概要

 有価証券オプション(かぶオプ)取引(金融商品取引法28条8項3号ハに掲げる取引)とは、個別の有価証券の銘柄を原資産とするオプション取引のことをいいます。

 有価証券オプションには、コール・オプション(買い付けることができる権利)とプット・オプション(売り付けることができる権利)の二種類があります。

コール・オプション(買い付けることができる権利)

 買方は、オプション料を支払うことにより、権利行使日にあらかじめ決めておいた値段(権利行使価格)で対象の株式等を買い付けることができる権利を取得します。

 一方、売り方は、オプション料を受け取る代わりに買方が権利の行使をした時は、株式等の売却をする義務があります。

 例えば、買方Xが、A株式について1株当たり、権利行使価格1,000円のコールをオプション料50円で購入したとします。

(1)権利行使日のA株式の株価が1,000円である場合
 この場合、権利行使をしても、市場で購入しても、A株式について1株当たり1,000円の購入時用がかかります。ただし、オプション料50円で購入しているため、結果、コール・オプションをしたことにより、買方Xは50円の損をしたことになります。

(2)権利行使日のA株式の株価が1,000円超である場合
 この場合、権利行使により株を購入すれば、市場から購入するより安く購入することができるということになります。
 例えば、権利行使時のA株式の株価が1,200円であっても、権利行使価格1,000円で購入することができます。オプション料50円がかかっていますが、時価よりも150円(1,200円-1,050円)安くA株式を取得できるということになります。

(3)権利行使日のA株式の株価が1,000円未満である場合
 例えば、権利行使時のA株式の株価が800円ならば、コールを用いて株を1,000円で買う必要はなく、買う権利を放棄できます。この場合、損失は支払ったオプション料50円に限定されます。

取得価額と収入金額

 コール・オプションの買方がオプションの権利の行使により上場株式等を取得をした場合の取得価額は以下となります(措通37の11-10(1))。

取得価額=権利行使価額+取引に関連して支出した委託手数料+支払オプション料

 コール・オプションの売方がオプションの義務の履行により上場株式等を譲渡をした場合の収入金額は以下となります。

収入金額=権利行使価額+受取オプション料

(例)
 コール・オプションで、買方XがA株式を権利行使価額1,000万円、オプション料50万円を支払って権利行使した場合(委託手数料0円)のA株式の取得価額はいくらになるのか?
 また、相手方である売方YのA株式を譲渡をした場合のA株式の収入金額はいくらになるのか?
(答)
 どちらも、1,050万円(1,000万円+50万円)

所得税の取り扱い

 コール・オプションの場合、買方が権利行使をして上場株式等を購入した場合は、上記の取得価額(権利行使価額+取引に関連して支出した委託手数料+支払オプション料)で、将来、その株式等を売却した場合に、上場株式等の譲渡損益を計算します。

 また、売方は、買方の権利行使により上場株式等を譲渡した場合は、上記の収入金額(権利行使価額+受取オプション料)から、その株式等の取得価額を差し引き、上場株式等の譲渡損益を計算します。その譲渡損益は、上場株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象となります。

 なお、買方が権利放棄をした場合、買方が当初に支払ったオプション料は損失となり、一方、売方が当初に受け取ったオプション料は益となります。これらの損益は、先物取引に係る雑所得等として申告分離課税の対象となります。 

プット・オプション(売り付けることができる権利)

 買方は、オプション料を支払うことにより、権利行使日にあらかじめ決めておいた値段(権利行使価格)で対象の株式等を売り付けることができる権利を取得します。

 一方、売方は、オプション料を受け取る代わりに買方が権利の行使をした時は、株式等の購入をする義務があります。

 例えば、買方Xが、A株式について1株当たり、権利行使価格1,000円のプットをオプション料50円で購入したとします。

(1)権利行使日のA株式の株価が1,000円である場合
 この場合、権利行使をしても、市場で売却しても、A株式について1株当たり1,000円の売却額となります。ただし、オプション料50円で購入しているため、結果、プット・オプションをしたことにより、買方Xは50円の損をしたことになります。

(2)権利行使日のA株式の株価が1,000円超である場合
 この場合、権利行使によりA株式を1,000円で売却するより、市場で売却したほうが得するので、売る権利を放棄できます。この場合、損失は支払ったオプション料50円に限定されます。

(3)権利行使日のA株式の株価が1,000円未満である場合
 この場合、市場で売却するより、権利行使して1,000円で売却したほうが得をします。

取得価額と収入金額

 プット・オプションの買方がオプションの権利の行使により上場株式等を譲渡をした場合の収入金額は以下となります。

収入金額=権利行使価額-支払オプション料

 プット・オプションの売方がオプションの義務の履行により上場株式等を取得をした場合の取得価額は以下となります(措通37の11-10(2))。

取得価額=権利行使価額+取引に関連して支出した委託手数料-受取オプション料

(例)
 プット・オプションで、買方XがA株式を権利行使価額1,000万円、オプション料50万円を支払って権利行使した場合のA株式の収入金額はいくらになるのか?
 また、相手方である売方YのA株式を取得をした場合(委託手数料0円)のA株式の取得価額はいくらになるのか?
(答)
 どちらも、950万円(1,000万円-50万円)

所得税の取り扱い

 プット・オプションの場合、買方が権利行使をして上場株式等を譲渡した場合は、上記の収入金額(権利行使価額-支払オプション料)から、その株式等の取得価額を差し引き、上場株式等の譲渡損益を計算します。その譲渡損益は、上場株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象となります。

 また、売方は、買方の権利行使により上場株式等を取得した場合は、上記の取得価額(権利行使価額+取引に関連して支出した委託手数料-受取オプション料)で、将来、その株式等を売却した場合に、上場株式等の譲渡損益を計算します。

 なお、買方が権利放棄をした場合、買方が当初に支払ったオプション料は損失となり、一方、売方が当初に受け取ったオプション料は益となります。これらの損益は、先物取引に係る雑所得等として申告分離課税の対象となります。