ラップ

概要

 現在では、金融商品が多様化・複雑化してきているため、投資をしたいが、どの金融商品に投資をすべきなのか悩む方が多くいます。そのため、証券会社等の投資運用業者と投資一任契約を結ぶケースが増えてきています。

「投資一任契約」とは、投資家が投資判断の全部又は一部を金融商品取引業者等に一任し、その投資判断に基づき投資家のために投資を行うのに必要な権限をその金融商品取引業者等に委任することを内容とする契約をいいます(金商法2⑧十二ロ)。そして、その契約により開設する口座を投資一任口座(ラップ口座)といいます。

 なお、投資を一任するとはいえ、投資運用業者に全てをまかせるわけではなく、投資してよい金融商品や投資上限金額等を決めたうえで、一任することになります。

 ラップとはファンドラップからきてますが、投資信託(ファンド)をひとまとめて管理(ラップ。食べ物などを包む薄いフィルム)するという意味です。

 日本では、投資一任の大半がファンドラップであるため、投資一任口座のことをラップ口座と呼んだりします。

投資一任口座(ラップ口座)取引における所得と所得区分

 通常、投資一任契約は、所有期間1年以下の上場株式等の売買を行うものであり、また、顧客が報酬を支払って、有価証券の投資判断を金融商品取引業者等に一任し、契約期間中に営利を目的として継続的に上場株式等の売買を行っていると認められることから、その上場株式の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得に該当するものと取り扱われています(国税庁質疑応答事例「投資一任口座(ラップ口座)における株取引の所得区分」)。

〇国税庁質疑応答事例「投資一任口座(ラップ口座)における株取引の所得区分」
【照会要旨】
 A証券会社は、「投資一任契約」に係る業務の認可を受けた投資顧問業者で、国内上場株式への分散投資を目的とする投資一任口座の取扱いを開始しました。
 この投資一任口座は、顧客がA証券会社との間で締結する投資一任契約に従って資産運用するための専用口座で、投資一任契約により、A証券会社は投資資金の運用に関する投資判断とその執行に必要な権限の委任を受けて顧客に代わって資産運用を行う一方、顧客は投資顧問報酬として固定報酬及び成功報酬を支払うこととなっています。なお、この投資一任契約の契約期間は1年間です。
 この場合、この投資一任口座における国内上場株式の売買取引から生じる所得区分はどのようになるのでしょうか。
 
【回答要旨】
 (略)
 この投資一任契約は、所有期間1年以下の上場株式の売買を行うものであり、また、顧客が報酬を支払って、有価証券の投資判断とその執行をA証券会社に一任し、契約期間中に営利を目的として継続的に上場株式の売買を行っていると認められますので、その株式の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得に当たるものと考えられます。

 なお、投資一任口座における取引の損益のほとんどは雑所得に当たると考えられますが、申告分離課税に該当し、他の上場株式取引の譲渡損益と相殺(通算)することができます。

投資一任口座(ラップ口座)取引における収入時期

 投資一任口座(ラップ口座)で投資される金融商品は、ケースバイケースとなりますが、ひとまとめて管理されています。

 しかしながら、税法上は、ひとまとまりでみるのではなく、投資一任口座で投資する金融商品ごとに生じる配当・利子や譲渡所得を計算します。

 例えば、投資一任口座である株式を購入し譲渡した場合、その所得の総収入金額に計上すべき時期については、株式等の譲渡でありますから、措置法通達37の10-1(株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期)の規定により、株式等の引渡しがあった日 (選択により契約の効力発生の日)と考えます。

 ただし、一般的には特定口座での利用が多いので、投資家は収入時期について気にする必要がありません。

投資運用業者への報酬の支払い

 投資一任契約では、投資運用業者に株式や債券等の投資判断や投資資産管理を一任する契約なので、それなりの報酬を投資運用業者へ支払う必要があります。

 投資一任口座(ラップ口座)取引における所得は雑所得又は事業所得に該当しますので、このような投資運用業者への支払いは必要経費とすることができます。

 なお、令和3年度税制改正により、令和4年以降は、投資家の利便性向上等の観点から特定口座(源泉あり)であれば報酬が必要経費として算入され源泉徴収額が計算されています(措法37の11の4③)

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