概要
シルバー人材センターは、企業など発注者から引き受けた高齢者にふさわしい仕事を、会員である高齢者へ提供しています。
企業等から仕事の発注を受けたシルバー人材センターが、会員である高齢者へ業務遂行の依頼し、会員がそれを遂行することによって、会員に対価が支払われる仕組みとなっています。
この会員に支払われる対価は「配分金」といい、税務上は、受け取った側は給与所得ではなく雑所得になります。
また、シルバー人材センターが行う業務に就業する高齢者は、シルバー人材センターを通して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者であり、税務上は、家内労働者等に含まれます(措法27、措令18の2①)。
必要経費の特例
シルバー人材センターからの収入は雑所得又は事業所得となります。ただし、事業所得となるのは例外であり、雑所得となるのが一般的です。
雑所得の金額は、総収入金額から実際にかかった必要経費を差し引いて計算することになっています。シルバー人材センターからの収入を得るために、交通費がかかったならば、それは必要経費となります。
ただし、シルバー人材センターからの収入を得るために、多額の経費がかかる人はあまりいないでしょう。そうすると、収入とそんなに変わらない金額が所得となり税負担が重くなってしまいます。
そのため、必要経費として55万円まで(令和元年分以前は65万円。以下同じです。)認められる特例があります。
つまり、シルバー人材センターからの収入を得るために実際にかかった経費の額が55万円未満のときであっても、所得金額の計算上必要経費が55万円まで認められます。このことを、一般的に「家内労働者等の必要経費の特例」といいます。
ただし、シルバー人材センターからの収入が年間55万円未満の場合は、特例の必要経費額は、その収入金額が限度となります。例えば、シルバー人材センターからの収入が年間50万円であったのならば、必要経費が50万円まで認められることになります。
シルバー人材センターからの収入しかない人で、その年の総収入金額が103万円以下の場合は、総所得金額が基礎控除額の48万円以下となりますので、本人に所得税は課されず、また、扶養者の所得税額の計算上、配偶者控除あるいは扶養控除の対象となります。
つまり、パートで働いている給与所得者の方と似たような税の仕組みといえます。
65歳以上の方の場合は、年金収入が110万円以下(公的年金等控除額があるため、0円となる)で、シルバー人材センターからの収入が103万円までなら所得税は課されないということになります。
シルバー人材センターからの収入以外に、給与収入がある場合
(1)給与の収入金額が年間55万円以上あるときは、「家内労働者等の必要経費の特例」は受けられません。
(2)給与の収入金額が年間55万円未満のときは、55万円からその給与に係る給与所得控除額(=給与収入金額)を差し引いた残額と、シルバー人材センターからの収入を得るために実際にかかった経費とを比べて高い方が必要経費になります。
例えば、ある人の給与の収入金額が年間40万円だとします。給与の収入金額が年間55万円以下の場合は、給与の収入金額が給与所得控除額と同額となるため、55万円-40万円(給与所得控除額)=15万円と、シルバー人材センターからの収入を得るために実際にかかった経費とを比べて高い方が必要経費になります。
例えば、以下の収入があった人がいるとします。
給与の収入金額 40万円(給与所得控除額40万円) シルバー人材センターからの収入金額 20万円(実額経費2万円) |
雑所得にかかる必要経費 55万円-40万円(給与所得控除額)=15万円>2万円
雑所得 20万円-15万円=5万円
シルバー人材センターからの収入以外に、公的年金等以外の個人年金収入がある場合
公的年金等以外の個人年金収入がある場合は、その年金収入に対応して控除すべき掛金の額とシルバー人材センターからの収入を得るために実際にかかった経費の合計金額が55万円未満のときは、必要経費が合計で55万円まで認められます(措法27、措令18の2②一)。公的年金等の収入金額は関係ありません。
例えば、以下の収入があった人がいるとします。
公的年金等の収入金額 160万円(控除額110万円) シルバー人材センターからの収入金額 10万円(実額経費1万円) 個人年金の収入金額 40万円(掛金30万円) |
雑所得の必要経費の実額は、シルバー人材センターからの収入金額に対する必要経費1万円と、個人年金の掛金30万円の合計額31万円であり、55万円を超えていないことから「家内労働者等の必要経費の特例」を受けることができます。
また、この特例の適用額は、雑所得等の総収入金額(公的年金等に係るものを除く。)を限度とするとされている(措法27)ことから50万円(10万円+40万円)となり、公的年金等に係るものを除く雑所得の金額は0円となります。
結果、この場合の雑所得の金額は、公的年金等の収入金額(160万円)から公的年金等控除額(110万円)を控除した金額50万円となります。
以上のことをまとめると以下となります。
必要経費(実額) 1万円+30万円=31万円>55万円
特例の適用額 10万円+40万円=50万円(公的年金等以外の雑所得等の総収入金額を限度)
公的年金等に係るものを除く雑所得 50万円-50万円=0円
公的年金等 160万円-110万円=50万円(雑所得の金額)
年金受給者(公的年金等の収入金額が400 万円以下の者に限る)でシルバー人材センターからの年間収入が75 万円以下の場合
例えば、シルバー人材センターからの年間収入が75万円で、それを得るために実際にかかった経費が5万円だったとします。
ただし、この場合、「家内労働者等の必要経費の特例」により55万円を必要経費とできるため、シルバー人材センターからの所得は75万円-55万円=20万円となります(年金収入とシルバー人材センターからの収入しかない場合)。
年金受給者(公的年金等の収入金額が400万円以下の者に限る)で公的年金等に係る雑所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の場合は、所得税の確定申告を不要とすることができます。
「家内労働者等の必要経費の特例」は確定申告書の提出を要件として適用するものではありません(措法27、措令18の2)。
つまり、「家内労働者等の必要経費の特例」後の所得金額が20万円以下となる場合、確定申告不要となります。
ただし、所得税(確定申告)においては申告不要とすることができますが、住民税においては申告しなければなりません。
更正の請求
当初申告で「家内労働者等の必要経費の特例」を適用していない場合でも、この特例は申告要件とされていないため、当初申告において、当該特例が適用されるにもかかわらず適用していなかった場合には、更正の請求をすることができます(措法27)。