概要

 法人が役務の提供をした場合、収益計上はいつになるのかを把握することは重要です。決算日をまたがった場合、今期の収益となるのか、それとも時期の収益となるのかの違いが生じ、結果、法人税にも影響します。

 役務の提供に係る収益は、「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」と「履行義務が一時点で充足されるもの」に分けて、考えます。

「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」の収益計上

 「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」については、その履行に着手した日から引渡し等の日(物の引渡しを要する取引にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日をいい、物の引渡しを要しない取引にあってはその約した役務の全部を完了した日をいう。)までの期間において履行義務が充足されていくそれぞれの日が役務の提供の日に該当し、その収益の額は、その履行義務が充足されていくそれぞれの日の属する事業年度の益金の額に算入されます(法基通2-1-21の2)。

 つまり、物の引渡しを要する取引にあっては、履行に着手した日から目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日までの期間において履行義務が充足されていくそれぞれの日が役務の提供の日に該当します。

 一方、物の引渡しを要しない取引にあっては、履行に着手した日から約した役務の全部を完了した日までの期間において履行義務が充足されていくそれぞれの日が役務の提供の日に該当します。

「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」とは

 次のいずれかを満たすものは「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」に該当します(法基通2-1-21の4)。

(1) 取引における義務を履行するにつれて、相手方が便益を享受すること。

 (注) 例えば、清掃サービスなどの日常的又は反復的なサービスはこれに該当します。

(2) 取引における義務を履行することにより、資産が生じ、又は資産の価値が増加し、その資産が生じ、又は資産の価値が増加するにつれて、相手方がその資産を支配すること。

 (注) 上記の資産を支配することとは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんど全てを享受する能力(他の者が当該資産の使用を指図して当該資産から便益を享受することを妨げる能力を含む。)を有することをいいます。顧客の土地の上に建設を行う工事契約や、顧客が所有する会計システムを拡張する役務提供契約などが該当します。

(3) 次の要件のいずれも満たすこと。
 イ 取引における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること。
 ロ 取引における義務の履行を完了した部分について、対価の額を収受する強制力のある権利を有していること。

「履行義務が一時点で充足されるもの」

 「履行義務が一時点で充足されるもの」については、その引渡し等の日(物の引渡しを要する取引にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日をいい、物の引渡しを要しない取引にあってはその約した役務の全部を完了した日をいう。)が役務の提供の日に該当し、その収益の額は、引渡し等の日の属する事業年度の益金の額に算入されます(法基通2-1-21の3)。

 つまり、物の引渡しを要する取引にあっては、目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日が役務の提供の日に該当します。

 一方、物の引渡しを要しない取引にあっては、約した役務の全部を完了した日が役務の提供の日に該当します。