概要
公募投資信託等が海外の資産に投資している場合、その投資から得た配当等に対して、まず外国で課税されます(外国所得税)。そして、証券会社等が、国内の投資家に対して、この公募投資信託等の収益分配金を支払う際には源泉徴収をするので、日本でも所得税等が課税されます。
つまり、公募投資信託等が海外の資産に投資している場合、外国所得税と日本の所得税等が課税されていることになります。
ただし、2020年1月1日以降、証券会社等が、外国所得税が課税された公募投資信託等の収益の分配金を支払う際には、二重課税調整計算が行われています。
計算は、①いったん、外国において課税されていないとみなして収益分配金の額を算出(グロスアップ計算)し、所得税等を計算します。②その所得税等額から一定の外国所得税を控除することにより、二重課税調整が行われることになります。
ただし住民税については、二重課税調整制度の適用はありません。また、特別分配金は二重課税調整の対象外となります。NISA口座も二重課税調整の対象外となります。
(例)
分配金1,000円で外国所得税の税率が10%、日本での税率は所得税等15.315%、住民税5%とします。
外国所得税 1,000円×10%=100円
所得税等 1,000円×15.315%-100円(外国所得税)=153円-100円=53円
住民税 1,000円×5%=50円
税額合計 100円+53円+50円=203円
所得税等額から一定の外国所得税を控除(事例では、100円)されているため、二重課税とならないように調整されています。
なお、実際の計算はもう少し複雑で、必ずしも外国税額の全額が控除できるとは限りません。ただし、投資家が実際計算をするのではなく、証券会社等が計算し源泉徴収をし、また、以下のような通知等をしますので、投資家の手間がかかるわけではありません。
証券会社等からの通知等
所得税等額から一定の外国所得税を控除されますが、それについては、証券会社等から投資家に通知等があります。
(1)配当等の支払通知書
証券会社から交付される配当等の支払通知書には、「通知外国税相当額等」欄に、控除額が記載されます。
(2)特定口座年間取引報告書
特定口座(源泉徴収あり)内で分配金を受け入れている時は、「特定口座年間取引報告書」の「上場株式配当等控除額」欄に、控除額が記載されます。
確定申告をする場合
公募投資信託等の収益の分配金について、投資家が確定申告をする場合、総合課税と申告分離課税のいずれを選んだ場合であっても、証券会社等が調整を行った外国所得税相当額を、一般の外国税額控除と区別して、その年分の所得税額及び復興特別所得税額から控除することになります。なお、住民税については控除対象外となります。
この確定申告時の税額控除のことを「分配時調整外国税相当額控除」といいます(所法93、所令220の2)。
証券会社等からの通知等である「配当等の支払通知書」や「特定口座年間取引報告書」を元に「分配時調整外国税相当額控除に関する明細書」を作成し、それを確定申告の際に添付する必要があります。