信用取引

信用取引買付け(買建)の場合-信用取引により株式を買った場合

 信用買いの場合は、証券会社から借りた資金で株式を買い付け、後に、その株式を売却して資金を返済します。なお、現物株と同様に株価上昇で利益が発生します。

 例えば、信用買いで100万円をした株式を160万円で売れれば、160万円-100万円=60万円が利益になるということです。ただし、株価の下落で損失が出るということです。

信用取引で買建てした場合の経理・税務処理

 担保差入有価証券 3011万円   信用取引未払金 3000万円
                 未払金      11万円

 信用取引で買建てした場合は、借り入れによって株式を買い付けますが、直ちに借入金の担保として差し入れるため、「担保差入有価証券」として処理します。日付は、約定日となります。

 買付けを行った者が証券業者等に支払う買委託手数料、名義書換料等は、買付けに係る対価の額に含めます(法基通2-3-2(3))。ただし、買委託手数料以外は、買付けに係る対価の額に含めず、その発生に応じ費用として損金の額に算入している場合には、継続適用を条件として認められます(法基通2-3-2本分)。

 買委託手数料は決済時に精算するため、「未払金」として処理します。株式を買い付けた代金は、証券会社から借りた資金であるため、「信用取引未払金」として処理します。

委託保証金の差入れをした場合の経理・税務処理

 差入保証金 900万円  現金預金 900万円

 信用取引で買建てをする場合は、委託保証金(約定価額の30%か、30万円のいずれかより多い金額)を差入れする必要があり、その際に、上記のような仕訳をします。

 株式相場の変動により、委託保証金の額が20%を下回った時は、追加の保証金(追証)を要求されます。追加の保証金を差し入れることができない場合は、強制決済となります。

 なお、現金預金の代わりに、有価証券を差入することもでき、その場合は、下記のような仕訳をします。

 差入保証金代用有価証券 1000万円 差入保証金代用有価証券見返 1000万円

 この場合の差入保証金代用有価証券の金額は、差し入れた有価証券の簿価金額を記載します。なお、株式相場が下落傾向にある場合は、差入れた株式じたいの価値が下がり、追加の保証金等を要求される場合があります。

信用取引買付け(買建)の決済方法

 信用取引買付け(買建)の場合、所定の期限内に、信用取引の決済をする必要があります。「買って売る」という一連の行為を終わらせることを「手仕舞う(返済、 決済 )」といいます。

 信用取引の決済方法には、主たる決済方法である反対売買による差金決済(売決済)と、現物株式の受渡しによる現物決済(現引)があります 。それぞれの信用取引の決済方法(信用買いの返済)は次のとおりです。

イ 売決済 … 証券会社から借りた資金で買付けた株式を市場で売却し、「株式を買う時に借りたお金」と「株式の売却代金」の差額(差金)の受渡しを行うことで決済する方法

ロ 現引き … 証券会社から借り入れた金銭を返済し、信用取引で買い付けていた株式を証券会社から現物株として引取る方法

売決済をした場合の経理・税務処理

 信用取引未払金  3000万円   担保差入有価証券    3011万円
 未払金       11万円   信用取引有価証券売却益 200万円
 現金預金     1098万円   差入保証金       900万円
 支払利息(支払日歩) 2万円

 信用取引の方法により、株式の買付けをし、その後にその株式と銘柄を同じくする株式の売付けをして決済をした場合における譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入については、以下の(1)の金額と(2)の金額の差額を譲渡利益額又は譲渡損失額の金額とし、譲渡に係る契約をした日はその決済に係る売付けの契約をした日とします(法法61の2㉑)。
(1)その売付けをした株式のその売付けに係る対価の額
(2)その買付けをした株式のその買付けに係る対価の額

 売決済をした場合は、一般の現物の保有株式(信用取引以外での株式)と区別して、売却損益を個別法により計算し、売却損益は売決済の約定日の属する事業年度に帰属するということです。

 買付けを行った者が証券業者等に支払う金利に相当する額(支払日歩)は、買付けに係る対価の額に含めます(法基通2-3-2(3))。ただし、買付けに係る対価の額に含めず、その発生に応じ費用として損金の額に算入している場合には、継続適用を条件として認められます(法基通2-3-2本分)。

