概要

 まず、ロータリークラブ及びライオンズクラブと、青年会議所に分けて考えてください。

 また、ロータリークラブ及びライオンズクラブについては、法人と個人事業主では、取り扱いが違います。個人事業主の場合は、必要経費にならないと思っていた方がよいです。 

法人の場合

 法人が、ロータリークラブ及びライオンズクラブへの入会する場合、奉仕や地域貢献といった目的もありますが、異業種関係者等との懇親等を深めることを目的として加入している面も否定できないと考えられます。

 つまり、顧客の獲得につながる可能性があり、社交の側面があるため、入会金又は経常会費は交際費となります(法基通9-7-15の2 )。中小企業の場合、年間800万円までの交際費は全額経費(損金算入)にできます。

 入会金又は経常会費以外の支出で交際費とならないような場合は、通常、(臨時の)役員給与となることがほとんどでしょう。その場合、臨時的な役員給与として損金不算入や源泉所得税の問題が生じます。

 経営者の二世、三世が青年会議所の会員となるケースも多いですが、青年会議所の入会金又は経常会費については、通達(法基通9-7-15の2 )で除外されており判断に悩みますが、交際費や諸会費として経費処理している法人が多いでしょう。

 なお、平成27年7月28日裁決(裁事100集)で争われた対象は、青年会議所の会議等に出席するために支出した交通費、宿泊費及び日当について、旅費交通費になるのか役員給与になるのか争われただけであり、入会金又は経常会費については触れられていません。

 おそらく、経常会費に関しては役員給与ではなく経費で問題ないと、課税庁は判断したのでしょう。

法人税法基本通達9-7-15(社交団体の会費等)

 法人がその入会している社交団体に対して支出した会費その他の費用については、次の区分に応じ、次による。
(1) 経常会費については、その入会金が交際費に該当する場合には交際費とし、その入会金が給与に該当する場合には会員たる特定の役員又は使用人に対する給与とする。
(2) 経常会費以外の費用については、その費用が法人の業務の遂行上必要なものであると認められる場合には交際費とし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には当該役員又は使用人に対する給与とする。

法人税法基本通達9-7-15の2(ロータリークラブ及びライオンズクラブの入会金等)

 法人がロータリークラブ又はライオンズクラブに対する入会金又は会費等を負担した場合には、次による。
(1) 入会金又は経常会費として負担した金額については、その支出をした日の属する事業年度の交際費とする。
(2) (1)以外に負担した金額については、その支出の目的に応じて寄附金又は交際費とする。ただし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には、当該負担した金額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

法人事例002950 青年会議所の会費等(課税当局質疑応答)から抜粋

 青年会議所については、現状ではロータリークラブやライオンズクラブの場合と異なり会費も割安であり、また実際にその会費の使途をみても、一般に交際費に当たるような支出に当てられている部分はごく少ないようである。
 したがって、その会費を直ちにロータリークラブ又はライオンズクラブの会費と同列に扱うことは相当ではないと考えられるので、個々の青年会議所の事業内容に照らして、それが法人にとって交際費以外の事業経費としての性格があると認められる場合には、その内容に応じて取り扱う。

法人の代表者が青年会議所の会議等に出席するために支出した交通費、宿泊費及び日当は、代表者に対する給与に該当するとした平成27年7月28日裁決(裁事100集)

 請求人X(法人)は、代表者甲が青年会議所の会議等(本件各会議等)に出席するための交通費、宿泊費及び日当(本件旅費交通費)は、本件各会議等を含む青年会議所の活動が経営者に対する教育費用、Xの受注活動費用及び新規事業開拓費用としての性質を有していることなどからすると、Xの事業の遂行上必要な費用であり、甲が負担すべきものではないことから、甲に対する給与に該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件会議等は、特定の個人又は法人の利益を目的として行われるものではなく、青年会議所の定款に掲げられた公益的な目的及び事業の内容に則した活動が行われ、甲は、そのプログラムに沿った活動を行っており、甲が本件会議等に出席したことが、取引先の確保や甲の経営者としての能力の向上、新規事業の開拓に寄与することになったとしても、それは青年会議所の活動に付随する副次的な効果にすぎないことなどからすると、本件旅費交通費は、社会通念に照らし客観的にみて、Xの事業遂行上必要な費用ではなく、甲が個人的に負担すべきものであるから、甲に対する給与に該当する。

