個人
個人が認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)に対して一定の寄附金を支出した場合(寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるものおよび令和3年4月1日以降に支出する出資に関する業務に充てられることが明らかなものを除きます。)には、支払った年分の所得控除として寄附金控除の適用を受けるか、または支払った年分の税額控除の適用を受けるかの、いずれか有利な方を選択することができます(所法78、措法41の18の2、措令26の28)。
個人が暗号資産の寄附をした場合には、その寄附をした時におけるその暗号資産の価額に相当する金額(時価)が寄附金の額となります。
この時価については、原則として、認定NPO法人が保有するウォレットで寄附に係る暗号資産を受領した時のその暗号資産の市場価格となりますが、取引相場に大きな変動が認められないような場合には、価格等公表者によって公表されたその受領した日の前日の最終の売買の価格により計算した金額を付することとしても課税上の弊害はないと考えられています。
また、個人が暗号資産の贈与(相続人に対する贈与で被相続人である贈与者の死亡により効力を生ずるものを除きます。) をした場合には、事業所得又は雑所得の金額の計算上、その贈与の時における暗号資産の価額を総収入金額に算入することとされています。
したがって、保有する暗号資産を法人に寄附した場合には、寄附をした個人の事業所得又は雑所得の計算上、その寄附の時における暗号資産の価額(時価)を総収入金額に、その暗号資産の帳簿価額を必要経費に、それぞれ算入することとなります(所法40、所令87)。
計算例
(Q) 自己が保有している帳簿価額5,000,000円の4BTCを認定NPO法人であるA協会の行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄附として、X年4月2日にA協会が保有するウォレットに移転しました。
A協会からの寄附に関する事項を証する書類に、寄附金の額は5,400,000円である旨、記載されている。この寄附金の額については、暗号資産取引所によって公表されたX年4月1日における1BTC の最終の売買の価格である1,350,000 円に4を乗じて計算した金額となっています。
このX年4月1日における1BTC の最終の売買の価格とA協会が4BTC を保有するウォレットで受領した時の1BTC の売買の価格とに大きな差異は認められません。
(A)1,350,000 円×4BTC=5,400,000円が、A協会に対する寄附金の額となります。
また、帳簿価額5,000,000円と寄附金の額5,400,000円との差額である400,000円が、暗号資産の譲渡に係る利益の額となります。
申告等の方法
認定NPO法人等寄附金特別控除を受けるための手続については、次のとおりです。
この税額控除を受ける場合は、確定申告書に控除を受ける金額についてその控除に関する記載があり、かつ、「認定NPO法人等寄附金特別控除額の計算明細書」および寄附金を受領した旨、寄附金が認定NPO法人の主たる目的である業務に関連する旨、寄附金の額および受領年月日を証する書類(寄附者の住所、氏名が記載されたもので、電磁的記録印刷書面を含みます。)を確定申告書に添付する必要があります(措規19の10の4)。
法人
法人が認定NPO法人に対してその認定NPO法人が行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなものおよび法人税法37条3項各号に規定する寄附金に該当するものを除きます。)を支出した場合には、一般の寄附金に係る損金算入限度額とは別枠で、特別損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入されます(法法37、措法66の11の3)。
なお、上記の特別損金算入限度額を超える部分の金額は、一般の寄附金に係る損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入されます。
法人が暗号資産の寄附をした場合には、その寄附をした時におけるその暗号資産の価額に相当する金額(時価)が寄附金の額となります。
また、法人が認定NPO法人に暗号資産の寄附をする行為は、認定NPO法人に暗号資産を無償で譲渡する行為であるため、その譲渡の時における暗号資産の価額とその暗号資産の帳簿価額に相当する金額の差額である譲渡損益額を、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとなります(法法61)。
手続き
この規定の適用を受けるためには、認定NPO法人に対する寄附金を支出した日を含む事業年度の確定申告書に「寄附金の損金算入に関する明細書」(別表14(2))を添付するとともに、その寄附金が認定NPO法人の行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄附金である旨をその認定NPO法人が証する書類を保存しておく必要があります(措規22の12)。