高額

 ここでは時価よりも高い価格で売買が行われる高額譲渡について説明したいと思います。

 高額譲渡における個人と法人の関係は、以下の4つの形式に分類することができます。
 ①個人から個人への高額譲渡、②個人から法人への高額譲渡、③法人から個人への高額譲渡、④法人から法人への高額譲渡、となります。

 形式によっては、物を売った人である「売り手」と、物を買った人である「買い手」の両者とも税金がかかります。

個人から個人への高額譲渡

 個人間の売買は、通常は、「売り手」は、実際の売却金額(譲渡価額)を譲渡収入とし、その財産の取得費などを差し引いた所得に対して所得税がかかります。

 そして、「買い手」が将来その譲渡所得の基因となる資産を譲渡して譲渡所得の金額の計算をすることとした場合、控除する取得費の額はいくらとすればよいかということについては、実際に取得した時期に、実際に取得に要した金額を基にして算定するのが原則です。

 ただし、明らかな高額譲渡の場合は、 「売り手」は、時価を譲渡収入とし、それを超える部分は贈与されたとされます。そして、「買い手」は時価で取得し、それを超える部分は取得費に入れられないとということになります。

競走馬の譲渡価額のうち正常価額を超える部分の金額は贈与に当たるとした昭和59年8月23日裁決(裁事例7集44頁)の判断要旨

 請求人は、資金繰りが苦しく借入金返済のために多額の資金を必要としていたことが認められ、請求人は、この資金を得る目的で親子という関係を利用して、両競走馬(競走馬A号・B号)が故障馬でありその価額が著しく低額であることを認識しながら、これと反した極めて高額(A号については1,700万円、B号については500万円)で、売買という法形式を借用して、父から資金の導入を図つたものと推認される。
 以上のことから、請求人が両競走馬を父へ譲渡した時の価額は、A号については父が転売した価額と同額の50万円、B号については同じく18万円であると認めるのが相当である。
 以上のとおりであるから、請求人が両競走馬の譲渡代金として父から受領した本件差額金は、請求人が父から現金を贈与されたものと認めるのが相当である。

個人から法人への高額譲渡

 「売り手」である個人には、時価を譲渡収入とし譲渡所得課税の対象となり、時価を超える売却金額部分は法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「給与所得」になり、雇用関係がなければ「一時所得」となります。

 資産を時価よりも不当に高い値段で買い、かつ、贈与したと認められる金額がある場合には、「買い手」である法人の資産の取得価額は時価となります(法基通7-3-1)。時価を超える部分は、寄付金等になります。法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「賞与・役員賞与」(法基通9-2-9(3))になり、雇用関係がなければ「寄付金」となります。

 仕訳は以下の通りになります。
 土地(時価) ×××    現預金(売買価格)  ×××
 寄付金等   ×××

 なお、時価より高額で資産を取得したとしても、そのことが相手方に対する贈与の意図によるものではなく、その高額で取得することに合理的な理由がある場合には、当事者間の売買金額による取得について、上記の問題は生じないと考えられます。

法人税法基本通達7-3-1(高価買入資産の取得価額)

 法人が不当に高価で買い入れた固定資産について、その買入価額のうち実質的に贈与をしたものと認められた金額がある場合には、買入価額から当該金額を控除した金額を取得価額とすることに留意する。

関連会社に対する株式の譲渡が高額譲渡とされ、取引金額と評価額の差額は一時所得に該当するとされた東京地裁平成25年9月27日判決(税資263号-174(順号12298))の要旨

(1)事案の概要

 本件は、原告が、A株式(上場株式)を、原告が実質的なオーナーである株式会社B社に対し、1株当たり550円で、平成21年3月に112万株、11月に31万7550株を譲渡したとして申告したところ、所轄税務署長が、本件譲渡に係る収入金額とA株式のC市場における終値(3月譲渡時290円、11月譲渡時426円)を基に算出した本件株式の評価額との差額合計3億3057万円余は、B社から原告に贈与されたものであり、原告の一時所得に該当するとして更正処分をしたことから、その取消しを求めた事案である。

(2)争点

 取引金額と当該市場価格から求められる評価額との差額は、譲渡所得と一時所得のいずれとすべきなのか

(3)判決要旨

① 個人がその有する資産を法人に対して有償で譲渡した場合における課税関係は、当該譲渡価額が、資産の譲渡の「対価」たる性格を有する限りにおいて、譲渡所得に係る収入金額として課税されるが、当該譲渡価額中に資産の譲渡の「対価」たる性格を有しておらず、法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの及び継続的に受けるものを除く)としての性格を有する部分があると認められるときは、当該部分の金額については、一時所得に係る収入金額として課税されるべきこととなる。
② 原告は、実質的なオーナーとして、B社の経営上の意思決定に強い影響力を有していたことからすると、B社におけるA株式の価格決定には原告の意向が強く反映されたことが推認される。他方、当時債務超過の状態にあったB社に、多額の借入れをしてまで市場価格よりも高い価格でA株式を購入すべき事情があったとは認められない。
③ 原告は、自己の借入金の返済及び相続税の納付のために必要な一定規模の資金を調達するという目的を達成するための手段として、譲渡時におけるA株式の市場価格の水準をあえて無視して、市場単価に一定の金額を上乗せして取引単価を設定し、本件譲渡を行ったものと認めることができる。
④ A株式の市場価格、譲渡の動機ないし目的、譲渡における価格の決定の経緯、当該価格の合理性などの諸点に照らせば、本件譲渡におけるA株式の譲渡の対価たる性格を有するのは、取引単価のうち、市場単価の部分に限られると解される。そうすると、市場単価と取引単価との差額部分である本件差額は、A株式の譲渡の対価たる性格を有するとはいえず、法人であるB社から贈与された金員としての性格を有するものというべきであるから、所得税法34条所定の一時所得となる。

法人から個人への高額譲渡

 「売り手」である法人は、高額で財産を売却した場合、益金となり法人税がかかります。時価と取得価額との差額が売却損益となり、時価を超える部分は受贈益となります。仕訳は以下の通りになります。

 取得価額300万円(時価500万円)の土地を2000万円で売却した。
 現預金   2000万円     土地   300万円
                売却益  200万円
                受贈益  1500万円

 一方、「買い手」である個人には、時価で資産を取得し、時価を超える部分は法人への贈与(寄付)となります。 よって、「買い手」である個人が将来その譲渡所得の基因となる資産を譲渡して譲渡所得の金額の計算をすることとした場合、控除する取得費の額はいくらとすればよいかということについては、実際に取得した時期の時価を基にして算定することになります。

法人から法人への高額譲渡

 「売り手」である法人は、上記と同じように資産を時価で渡したとして益金となり法人税がかかります。時価と取得価額との差額が売却損益となり、時価を超える部分は受贈益となります。

 資産を時価よりも高い値段で買う「買い手」である法人の資産の取得価額は時価となります。時価を超える部分は、寄付金になります。

 なお、時価より高額で資産を譲渡・取得したとしても、そのことが相手方に対する贈与の意図によるものではなく、その高額で譲渡・取得することに合理的な理由がある場合には、当事者間の売買金額による取得について、上記の問題は生じないと考えられます。

まとめ

売買形式売り手の課税買い手の課税
個人から個人への高額譲渡譲渡所得課税
贈与税がかかる
個人から法人への高額譲渡譲渡所得課税
所得税がかかる
寄付金等
法人から個人への高額譲渡法人税がかかる
法人から法人への高額譲渡法人税がかかる寄付金

関連項目