遺言では、代襲相続の効力が生じないことが最高裁平成23年2月22日第三小法廷判決(民集65巻2号699頁)で明らかになりました。

 例えば、長男が亡くなった場合に、長男の子供に財産を遺したい場合は、遺言に「長男が死亡した場合には、 長男の子供に相続させる」といった明記する必要があるということです。

最高裁平成23年2月22日第三小法廷判決(民集65巻2号699頁)

(事案内容)
 金沢市内に不動産などの財産を所有していた女性には長男と長女がおり、1993年に遺言で長男に全財産を相続させるとしたが、長男は2006年に母親より先に死亡。その後、母親も死亡し、長女が法定相続分の権利の確認を求めて提訴していた。長男の子が代わりに相続する「代襲相続」が認められるかどうかが争われた。

 一審・東京地裁判決は、長男が亡くなった場合に、その子3人が全財産を相続することは、長男に全財産を残したいと望んでいた母親の意に沿うと判断。

 これに対し二審・東京高裁判決は、遺言には「長男が死亡した場合には子が代襲相続する」とは明記されていなかったことから、長女側の主張を認めた。そして、上告審・最高裁判決は、 代襲相続を認めなかった二審・東京高裁判決を支持した。

(判決要旨)
 遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはない。