20万円

概要

 サラリーマンが給料以外の所得、例えば、副業の所得があっても、それが20万円以下なら確定申告をしなくてもよいと聞いた方は多いでしょう。ただし、ちゃんと理解している人は少ないです。

申告不要の人

 以下に該当するときは、所得税においては申告不要とすることができます(所法121)。

①  1か所から給与の支払を受けている人(給与年収2,000万円以下の年末調整対象者に限る)で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の場合

②   2か所以上から給与の支払を受けている人(給与年収2,000万円以下で、主たる給与の方で年末調整対象者に限る)のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった従たる給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円以下の場合
(注) 上記合計額が20万円を超える場合であっても、給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません(所法121①二、所基通121-6)。なお、各種所得の金額の合計額に算入される一時所得の金額及び総合長期譲渡所得の金額は、それぞれ2分の1した後の金額となります(所法22②二)。

③  年金受給者(公的年金等の収入金額が400万円以下の者に限る)で、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の場合

 ただし、以下の注意点があります。

上場株式の配当及び特定口座(源泉あり)内の利益

 確定申告を要しない配当所得等又は特定口座(源泉あり)内の上場株式等の譲渡による所得は申告不要が選択できますが、20万円以下規定には関係ありません。つまり、それらを除いた所得で20万円以下であるかで判断すればよいということになります。

 例えば、給与所得990万円で雑所得15万円、上場株式の配当10万円の場合、年末調整が済んでいれば確定申告をする必要はありません。

合計所得金額の判定

 合計所得金額は、確定申告不要20万円以下の所得も含めて判定します。

 例えば、給与所得990万円で雑所得15万円の場合、年末調整が済んでいれば確定申告をする必要はありません。このような確定申告をしない場合でも、合計所得金額は990万円+15万円=1,005万円となります。

 よって、この場合、1,000万円を超えるため配偶者控除を適用することはできません。

住民税の申告

 上記のように、所得税が申告不要に該当する場合でも、住民税には申告不要制度がないため、住民税の申告が必要となります(地方税法317の2①本文)。

確定申告をする場合

 20万円以下規定は確定申告を要しない場合について規定しているものであり、確定申告を行う場合にも、この20万円以下の所得を申告しなくてもよいという規定ではありません。

 したがって、 確定申告を要しない者(所法121)であっても、医療費控除等還付申告を行う場合には、給与所得だけでなく、その20万円以下の所得も併せて申告をする必要があります(所法122①)。

 ただし、確定申告を要しない配当所得等又は特定口座(源泉あり)内の上場株式等の譲渡による所得を除きます(措法8の5、37の11の5)。

国外において支払われる年金等源泉徴収の対象とならない年金の支給を受けている人

 外国の制度に基づき国外において支払われる年金等源泉徴収の対象とならない年金の支給を受けている人は、公的年金等以外の所得金額が20万円以下であっても確定申告は必要となります(所法121③)。

青色申告特別控除55万円(65万円)後の事業所得、不動産所得が20万円以下の場合

 「給与所得及び退職所得以外の所得金額」又は「公的年金等に係る雑所得以外の所得金額」とは、法及びその他の法令の規定により確定申告書の提出又は確定申告書への記載若しくは明細書等の添付を要件として適用される特例等を適用しないで計算した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額から、給与所得の金額及び退職所得の金額の合計額又は公的年金等に係る雑所得の金額及び退職所得の金額の合計額を控除した金額をいうものとしています(所基通121-6)。

 青色申告特別控除55万円(租法25の2③一)(65万円)の要件の1つは、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている個人が、帳簿書類に基づいて作成した貸借対照表等を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出(租法第25の2⑥)することとなっているため、青色申告特別控除55万円(65万円)を適用しないで算定した金額が20万円超か否かで判定します。

 なお、青色申告特別控除10万円(租法25の2①一)を適用する場合には、確定申告書への記載等の手続き要件はありません。よって、他に確定申告書への記載等を要件とする所得計算の特例を適用していない限り、青色申告特別控除(控除額10万円)適用後の所得金額が20万円以下となる場合には、確定申告書の提出は必要ありません。

