会議費であるための要件

 「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」は、交際費等から除かれ、会議費とされます(措置令37の5②二)。

 また、措置法令37条の5第2項2号でいう会議費とは、「会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用」であるとされています(措置通61の4(1)-21)。

 つまり会議費であるかどうかは、常識的な範囲のものであり、要件は以下のとおりです。
 ①真に会議の実質を伴ったもの
  当然のことですが、その集まりが、真に会議・商談を目的としていなければいけません。
 ②社内又は通常会議を行う場所であること
  会議場所としてのイメージに適合することが要件となります(詳しくは下記)。
 ③通常供与される昼食の程度を超えない費用の範囲であること
  社会通念の範囲まで(詳しくは下記)。

神戸地裁平成4年11月25日判決(税資193号516頁)では以下のように判示しています。

「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を提供するために通常要する費用」というのは、冗費濫費のおそれがないような、会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常提供される昼食程度を超えない飲食物等の接待に要する費用のことであると解すべきであり、このようなものである限り、その全額が交際費等から除外される。

 このことは、会議が社外の会場を借りて行われた場合であつても同様であるが、いずれにしても、支出の前提になる会合が会議の実体を備えたものでなければならないものであり、会議が単なる名目、形式にすぎず、会議としての実体を備えているということはできない場合は、その費用を交際費等の範囲から除外することはできない。そして、会議が実体を備えているかどうかは、開催場所、会議の議題及び内容並びに支出内容等を総合的に検討して判断すべきである。

通常会議を行う場所とは

 基本的に、会議は社内で行われることが望ましいと考えられます。ただし、会合の場所として、事務所では狭いことなどの理由により、社外で行われることもあります。そのため、通常会議を行う場所であるならば、社外で行われる会議も会議費として処理することができます。

 ここでいう「通常会議を行う場所」ですが、貸し会議室、喫茶店などが想定されていますが、軽食を提供する料理店、レストランなども含めてよいと考えられます。

 ただし、夜に営業をすることを前提としているスナック、バー、クラブ、キャバクラなどは論外とされています。

 なお、神戸地裁平成4年11月25日判決(税資193号516頁)では以下のように判示しています。

 科目が会議費となつているが、開催場所は、焼鳥屋、焼肉店、ステーキハウス、割烹店等であつて、通常会議が行われるには相応しくない場所であ(る。)

通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待の費用とは

 以前は、社会通念といえるのは、せいぜい3,000円ぐらいまでが目安といわれていましたが、1人当たりの費用の金額が1人当たり5,000円(2024年4月1日以後は10,000円)を超える場合であっても、適用がありえることが明確になりました(措通61の4(1)-21(注)2)。

 ただし、そうはいっても、「通常供与される昼食の程度を超えない費用の範囲」ですから、常識の範囲を求められることには間違いありません。

 なお、昭和54年の改正通達(昭和54年10月18日付直法2-31)において「供与される酒類を伴わない」から「通常供与される昼食の程度を超えない」と、現在のような通達の記載に改正されました。

 これは、会議終了後の簡単な食事の提供に際して、お茶がわりにビール1~2杯程度を提供することもできないということになり、社会通念上著しく実態に反するという批判があったため等によるからです。

 ですから、現在は、アルコール類の費用を会議費として処理することは全くダメだということはありません。

会議費の証拠資料

  •  社内規定(例:月1回、会議に要する費用として一人当たり3,000円までの支出)。
  •  社内規定に従い、適宜な日に行った会議における内部文章(例:会合の目的が単なる慰労的なものでなく、営業上の諸問題の検討を行っているもの。営業上の反省、情報・意見交換又は方針等の伝達)
  •  会議のスケジュールの記録、会議が行われた日時・相手・飲食の金額等を記載した社内用の書類
  •  領収書の裏に、誰とどのような目的で会議したことを記載

1人当たり5,000円(2024年4月1日以後は10,000円)以下の飲食費との違い

 よく、会議費と1人当たり5,000円以下の飲食費が混同されます。しかし、「1人当たり5,000円以下の飲食費」とは、あくまでも交際費等に係る税務上の取扱いを明確化したものであり、税務上の会議費となるか否かを判断するものではありません。
 
