概要
金融庁は令和6年11月28日、無登録で暗号資産(仮想通貨)交換業を行っているとして、以下の5社に対して警告書を発出しました。
業者名等 | 運営 | 所在地 |
---|---|---|
KuCoin | KuCoin | セーシェル共和国 |
Bitcastle LLC | bitcastle | Euro House, Richmond Hill Road, Kingstown, St. Vincent and the Grenadines |
Bybit Fintech Limited | Bybit | ドバイ |
MEXC Global | MEXC | シンガポール共和国 |
Bitget Limited | Bitget | シンガポール共和国 |
いずれの業者も日本国内に所在地はありませんが、インターネットを通じて、日本居住者を相手方として暗号資産交換業を行っています。
日本居住者を相手方として暗号資産交換業を行う場合は、業者が海外に所在していても、日本の資金決済法では金融庁への登録が必要となっています。
そのため、上記5社は日本の法律上、違反をしている状態となっています。なお、上記5社は、日本居住者が多く利用しているため警告されただけのことで、違反している海外の業者は他にもたくさんあります。
一方、暗号資産の1日の取引量が世界最大である取引所Binance(ケイマン諸島)の場合は、Binance Japan株式会社(グループ会社)として金融庁への登録を行っています。
もともと、この法整備の発端は、2022年に発生したFTX(当時、取引高で世界2位の規模)の破綻が契機となっています。日本居住者の投資家が暗号資産を引き出せず、損害を受けたことによるものです。
一方、FTXのグループ会社であり日本に所在していたFTX Japan株式会社(当時、本店:東京都千代田区、第一種金融商品取引業者)は金融庁への登録を行っていたため、金商法に基づく国内保有命令の発出ができました。
国内の取引所は手数料が高い、使い勝手が悪い、取扱い銘柄数の少なさ等の理由により、海外の無登録の取引所を利用されている日本居住者は結構多いのが実情だと思います。
国内の取引所を利用しているのは、ほぼ日本居住者だけであり、かつ、暗号資産は株式やFX取引と比べてはるかに取引量が少ない状況です。そのため、国内の取引所が、グローバルに展開している海外の取引所には勝てないのが実情だと思います。
ただし、国内の金融庁に登録されている取引所で取引をする方が安全です。金融庁に登録されている取引所の場合、仮に取引所の経営がうまくいかなくなっても、投資家は保護されます。
youtubeやブログでのアフィリエイト等による海外の無登録の取引所への勧誘は多いですが、慎重な行動が必要なのではないかと思います。
税制
現時点では、暗号資産取引による所得は総合課税となっています(おそらく、ここ数年は変わらないでしょう)。いずれは、申告分離課税になるときがくるかもしれませんが、その場合、金融庁に登録されている取引所での暗号資産取引しか認められないと思います。
FX取引による所得が、国内FXは申告分離課税となっているが、海外FXは総合課税であることと同じようになると思います。
平成28年度税制改正により、平成28年10月1日以後に行うFX取引から、このような取り扱いが明確化されましたが、平成28年度税制改正の解説では、この理由について以下のように解説しています。
「近年、金融商品取引法に基づく金融商品取引業の登録をしていない海外に所在する業者が、インターネット取引によって日本の居住者を相手方として店頭取引等を行うケースが見受けられ、投資家とのトラブルが生じています。こうした海外の無登録業者との取引は適切な投資家保護が確保できない取引であることから、無登録業者との取引を本特例の対象外とする観点から(略)改正が行われました」
海外FXを税制上優遇しない理由が、まさに、海外の無登録の暗号資産取引所の場合にも当てはまります。
ですから、将来、暗号資産取引による所得が申告分離課税となっても、海外の無登録の暗号資産取引所での取引は総合課税のままであると思います。財務省が登録業者と無登録業者を同列に扱うとは、到底思えません。