概要

 法人住民税均等割は、「法人住民税均等割の税率区分の基準となる資本金等の額」によって金額が決まります。多くの中小企業の場合、「法人税法上の資本金等の額」が「法人住民税均等割の税率区分の基準となる資本金等の額」となりますので、難しいことではありません。

 ただし、無償増資等があった場合は複雑となり、一定の手順により「法人住民税均等割の税率区分の基準となる資本金等の額」を算出します。

「法人住民税均等割の税率区分の基準となる資本金等の額」の算出手順

手順1 「地方税法上の資本金等の額」を算出

 まず、「地方税法上の資本金等の額」を算定します。

「(1)法人税法上の資本金等の額」に、「(2)無償増資の額」を加算し、「(3)無償減資又は資本準備金を減少し欠損填補に充てた金額」を控除した額が、「地方税法上の資本金等の額」となります(地法23①四の二、292①四の二)。

「地方税法上の資本金等の額」=「(1)法人税法上の資本金等の額」+「(2)無償増資の額」-「(3)無償減資又は資本準備金を減少し欠損填補に充てた金額」

(1)法人税法上の資本金等の額
 法人税法2条16号に規定する資本金等の額(保険業法に規定する相互会社にあっては純資産額、連結法人にあっては、法人税法2条17号の2に規定する連結個別資本金等の額)

(2)無償増資の額
 平成22年4月1日以後に、利益準備金及びその他利益剰余金を資本金とした額

(3)無償減資又は資本準備金を減少し欠損填補に充てた金額
・平成13年4月1日から平成18年4月30日までの間(旧商法適用期間)に、資本又は出資の減少(金銭その他の資産を交付したものを除く。)により資本の欠損の填補に充てた金額並びに資本準備金による資本の欠損の填補に充てた金額
・平成18年5月1日以後(会社法適用期間)に、剰余金(損失の填補に充てた日以前1年間において、資本金又は資本準備金を減少し剰余金に計上した額に限る。)を損失の填補に充てた金額(マイナスの利益剰余金が発生した場合における資本金又は資本準備金のてん補)
※(3)無償減資又は資本準備金を取崩し欠損填補に充てた金額を控除する場合は、その内容を証する書類を添付した場合に限り、控除することができます。

平成27年度税制改正の解説946頁

 無償増減資の取扱いを、資本割の課税標準と均等割の税率区分の基準で同様とすることとされました。すなわち、法人税法上の「資本金等の額」は、無償増減資が行われた際も額が変動しませんが、今回の改正により、均等割の税率区分の基準についても、既に措置されていた資本割の課税標準と同様に、無償増減資による額の増減が、基準である「資本金等の額」に反映されることとされました(地法23①四の五、52④、292①四の五、312⑥等)

手順2 「地方税法上の資本金等の額」と「資本金と資本準備金の合算額」の比較

 手順1により算出された「地方税法上の資本金等の額」が、「資本金と資本準備金の合算額(又は出資金の額)」に満たない場合は、「資本金と資本準備金の合算額」が法人住民税均等割の税率区分の基準となります(地法52④、312⑥)。

(1)「地方税法上の資本金等の額」 > 「資本金と資本準備金の合算額」
 法人住民税均等割の税率区分の基準となるのは、「地方税法上の資本金等の額」です。

(2)「地方税法上の資本金等の額」 < 「資本金と資本準備金の合算額」
 法人住民税均等割の税率区分の基準となるのは、「資本金と資本準備金の合算額」です。

 「資本金の額」や「資本準備金の額」という用語については、地方税法上では、特に定義規定が設けられてはいません。一般的に、このような場合については、借用概念として、他の法分野における意義と同様に解するべきと考えられています(租税法第24版126頁/金子宏著)。

 つまり、この場合における 「資本金の額」や「資本準備金の額」とは、貸借対照表に表示される「資本金の額」や「資本準備金の額」ということになります。

 資本準備金を取り崩して、その他資本剰余金を増加させるといった振替処理をした場合に、均等割が安くなる場合もあるということで、振替処理を実施される法人もありますが、税負担軽減だけでなく慎重な検討が必要かと思います。

計算例

資本金1500万円 内訳 設立時における資本金300万円、平成20年4月1日に利益準備金1200万円を資本金に組入れ(無償増資)

手順1
 無償増資をした場合には、「(1)法人税法上の資本金等の額」は増減しません。また、無償増資をしたのが平成20年4月1日のため、「(2)無償増資の額」が加算されません。よって、「地方税法上の資本金等の額」は300万円となります。

手順2
「地方税法上の資本金等の額」 < 「資本金と資本準備金の合算額」のため、1500万円が法人住民税均等割の税率区分の基準となります。

合同会社で無償減資をして欠損填補を行った場合

 無償減資をして欠損填補を行った場合、「地方税法上の資本金等の額」の算出において控除できるとのことでした。このことについて、地方税法の規定は以下となっています。

地方税法23条1項4号の2イ(3)(同法292条1項4号の2イ(3)も同じ)
 平成18年5月1日以後に、会社法第446条に規定する剰余金(同法第447条又は第448条の規定により資本金の額又は資本準備金の額を減少し、剰余金として計上したもので総務省令で定めるものに限る。)を同法第452条の規定により総務省令で定める損失の塡補に充てた金額

 なお、地方税法23条1項4号の2イ(3)における総務省令とは、以下の規定です。

地方税法施行規則1の9の6
2項 法第23条第1項第4号の2イ(3)に規定する剰余金として計上したもので総務省令で定めるものは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 会社法(略)第447条の規定により資本金の額を減少した場合 会社計算規則第27条第1項第1号に規定する額
二 会社法第448条の規定により準備金の額を減少した場合 会社計算規則第27条第1項第2号に規定する額

4項 法第23条第1項第4号の2イ(3)に規定する総務省令で定める損失は、会社法第452条の規定により損失の塡補に充てた日における会社計算規則第29条に規定するその他利益剰余金の額が零を下回る場合における当該零を下回る額とする。

 ここまであげられている会社法条文(446~448、452条)は株式会社についてです。合同会社の資本金の額を減少する規定は会社法620条です。

会社法620条
 持分会社は、損失のてん補のために、その資本金の額を減少することができる。
2 前項の規定により減少する資本金の額は、損失の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えることができない。

 会社法620条について地方税法がふれていないため、合同会社が無償減資をして欠損填補を行ったとしても、「地方税法上の資本金等の額」の算出において控除できないかもしれません。