個人事業主の場合

 個人事業主の場合、法人の場合と違って、ロータリークラブ及びライオンズクラブへの支出は経費にならないと思っていた方がよいです。過去の事例も以下のようなものがあります。

  • 公認会計士及び税理士業を営む者が支出したロータリークラブの会費は、事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することはできないとした昭和58年1月27日裁決(裁事25集42頁)
  • ロータリークラブの会費は、社会保険労務士の必要経費の額に算入することはできないとした平成12年1月26日裁決
  • 司法書士が支出したロータリークラブの入会金及び会費は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできないとした平成26年3月6日裁決(裁事94集)
  • ロータリークラブの会費は、弁護士の必要経費の額に算入することはできないとした長野地裁平成30年9月7日判決(税資268号-78(順号13183))・東京高裁令和元年5月22日判決(税資269号-49(順号13272))・最高裁第二小法廷令和2年6月26日決定(税資270号-62(順号13422))

 なぜ、法人と個人事業主で、このような取り扱いが違うかは平成26年3月6日裁決の判断で示されています。

 否認された事例は士業(公認会計士、税理士社会保険労務士司法書士弁護士 )ばかりですが、仕事欲しさでロータリークラブに入会しているのではなく、奉仕や地域貢献をしたいという崇高な気持ちがあるのでしょ。多分。

 また、おそらく、青年会議所に対する支出も必要経費にならないでしょう。

平成26年3月6日裁決(裁事94集)

(1)事案の概要

 本件は、司法書士業を営む審査請求人Xが、ロータリークラブの入会金及び会費を事業所得の金額の計算上必要経費に算入して所得税の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該入会金等については必要経費に算入することができないとして、所得税の更正処分等をしたのに対し、Xが、顧客の獲得につながる当該クラブの活動は事業の遂行上必要な活動であるから、当該入会金等は必要経費に算入することができるとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2)判断要旨

① Xは、所得税法第37条《必要経費》第1項に規定する「販売費、一般管理費及びその他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、文理解釈する限り、業務と直接の関係を持つものである必要はなく、客観的にみて所得を生ずるのに必要なものであれば足りるとして、加入するロータリークラブ(本件クラブ)の入会金及び年会費(本件各諸会費)は必要経費に算入できる旨主張する。
 しかしながら、事業所得の金額の計算上、必要経費が総収入金額から控除されることの趣旨は、投下資本の回収部分に課税が及ぶことを回避することにあると解されるところ、日常生活において事業による所得の獲得活動のみならず、所得の処分としての私的な消費活動も行っている個人の事業主における事業所得の金額の計算に当たっては、事業上の必要経費と所得の処分である家事費とを明確に区分する必要があり、それらを踏まえて所得税法第37条1項、同法45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項及び所得税法施行令第96条《家事関連費》第1号の各文言に照らせば、所得税法第37条第1項のいう費用とは、単に業務と関連があるというだけではなく、その支出が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当であり、その判断は、単に業務を行う者の主観的な動機・判断によるのではなく、当該業務の内容や、当該支出の趣旨・目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、社会通念に照らして客観的に行われなければならないと解される。
 以上のことから、Xが本件クラブの会員として行った活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動は、登記又は供託に関する手続について代理することなど司法書士法第3条《業務》第1項各号に規定する業務と直接関係するものということはできず、また、その活動が司法書士としての業務の遂行上必要なものということはできないため、Xが支出した本件各諸会費は、請求人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。

② Xは、法人が支出するロータリークラブの会費等が経費として認められているのであれば、個人事業者においても必要経費に算入されるべきである旨主張する。
 しかしながら、法人は、事業遂行又は所得獲得を目的として設立されるものであり、その活動は全て事業遂行又は所得獲得のために行われる結果、その活動により生じた支出を損金として益金から控除することが認められているのに対して、個人は、事業遂行又は所得の獲得活動の主体であると同時に私的な消費活動の主体でもあり、その支出には所得の獲得活動に関連した必要経費の性質をもつものがある一方で、消費支出(家事費の支出)の性質をもつものがあるため、所得税法では同法第37条で必要経費を規定しながら、同法第45条で家事費及び家事関連費について必要経費に算入しない旨を規定し、いわば所得の享受又は処分という性質を有し、収入を得るために支出される費用とはみられないものを必要経費から除いているのである。
 そうすると、個人の支出に関する取扱いは、家事費及び家事関連費という概念がない法人の支出に関する取扱いとはおのずと異なるものといわざるを得ない。