(同)
(1)損金算入
 損金となる点では同じです。
 
(違)
(1)会議
 1人当たり5,000円以下の飲食費は会議であるか否かを問いません。
(2)得意先
 会議費は取引先等社外の者との商談だけでなく、社内での打ち合わせの場合もあります。ただし、「5,000円以下飲食費」は、得意先等社外の者との飲食である必要があります
(3)5,000円
 会議費の場合は、仮に、1人当たりの費用が5,000円を超えるような場合であっても、通常要する費用であるならば、損金算入することが認められます。

2024年度(令和6年度)税制改正

 交際費等は損金不算入とされていますが、平成18年度税制改正により、会議費相当とされる1人5,000円以下の飲食費は交際費等の範囲から除外され、全額損金算入とされました。

 この5,000円以下とされている飲食費の金額基準について、会議費の実態等を踏まえ、2024年4月1日以後は10,000円以下までと拡充されました。

 法人の事業年度(決算月)は適用関係に関係ないため、例えば、12月決算法人の場合、来期を待つことなく、今期の中途である2024年4月1日以後に支出する飲食費から適用することになります。

取引先を旅行等に招待し、併せて会議を行った場合の会議費用

 製造業者または卸売業者が特約店等を旅行等に招待し、併せて新製品の説明、販売技術の研究等の会議を行った場合において、その会議が会議としての実体を備えていると認められるときは、会議に通常要すると認められる費用の金額は、交際費等の金額に含めないものとされています( 措通61の4(1)-16 )。

 ただし、当然、会議としての実体を備えていない場合は、交際等になります。よって、会議とは名ばかりで、実態は取引先を慰労するような場合は、会議に直接要した費用を除き、全額が交際費等とされます。

東京地裁平成16年5月14日判決(税資254号-141(順号9648))(棄却)(確定)

(1)事案の概要

 本件は、テレビ番組の制作等を業務としている原告A社が、発注元等のスタッフ等と信頼関係の構築や打合せ等のため、料理店で飲食した際に、その酒食代として支払われた金員を会議費として損金算入して申告したところ、所轄税務署から交際費等に該当するとして更正処分を受けたため、その取消しを求めた事案である。

〇本件各支出の金額、支払先等
① 本件各支出は、いずれも、A社が、テレビ番組制作等の発注元のスタッフらと信頼関係の構築や打合せ等のために飲食した際の酒食代として支払われたものである。
② 本件各支出の支払金額は、いずれもそれぞれ一件1万円を超えるものであり、最も多額のものは平成9年8月25日の「G」における3名の打合せ飲食代7万0476円である。
 また、本件各支出のうちには、一件の金額が1万円台のものも相当数あるが、その多くは、飲食に参加した人数が2ないし3名程度のものである。一件の金額が2、3万円台のものについては、参加した人数が3、4人から5、6人程度のものが多い。
 本件各支出には、人数の特定されていないものもあるが、全体をおしなべて見ると、おおむね参加人員一人当たり3000円以上であり、一人当たり4000円から5、6000円程度のものが多いが、1万円以上のものもある。
③ 本件各支出の支払先は、いずれも、ジャズレストラン、スナック、居酒屋、鮨屋、割烹料亭、しゃぶしゃぶ店、串焼店、天ぷら店、ステーキ店、鉄板焼店、ふぐ専門店等の酒食を提供する料理店である。

(2)判決要旨

① 本件各支出は、いずれも、テレビ番組の制作等を業務としているA社が、発注元等のスタッフ等と信頼関係の構築や打合せ等のため、ジャズレストラン、スナック、居酒屋、鮨屋、割烹料亭、しゃぶしゃぶ店、串焼店、天ぷら店、ステーキ店、鉄板焼店、ふぐ専門店等の料理店で飲食した際に、その酒食代として支払われたものであり、その金額も一件1万円以上、参加者一人当たりにしても、3000円から5、6000円程度あるいは、それ以上にも達するものである。
 このような支出は、一定額が損金に算入され、これを超える部分が不算入とされる、措置法61条の4第3項所定の「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応‥(中略)‥その他これらに類する行為のために支出するもの」に当たると解すべきである。

