概要
外貨MMFは、公募外国公社債投資信託(契約型外国投資信託)に分類されます。外国株式等を購入している法人が、その購入資金等の目的のため、外貨MMFを所有していることが多いです。
なお、外貨MMFは期中での収益分配金等の回数が多く、それを再投資するため取得価額の計算は煩雑になりやすい傾向にあります。
売買目的有価証券
「中小企業の会計に関する指針(令和3年8月3日改正)」(以下「中小企業会計指針」という)によれば、売買目的有価証券とは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。
外貨MMFは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券ではありません。ですから、本来は、売買目的有価証券に分類されるものではなく、その他有価証券に分類されるものといえます。
ただし、中小企業会計指針に以下のことも記載されています。
「本指針においては、売買目的有価証券とその他有価証券との区分を法人税法の規定に従って分類することも認められる。」
法人税法の規定において、売買目的有価証券とは以下に掲げるものとされています(法令119の12)。
① 専担者売買有価証券(トレーディング目的の専門部署を設置している場合に、その目的のために取得した有価証券)
② 短期売買有価証券(短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載した有価証券)
③ 金銭の信託に属する有価証券(金銭の信託のうち信託財産として短期売買目的の有価証券を取得する旨を他の金銭の信託と区分して帳簿書類に記載したもの)
中小企業が所有している有価証券を法人税法上の売買目的有価証券とする場合は、上記の「② 短期売買有価証券(短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載した有価証券)」に該当するようにします。
帳簿書類や申告書類に添付する有価証券の内訳書で「売買目的有価証券」と分類していればよいということになります。
このことにより、中小企業会計において、外貨MMFは本来、その他有価証券に分類されるものですが、売買目的有価証券に分類することもできるということになります。
外貨MMFは期中での収益分配金等の回数が多く、それを再投資するため取得価額の計算は煩雑になりやすい傾向にあります。
中小企業では経理体制がしっかりしていないことが多いため、外貨MMFの取得価額や売却損益を完璧に計算することは、難しいといえます。そのため、外貨MMFを売買目的有価証券とすることをお勧めいたします。
法人税法上の換算方法では、外貨建売買目的有価証券については、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額を付します(その他有価証券については、発生時換算法)。
外貨MMFは一般的に時価がないものとして取り扱いますので、取得価額に決算時の為替相場により円換算した額を付します。
つまり、決算末において、外貨MMFを決算時の為替相場により評価すれば、期末残高はその金額で決定されるので、期中の売却損益を誤っても決算時の期末為替差損益で調整されます。
そのため、期末残高の金額さえ間違わなければ、期中計算が間違っても、1事業年度における売却損益と期末為替差損益をトータルした金額は必ず同じ金額となります。
よって、外貨MMFを外貨建売買目的有価証券としていれば、期末残高の金額さえ間違わなければ、1事業年度における所得金額、税額は正しい金額となるということです。
ですから、経理体制がしっかりしていない中小企業の場合は、外貨MMFを外貨建売買目的有価証券とすることをお勧めします。
仕訳
購入時
有価証券 10,000,000円 現金預金 10,000,000円
収益分配金受取時(再投資の場合)
有価証券 10,163円 有価証券利息 12,000円
法人税等(源泉所得税等) 1,837円
外貨MMFの収益分配金に係る源泉徴収税率は、所得税15.315%となり、当該源泉徴収税額は法人が申告すれば税額控除の対象となります。
売却時
現金預金 4,030,104円 有価証券 4,000,000円
法人税等(源泉所得税等) 1,378円 有価証券利息 9,000円
雑益(為替差益) 22,482円
解約時の円貨精算額と帳簿価額との差額を為替相場の変動によるものとして処理しています。
有価証券売却損益と雑損益(為替差損益)に区分する方法もありますが、商品としての性格から、一括して、雑損益(為替差損益)として処理する方法でも問題ありません。
期末時(売買目的有価証券の場合)
(期末時)
有価証券 125,469円 有価証券評価損益 125,469円
(翌期首)
有価証券評価損益 125,469円 有価証券 125,469円
売買目的有価証券の場合は、期末時に、「期末保有口数×期末日為替レート」により期末評価額を算出し、帳簿価額との差額を評価損益とします(法法61の3①一、61の9①二イ、②)。そして、翌期首において、その前期末計上の評価損益を洗い替え処理します。
なお、商品としての性格から、外国株式のように時価変動はないものとして取り扱うのが一般的です。つまり、為替レートによる変動分が損益となります。
消費税
譲渡対価は不課税売上。分配金は輸出取引。