 また、買付けを行った者が証券業者等から支払を受ける品貸料の額(逆日歩)は、売付けに係る対価の額に含めます(法基通2-3-2(4))。ただし、売付けに係る対価の額に含めず、その発生に応じ収益として益金の額に算入している場合には、継続適用を条件として認められます(法基通2-3-2本分)。

 また、買付けを行った者が証券業者等から支払を受ける配当落調整額及び権利処理価額に相当する額は、買付けに係る対価の額から控除します(法基通2-3-2(5))。ただし、配当落調整額については、買付けに係る対価の額から控除せず、その発生に応じ収益として益金の額に算入している場合には、継続適用を条件として認められます(法基通2-3-2本分)。

 配当落調整額とは、信用取引等に係る株式につき配当が付与された場合において、証券業者等が売付けを行った者から徴収し又は買付けを行った者に支払う当該配当に相当する金銭の額をいいます(法基通2-3-2(注))。15.315%の所得税等を差し引かれた金額となっています。配当そのものではないため、法23条(受取配当等の益金不算入)に規定する配当等の額には含まれず、益金不算入の対象にはなりません(法基通3-1-6)。

 また、権利処理価額とは、信用取引等に係る株式につき、株式分割、株式無償割当て及び会社分割による株式を受ける権利、新株予約権又は新株予約権の割当てを受ける権利(以下「株式を受ける権利等」という。)が付与された場合において、証券業者等が売付けを行った者から徴収し又は買付けを行った者に支払う当該株式を受ける権利等に相当する金銭の額をいいます(法基通2-3-2(注))。

 信用取引等の決済に係る約定が成立した日後に配当落調整額の授受が行われると見込まれる場合の適用は、次の通りとなります(法基通2-3-3)。
(1) 当該配当落調整額は、当該決済に係る約定が成立した日の現況により適正に見積もった金額とします。
(2) (1)により見積もった配当落調整額と実際に授受された配当落調整額とが異なることとなった場合には、当該実際に授受された配当落調整額との差額は、当該差額を授受する日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入します。

現引き(品受け)をした場合の経理・税務処理

 信用取引未払金 3000万円    担保差入有価証券    3011万円
 未払金 11万円         信用取引有価証券運用益 200万円
 有価証券 1800万円       現金預金        702万円
 支払利息(支払日歩) 2万円   差入保証金       900万円

 現引きした有価証券について、現引き約定日の時価で有価証券を取得したことになります(法基通2-3-13)。その額と、担保差入有価証券との差額が信用取引有価証券運用損益となります。

 なお、現引きした有価証券の取得価額は、有価証券の取得の時における価額に受渡決済に伴って新たに支出する委託手数料その他の費用の額を加算した金額となります(当初買付における買委託手数料は、既に取得価額に含まれています。)。

 法人が信用取引の方法により買付けをした株式を現物で引き取ることによって決済をした場合は、現引きをした日ではなく、当該株式をその買付けをした時から所有しているものとして令140条の2第2項又は3項の規定(配当等に係る所得税額控除における所有期間)を適用することができます(16-2-10(注))。

期末未決済株式がある場合の経理・税務処理

 期末に決済したものとみなして、評価損益計上をします(法法61の4①③、法令119の16①)。結果、担保差入有価証券の金額は、「期末時点の時価(終値)×株数」となります。

 売買目的有価証券の期末評価のようなことであり、評価損益を当該事業年度の所得金額の計算上、益金または損金の額に算入します。

 担保差入有価証券 200万円   信用取引有価証券評価損益 200万円

 そして、翌期首に、洗替方式により戻し入れをします。

 信用取引有価証券評価損益 200万円   担保差入有価証券 200万円

消費税

売上

 信用取引の方法により株式の売付けを行った場合におけるその売付けに係る株式の譲渡の時期は、当該売付けに係る取引の決済を行った日となります(消基通9-1-18)。

 信用取引による株式の売付けも株式譲渡であるため、消費税法上は非課税売上となります。課税売上を計算するときは譲渡対価(売決済の場合は売却価額)の5%を分母の金額に算入します(消令48⑤)。決済差益は関係ありません。

 受取品貸料の額(逆日歩)  非課税売上

 受取配当落調整額      不課税売上(対象外)

仕入

 取引における支払った委託手数料には、消費税がかかっています(課税仕入)。

 支払金利の額(支払日歩)   課税仕入ではありません。

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