割引

割引債の税務の取り扱い

購入時

 2015年(平成27年)12月31日以前に発行された割引債については、原則として、発行時に将来受けるべき償還差益に対して源泉徴収されていました。

 税制改正により、 2016年1月1日以後に発行されている割引債については、発行時の源泉徴収はされていません。

  2016年1月1日以後に発行された割引債を購入した場合は、新発、既発問わず、その取得価額は、購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)となります(法令119①一)。

期末時

1.売買目的の割引債

 売買目的の割引債(時価があるもの)は、時価法により評価します(法法61の3①一)。時価法により生じた評価益又は評価損は、事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入します(法法61の3②)。そして、翌事業年度開始時に同額の金額を洗い替え計算します(法令119の15)。

2.売買目的以外の割引債

 売買目的以外の割引債は、償却原価法(アキュムレーション)により評価します。帳簿価額と償還金額との差額を取得時から償還時までの各期間に、定額法など一定の基準で配分し、その配分された後の金額が各事業年度における取得価額となります(法令139の2)。

 つまり、額面金額と取得価額の差額のうち、当事業年度分(当期の月数按分相当額)を帳簿価額に加算します。

 当初取得した金額のまま、帳簿価額を据え置いている法人がありますが、それは間違いです。割引債とは、償還まで利息(クーポン)の支払いがない代わりに、額面から利息相当分を割引いた価格で発行され、償還時には額面金額が戻ってくる債券のことをいいます。

 通常の債券を保有していれば、毎期、利息計上されて益金が増えるわけですから、割引債の保有の場合も、毎期、それ相当の益金が増えないとおかしいというわけです。

売却時

 償還日を待たずに割引債を売却した場合は、譲渡損益が発生します。

償還時

 2016年1月1日以後に発行された割引債について、一定の内国法人が支払を受ける償還差益に対しては、償還時に一定の金額に対して15.315%の源泉徴収がされます。

1.源泉徴収の対象となる法人

 源泉徴収の対象となる法人は以下のものです(措法41の12の2①、措令26の17①)。株式会社や合同会社等の普通法人は対象となる法人ではありません。

① 一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を除く。)
② 人格のない社団等
③ 認可地縁団体、管理組合法人、団地管理組合法人、法人である政党等、防災街区整備事業組合、特定非営利活動法人、マンション建替組合、マンション敷地売却組合、敷地分割組合

2.償還時源泉徴収の対象となる公社債

 償還時源泉徴収の対象となる公社債は割引債のほか以下のものです(措法41の12の2⑥一、措規19の5③)。

① 割引の方法により発行された利息のない公社債(ゼロクーポン債等)
② 公社債の元本部分と利子部分を分離されてそれぞれ独立して取引されるもの(ストリップス債)
③ 利息のある公社債のうち額面金額の90%以下で発行されたもの など

3.源泉徴収の対象となる金額

 以下のような取り扱いとなります。(措法41の12の2⑥三)

① 金融機関と割引債管理契約を締結し、その割引債の取得に要した金額が管理されている場合
 この場合は、実際の償還差益金額に対して、15.315%の所得税等が源泉徴収されます(住民税は徴収されない)。

② ①以外の場合は、「みなし償還差益金額」に対して、15.315%の所得税等が源泉徴収されます。
 みなし償還差益金額は、「償還金額 ×みなし割引率」となります。
※ みなし割引率
・発行日から償還日までの期間が1年以内の割引債(分離利子公社債を除く) ・・・ 0.2%
・発行日から償還日までの期間が1年超の割引債、または分離利子公社債 ・・・ 25%

 「みなし償還差益金額」に対して源泉徴収される場合は、実際の償還差益金額がマイナスでも源泉徴収されてしまいます。

4.所得税額等の控除

 法人税の対象となる場合には、源泉徴収税額が法人税額等から控除(所得税額等の控除)されます(措法41の12の2⑦)。詳しくは、「各種法人が受け取る利子及び配当等に課された源泉所得税の取扱い」まで。

 なお、法人の種類によっては「みなし償還差益金額」に対して源泉徴収されて、かつ、所得税額等の控除ができない場合があるので注意をして下さい。その場合は、償還日を待たずに割引債を売却したほうがよいでしょう。

割引債の仕訳

購入時

有価証券   59,000,000円  未払金(OR預け金) 59,000,000円

期末時(アキュムレーションの場合)

有価証券   200,000円  有価証券利息 200,000円

売却時

未収金    59,500,000円  有価証券    59,200,000円
               有価証券売却益  300,000円

償還時(2016年1月1日以後に発行されている割引債の場合)

① 源泉徴収されない場合(普通法人等の場合)
未収金    60,000,000円  有価証券   59,800,000円
               有価証券利息  200,000円

② 源泉徴収される場合
未収金          57,702,750円   有価証券   59,800,000円
法人税等(源泉所得税等)  2,297,250円  有価証券利息  200,000円

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