商品

 個人事業主が、法人成りに際して法人に資産を引き渡す場合には、固定資産である土地や建物等と棚卸資産(商品)とは別に取扱います。

 固定資産である土地や建物等、車両及び什器については、個人に譲渡所得として課税されることになりますが、棚卸資産については事業所得として課税されることになります。

 なお、個人事業主が新設法人に棚卸資産を譲渡する場合の価額は、原則として、通常他に販売する価額である必要があります。

 ただし、棚卸資産の譲渡対価が、通常他に販売する価額の70%相当額で販売しても差し支えないこととされています(所法40、所基通39-1、40-2、40-3)。

 なお、譲渡対価が通常売買される価額の70%に相当する金額に満たないときは、通常売買される価額の70%相当額により譲渡があったものとして事業所得の総収入金額に算入されることになります。
 
 また、所得税法上は、著しく低い対価(おおむね70%未満)による譲渡に該当しない場合であっても、法人税法上は、時価より低い価額で法人に引き継ぐと、譲渡価額から時価までの部分は、その法人が贈与を受けたことになり益金に算入されることになっています(法法22②)。
 
 通常の場合は、個人事業主当時の帳簿価額で新設法人に引き渡しても、そこまで気にする必要はないのですが、個人事業主の業種が不動産業であり、棚卸資産が土地や建物等の場合は注意が必要といえます。

棚卸資産(商品)の経理処理

 個人事業主側の経理処理
 現金預金(or事業主貸) ××  売上高 ××

 会社側の経理処理
 仕入高 ××   現金預金(or役員借入金) ××

所得税法基本通達

(家事消費又は贈与等をした棚卸資産の価額)
39-1 法第39条又は第40条《たな卸資産の贈与等の場合の総収入金額算入》に規定する消費又は贈与、遺贈若しくは譲渡の時における資産の価額に相当する金額は、その消費等をした資産がその消費等をした者の販売用の資産であるときは、当該消費等の時におけるその者の通常他に販売する価額により、その他の資産であるときは、当該消費等の時における通常売買される価額による。

(著しく低い価額の対価による譲渡の意義)
40-2 法第40条第1項第2号に規定する「著しく低い価額の対価による譲渡」とは、同条に規定する棚卸資産の39-1に定める価額のおおむね70%に相当する金額に満たない対価により譲渡する場合の当該譲渡をいうものとする。
(注) 法第40条第1項第2号の規定の趣旨は、たとえ譲渡の形式をとっている場合でも、実質的に部分的な贈与をしたと認められる行為は、その実質に着目して課税処理をすることにあるから、棚卸資産を著しく低い対価で譲渡した場合であっても、商品の型崩れ、流行遅れなどによって値引販売が行われることが通常である場合はもちろん、実質的に広告宣伝の一環として、又は金融上の換金処分として行うようなときには、この規定の適用はないことに留意する。

(実質的に贈与をしたと認められる金額)
40-3 法第40条第1項第2号に規定する「実質的に贈与をしたと認められる金額」とは、同項に規定する棚卸資産の39-1に定める価額とその譲渡の対価の額との差額に相当する金額をいうのであるが、当該棚卸資産の39-1に定める価額のおおむね70%に相当する金額からその対価の額を控除した金額として差し支えない。