株式等の譲渡による所得の課税の特例について

〇 株式等の譲渡による所得については、昭和28年以来、原則非課税とされていたが、昭和63年12月の税制改正において、平成元年4月1日以後の株式譲渡による所得は全て課税されることと改められた。その際、課税方式については、申告分離課税方式(他の所得と分離して一定の税率により確定申告を通じて課税する方式)を原則としつつ源泉分離課税(株式等の譲渡価額の一定割合相当額を所得とみなし、他の所得と分離して一定の税率により源泉徴収を通じて課税する方式)の選択を認める源泉分離選択課税制度が採用された。

〇 平成13年11月の税制改正において、平成15年1月1日以降は、上記源泉分離選択課税制度は廃止され、申告分離課税による課税方式に一本化され、それを前提に、個人投資家のリスク負担の緩和等に配慮し、中長期的に、国民が安心して証券市場に参加できる環境の整備を図るために、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除制度が創設された。

〇 平成20年度の税制改正では、上場株式等の譲渡損失と上場株式等の配当は、ともにリスク資産である株式や株式投資信託等から生ずる所得であることに着目して、これらの所得間における損益通算の仕組みを導入し、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の対象に上場株式等に係る配当所得を追加することとされた。

先物取引に係る課税の特例について

〇 平成13年度の税制改正において、個人の商品先物取引による所得について、従来、事業所得又は雑所得として総合課税されていたものに代えて、申告分離課税による特例が創設された。

〇 平成15年度の税制改正において、個人投資家の資産運用の場の選択に当たり、税負担の公平・中立性を確保することにより、公正な価格形成及び価格変動のリスクヘッジの場としての機能を十分に発揮できる流動性に富んだ先物市場を形成することが必要であるとの観点から、先物取引に係る雑所得等の課税の特例の適用対象に有価証券先物取引等の差金等決済をした場合の所得が追加された。

〇 平成17年度の税制改正では、金融先物取引法(現在の金融商品取引法)の改正を踏まえ、金融所得課税の一体化・簡素化に向けた取組を進める観点から課税方式の均衡化を図る措置として、先物取引に係る雑所得等の課税の特例の適用対象に、金融先物取引法の取引所金融先物取引の差金等決済に係る雑所得等を追加することとされた。

〇 平成23年の税制改正では、商品先物取引法において取引所取引及び店頭取引を通じた横断的な規制体系が整備され、金融商品取引法において店頭デリバティブ取引について市場デリバティブ取引と同様の証拠金規制等が整備されるなど、投資家保護策が講じられてきたことを踏まえ、店頭商品デリバティブ取引や店頭デリバティブ取引も申告分離課税の対象とされた。

東京地裁平成31年3月22日判決・平成28年(行ウ)349号等の判示等