② 本件各支出の支払金額は、おおむね一人当たり3000円を超え、その多くは、4000円以上であって、1万円を超えるものも珍しくなく、とても会議の際に通常供される茶菓、弁当、昼食の程度のものということはできない。また、その支払先も、ジャズレストラン、スナック、居酒屋、鮨屋、割烹料亭、しゃぶしゃぶ店、串焼店、天ぷら店、ステーキ店、鉄板焼店、ふぐ専門店等の酒食を提供する料理店であり、通常会議を行う場所ということは到底できない所ばかりである。
 そうすると、上記のような、支払金額、酒食の場所に照らすと、本件各支出は、通常会議を行う場所において通常供与される茶菓、弁当、昼食の程度を超えない飲食物等に要する費用ということはできないことは明らかであるから、措置法施行令37条の5第2号所定の「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」に当たるということはできない。

③ A社は、A社の通常の勤務時間が深夜に及ぶこともあること、打合せ場所には放送局の近くを選ばざるを得ないし、放送局の近くには貸会議室もないので、飲食店で会議を行うしかないこと、A社の事務所には会議室がないことを理由に、本件各支出は、会議費に当たると主張している。
 しかし、仮にA社主張のとおり、放送局の近くの飲食店で会議を行うほかなかったとしても、単純に打合せを行うだけであれば、喫茶店や軽食の食堂等もあり得るはずである。本件各支出の支払先である鮨屋、ジャズレストラン、スナック、居酒屋、鮨屋、割烹料亭、しゃぶしゃぶ店、串焼店、天ぷら店、ステーキ店、鉄板焼店、ふぐ専門店等といった酒食を提供する場所と前述したその支払金額を見れば、これらが、「接待、供応、慰安」等の趣旨を含めての会合であることは明らかであり、会議室に代替するような通常会議を行う場所における通常の茶菓、弁当、昼食程度の飲食物の提供とはかけ離れたものといわざるを得ない。したがって、本件各支出は、企業の通常の内部的な費用ということができないものであり、これが措置法施行令37条の5第2号所定の会議費用に当たるということはできない。よって、A社の上記主張には理由がない。

④ 以上の検討によれば、本件各支出は、措置法施行令37条の5第2号所定の会議費用には当たらず、措置法61条の4第3項所定の交際費等に当たるということができる。

(3)現行課税実務

 本判決は飲食費規定の創設前の判決であり、現在であれば、1人当たり5,000円(2024年4月1日以後は10,000円)以下のものについては損金算入、5,000円超のものについても接待飲食費として50%は損金算入(資本金の額等100億円超の法人は別)できることとなります。

法令、通達

租税特別措置法施行令37条の5(交際費等の範囲)
 法第六十一条の四第四項第二号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項に規定する飲食費として支出する金額を当該飲食費に係る飲食その他これに類する行為に参加した者の数で除して計算した金額とし、同号に規定する政令で定める金額は、五千円とする。
2 法第六十一条の四第四項第三号に規定する政令で定める費用は、次に掲げる費用とする。
一 カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
二 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
三 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

租税特別措置法関係通達61の4(1)-16(旅行等に招待し、併せて会議を行った場合の会議費用)
 製造業者又は卸売業者が特約店その他の販売業者を旅行、観劇等に招待し、併せて新製品の説明、販売技術の研究等の会議を開催した場合において、その会議が会議としての実体を備えていると認められるときは、会議に通常要すると認められる費用の金額は、交際費等の金額に含めないことに取り扱う。
(注) 旅行、観劇等の行事に際しての飲食等は、当該行事の実施を主たる目的とする一連の行為の一つであることから、当該行事と不可分かつ一体的なものとして取り扱うことに留意する。ただし、当該一連の行為とは別に単独で行われていると認められる場合及び本文の取扱いを受ける会議に係るものと認められる場合は、この限りでない。

租税特別措置法関係通達61の4(1)-21(会議に関連して通常要する費用の例示)
 会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用は、原則として措置法令第37条の5第2項第2号に規定する「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」に該当するものとする。
(注)
1 会議には、来客との商談、打合せ等が含まれる。
2 本文の取扱いは、その1人当たりの費用の金額が措置法令第37条の5第1項に定める金額を超える場合であっても、適用があることに留意する。