長野地裁平成30年9月7日判決(税資268号-78(順号13183))

(1)事案の概要

 本件は、弁護士である原告Xが、Aロータリークラブ(以下「本件クラブ」という。)の年会費(以下「本件会費」という。)を諸会費又は接待交際費として、Xの事業所得の金額の計算上必要経費に算入して、所得税等の確定申告及び修正申告をしたところ、所轄税務署長が、本件会費は、Xの事業所得の金額の計算上必要経費とは認められないとして、更正処分等をしたのに対し、Xが、取消しを求めた事案である。

(2)判断要旨

① Xが支出した本件会費は、Xが本件クラブにおいて、上記のような活動をするために納入されたものであり、Xの本件クラブでの活動の目的及び内容に照らせば、本件会費の支出は、法律事務を行う弁護士としてのXの経済活動と直接の関連を有し、客観的にみて当該経済活動の遂行上必要なものということはできない。
 そして、Xの本件クラブでの活動の目的及び内容に照らせば、本件会費は、弁護士の経済活動の一環として支出されるものではなく、消費経済の主体である一個人として行われる消費支出として、家事費に該当するというべきである。
 また、本件クラブにおいてXが活動することによって、本件クラブの他の会員が所属する企業との法律顧問契約を締結する契機となり得ることから、仮に本件クラブにおけるXの活動の一部が、Xの弁護士としての経済活動と直接の関連性を有するものと解した上で、本件会費が、必要経費と家事費の性質を併有しており、本件会費にXの業務の遂行上必要なものが一部含まれていて、家事関連費に該当するとしても、本件クラブの会員としての活動は、本件クラブの掲げる奉仕の理念に従い、奉仕活動を行うことや懇親を深めることに主眼が置かれるものであるから、本件会費はその主たる部分がXの弁護士としての事業所得を生ずべき業務の遂行上必要なものということはできない。さらに、本件会費のうちXの弁護士としての業務の遂行上必要である部分を明らかに区別することはできず、他にかかる区分を可能ならしめるに足りる証拠もない。したがって、仮に、本件会費が、その中にXの業務の遂行上必要なものが一部含まれていて、家事関連費に該当すると解したとしても、これを事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。

② Xは、法人税に関して、法人税基本通達9-7-15の2により、本件会費に経費性が認められており、実態において相違するところがない個人の事業所得に関してもそのまま当てはめられるべきであり、弁護士については、弁護士法人であれば、上記法人税基本通達によることができるのであるから、実態において相違することがない個人の弁護士との間で、経費に関する取扱いが異なるべき合理的理由はない旨主張する。
 しかし、上記法人税基本通達は、法人がロータリークラブに対する入会金又は会費等を負担した場合、その負担した金額については、その支出をした日の属する事業年度の交際費とする旨を定めているにすぎない。そして、法人が支出した交際費は、原則として、その事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入しないこととされており(租税特別措置法61条の4)、法人税法においては、法人が本件会費を負担したとしても、当然に本件会費に経費性が認められるものではない。
 この点を措いても、法人は、事業遂行又は所得獲得を目的として設立されるものであり、その活動は全て事業遂行又は所得獲得のために行われる結果、法人の活動により生じた支出を損金として益金から控除することが認められている。これに対して、個人は、事業遂行又は所得獲得の主体であると同時に私的な消費活動の主体でもあり、その支出には、所得獲得のための必要経費としての性質を有するものがある一方で、家事費ないし家事関連費として消費支出の性質を有するものもある。そのため、法45条1項及び施行令96条1号においては、家事費及び必要経費と明らかに区分できない家事関連費については、必要経費に算入しない旨定められている。したがって、私的な消費活動の主体としての側面を有しないために家事費及び家事関連費の概念がない法人と、かかる側面を有する個人とが法人税及び所得税において、本件会費の経費性についてそれぞれ異なる取扱いを受けるとしても、それが合理的でないということはできない。