、「購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用」には、原則として、当該株式の取得を目的としてその取得に関連して支出する一切の費用が含まれると解されることから、株式を購入すると決めた後の費用のみが法人税法施行令119条1項1号に規定する「その有価証券の購入のために要した費用」に該当すると解することはできない。
⑤ 本件更正処分等は適法である。