国税庁HP「青色申告特別控除(10万円)と確定申告の要否」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/07/03.htm

国税庁HP「青色申告特別控除(55万円)と確定申告の要否」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/07/04.htm

同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や不動産等の賃貸料などを受け取っている人

 同族会社の役員などで年末調整済給与以外に、その同族会社から貸付金の利子や不動産等の賃貸料などを受け取っている場合には、それらの所得を含めて計算した税額から配当控除及び年末調整に係る住宅借入金等特別控除の金額を控除した後の税額がある限り確定申告をする必要があります(所法120①、121①ただし書、所令262の2、措法41の2の2④二)。

 令和4年1月1日以後に提出期限が到来する所得税の確定申告書については、上記のとおり計算した所得税の額の合計額が配当控除等の額を超える場合であっても、控除しきれなかった外国税額控除の額があるとき、控除しきれなかった源泉徴収税額があるとき、又は控除しきれなかった予納税額があるときは、その申告書の提出は要しません。

 同族会社からの貸付金利子は、通常、雑所得となり、それが年間20万円以下でも、上記のように確定申告をする必要があるということになります。

 また、同族会社の役員等で少額配当に該当する配当金の支払いを受ける場合には、確定申告書を提出しなければならない場合に該当しません。

「1か所から給与の支払を受けている人」の意味

 1か所から給与の支払を受けているとは、その年中の同一時点においては2か所以上から給与の支払を受けていない場合をいいます。

 ですから、2か所以上から給与の支払を受けている場合であっても、同一時点で2か所以上に勤務しておらず、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の場合には、申告義務は生じません(所法121①一、所基通121-4)。

従たる給与が国外の会社から受ける場合

 2か所以上から給与等の支払いを受けている場合で、その給与等の全部が源泉徴収対象のものである場合には、従たる給与等の支払者から支払いを受ける金額が20万円以下であるときは確定申告は不要とされています。

 ただし、従たる給与が国外の会社から受ける場合のように、その給与が源泉徴収対象でない場合には、確定申告が必要となります(所法121①二、所基通121-5(3))。

 例えば、日本の子会社から給与の支払いを受けている者(年末調整済)が、外国の親会社から20万円以下の給与等(ストックオプションを含む。)の支払いを受けた場合、確定申告が必要となります。

主たる収入は公的年金等であるが給与所得もある方の場合

 2018年度税制改正により、給与収入以外に公的年金等収入がある場合は、給与所得控除額と公的年金等控除額の双方が10万円引き下げられるため、基礎控除額の10万円の引き上げと、所得金額調整控除により、負担増が生じないように調整されました。

 給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額があり、かつ、それらの合計額が10万円を超える場合は、給与所得の金額から、次の算式で計算した金額を控除します。

  給与所得控除後の給与等の金額(上限10万円)+公的年金等に係る雑所得の金額(上限10万円)-10万円

 なお、公的年金等収入以外に給与収入がある場合で、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額の合計額については、以下のように考えます。

公的年金等収入以外に給与収入がある場合で、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額の合計額の誤りやすい事例

(誤った取扱い)
 令和2年分以後の給与所得と公的年金等に係る雑所得がある者の公的年金等に係る雑所得の金額を計算する場合において、「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」を計算する際、所得金額調整控除後の給与所得により計算した。

(正しい取扱い)
 公的年金等に係る雑所得の金額を計算する場合における「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」とは、公的年金等の収入金額がないものとして計算した場合における合計所得金額とされているため、措法41の3の3②(給与所得と公的年金等に係る雑所得を有する者の場合)の規定による所得金額調整控除の適用はないものとして計算することとなる。
 したがって、事例の場合、「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」の計算の際には、所得金額調整控除前の給与所得により計算する(所法35④、所基通35-8)。
 なお、措法41の3の3①(子ども・特別障害者等を有する者等の場合)の規定による所得金額調整控除を適用する場合は、所得金額調整控除後の給与所得で計算する。

令和3年版 誤りやすい事例(所得税法) 大阪国税局より