概要
暗号資産売却における必要経費は所得の区分によって違ってきますので、注意をする必要があります。
暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)
「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)2-3 暗号資産の必要経費」では、下記のように示されています。
暗号資産の売却による所得の計算上、必要経費となるものには、例えば次の費用があります。
・ その暗号資産の譲渡原価
・ 売却の際に支払った手数料
このほか、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、暗号資産の売却のために直接必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます。
暗号資産の売却による所得は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されますので、その所得金額は、総収入金額から必要経費を控除することにより算出します(略)。
この必要経費に算入できる金額は、暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額です。
必要経費については、次の事項に注意してください。
① インターネットやスマートフォン等の回線利用料については、一般的に、暗号資産取引に係る利用料とそれ以外の利用料を一括で支払うこととなりますが、このような支出については、暗号資産取引に係る利用料を明確に区分できる場合に限り、その明確に区分された金額を必要経費に算入することができます。
② パソコンなど、使用可能期間が1年以上で、かつ、一定金額を超える資産については、その年に一括して必要経費に計上するのではなく、使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費(こうした費用を「減価償却費」といいます。)とする必要があります。
なお、暗号資産取引に係る所得が、事業所得又は雑所得(業務に係る雑所得)に区分される場合には、その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額も必要経費に算入することができます。
注意点
「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)2-3 暗号資産の必要経費」からわかることは、暗号資産の売却による所得が「その他雑所得」に該当する場合の必要経費に算入できる金額は、「暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額」となります。
これが、暗号資産の売却による所得が「事業所得」又は「業務に係る雑所得」に該当する場合の必要経費に算入できる金額は、「暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額」の他に「販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額」も加えた金額となります。
つまり、暗号資産の売却による所得が雑所得だとしても、「その他雑所得」なのか「業務に係る雑所得」なのかで、必要経費の範囲が変わってしまうということです。
「販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額」で考えられるものとして、セミナー参加費、書籍代や税理士報酬などがあります。
暗号資産は、本来、譲渡所得の基因とならない資産であり、「その他雑所得」に該当(所基通35-1(12))しますが、営利を目的として継続的に行う暗号資産の譲渡から生ずる所得は「業務に係る雑所得」となります(所基通35-1(12)カッコ書、35-2(7))。
そのため、営利を目的として継続的に行っているか否かで判断をするということになりますが、「その他雑所得」なのか「業務に係る雑所得」なのかで今後争われるであろう裁判例により具体的な判断基準が示されるまでは、慎重な検討が必要かと思います。
個人的には、明らかに「その他雑所得」に該当するといえるような暗号資産取引で顧問依頼がある場合は、トラブル防止のために予め依頼者に「税理士報酬が必要経費にならない可能性がありますが、それでも、ご依頼されますか?」と尋ねています。
また、上記情報では、インターネット等の回線利用料やパソコンについて、必要経費に算入できる場合について記載されていますが、実際の争いになると厳しく判断される可能性があります。
平成25年3月7日裁決(大裁(所)平24第58号)では、FX取引に係る雑所得の金額の計算上、パソコン購入費、インターネット通信料等を必要経費に算入できるのか争われましたが、結果的に、必要経費に算入できない旨判断されました。
その理由としては、「家事関連費に該当し、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分できないこと」や、「業務との関連性が明らかではないこと」に該当することが挙げられています。
まとめ
(1)事業所得、業務に係る雑所得の必要経費
「暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額」+「販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額」
(2)その他雑所得の必要経費
「暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額」