社員が複数なら各社員の資本の持分管理をする

 合同会社が株式会社と比べて大きく違うところは、株式会社の株主平等と違って合同会社の場合、持分という概念があり、その持分は各社員ごとに異なるということです。よって、合同会社は各社員の資本の持分管理をする必要があります。

 なお、ここでいう持分とは「社員が会社財産に対して有する分け前を示す計算上の数値」(会社法コンメンタール第14巻/神田秀樹(編)111頁より引用)のことです。

 利益の配当を請求する社員や請求しない社員がいたり、損益の分配割合が出資の価額に応じていなかったり、社員の入社の時期が違ったり等であると、ちゃんと管理していないと各社員の資本の持分がどのくらいあるのかわからなくなります。例えば、貸借対照表上の「純資産の部(社員資本)」が以下のようになっているとします。

資本金    300万円
資本剰余金  100万円
利益剰余金  200万円

 上記の資本金、資本剰余金、利益剰余金は社員全員分の総額です。社員が1人だったら問題ありません。その社員の資本の持分は上記の金額と一緒だからです。

 ただし、社員がAとBの2人がいたとします。社員A、Bそれぞれの社員資本の持分がどのくらいあるのか、 貸借対照表上ではわかりません。ですから、「純資産の部」が変動した時は、その時点で、以下のような「社員資本持分管理表」 を作成しておきましょう。

 最低でも、会社設立時、決算が終了時(損益の分配時)、利益の配当時といった社員個別の資本持分が変動するたびに作成しておくべきだといえます。それが、将来の社員間での争いを防ぐことになります。また、備考欄に、前回作成した「社員資本持分管理表」と何が違っているのかわかるように記載をしておくと良いでしょう。

合同会社 〇 〇 社員資本持分管理表 令和〇年〇月〇日作成( 〇回目 ) 単位:円

社員名資本金 資本剰余金 利益剰余金合計
2,000,000 500,000 500,000 3,000,000
1,000,000 500,000 1,500,000 3,000,000
合計 3,000,000 1,000,000 2,000,000 6,000,000
(備考)
 第〇期(事業年度令和〇/〇/〇~×/×/×)決算により、Aに利益剰余金200,000円、Bに利益剰余金200,000円が分配された。

設立時における社員資本の持分管理

 合同会社を設立したら、まず、設立日(成立日)における貸借対照表を作成する必要があります(会社法617①)。

 例えば社員Aが200万円、社員Bが100万円を出資し、その出資した金額全額を資本金として、資本剰余金に計上しなければ、設立時の貸借対照表上の「純資産の部(社員資本)」は以下のようになります。

(社員資本)
 資本金    3,000,000円

 これだけですと、ぱっと見、社員A、社員Bそれぞれの個別の資本持分がわからないので、貸借対照表作成と同時に以下のような「社員資本持分管理表」を作成します。

合同会社 〇 〇 社員資本持分管理表 令和〇年〇月〇日作成(1回目 ) 単位:円

社員名資本金 資本剰余金 利益剰余金合計
2,000,000 2,000,000
1,000,000 1,000,000
合計 3,000,000 3,000,000
(備考)
 令和〇年〇月〇日会社設立により、Aが資本金2,000,000、Bが資本金1,000,000を出資した。

 なお、合同会社の多くが、設立時において出資した全額を資本金としますが、会社によっては出資した金額の一部を資本剰余金とする場合があるでしょう。 例えば社員Aが200万円(資本金100万円、資本剰余金100万円)、社員Bが100万円(資本金50万円、資本剰余金50万円)として出資した場合、設立時の貸借対照表上の「純資産の部(社員資本)」は以下のようになります。

(社員資本)
 資本金    1,500,000円
 資本剰余金  1,500,000円

 そして、貸借対照表作成と同時に以下のような「社員資本持分管理表」を作成します。

合同会社 〇 〇 社員資本持分管理表 令和〇年〇月〇日作成( 1回目 ) 単位:円

社員名資本金 資本剰余金 利益剰余金合計
1,000,000 1,000,000 2,000,000
500,000 500,000 1,000,000
合計1,500,000 1,500,000 3,000,000
(備考)
 令和〇年〇月〇日会社設立により、Aが資本金1,000,000、資本剰余金1,000,000、Bが資本金500,000、資本剰余金500,000を出資した。

「損益の分配」と「利益の配当」の違い

 社員の持分の増減については、以下のように考えます。

「会社に利益が生じれば、各社員の持分(の数値)が増加し、損失が発生すれば、持分が減少するが、必ずしも、そのつど、社員に利益を配当したり、損失をてん補させたりする必要はない。増減した社員の持分は、社員の退社または会社の清算の際に現実化する」(引用 会社法コンメンタール第14巻神田秀樹(編) 11ページ)

 そして、会社法では「損益の分配」と「利益の配当」を区別して規定しているのですが、この2つの関係は次のように考えます。

損益の分配:合同会社が事業経営により得た利益や損失を計算上、各社員に分配すること
利益の配当:分配された利益に相当する財産を現実に払い戻しすること

 事業年度ごとに作成される計算書類により合同会社の利益または損失の額が確定します。例えば、会社がある事業年度において利益を得たとします。合同会社の場合、法人ですので、およそ30%弱の法人税等(国税と地方税合わせて)がかかります。

 そして、その法人税等の税引き後の利益(当期純利益金額)が、各社員に分配がされます。なお、分配された利益について、利益配当をせずに利益剰余金として会社内部に留保しておくことは問題ありません。

 また、会社がある事業年度において損失を出したとします。そして、その損失が、各社員に分配がされます。なお、分配された損失について、すぐに社員が補填しないといけないというわけではありません。

 例えば、社員Aが200万円、社員Bが100万円出資して設立した資本金300万円の合同会社が税引前当期純利益金額90万円を得て、それに対する法人税等が30万円の場合、当期純利益金額(利益剰余金)60万円が増えることになります。

 定款に別段の定めがなければ、持分の数値の増加分はAが40万円、Bが20万円となります。これが「損益(利益)の分配」です。

合同会社 〇 〇 社員資本持分管理表 令和〇年〇月〇日作成( 〇回目 ) 単位:円

社員名資本金 資本剰余金 利益剰余金合計
2,000,000 400,000 2,400,000
1,000,000 200,000 1,200,000
合計 3,000,000 600,000 3,600,000
(備考)
 第〇期(事業年度令和〇/〇/〇~×/×/×)決算により、Aに利益剰余金400,000円、Bに利益剰余金200,000円が分配された。

 そして、Aが10万円の利益の配当請求したので、配当をしたとします。これが「利益の配当」です。

合同会社 〇 〇 社員資本持分管理表 令和〇年〇月〇日作成( 〇回目 ) 単位:円

社員名資本金 資本剰余金 利益剰余金合計
2,000,000 300,000 2,300,000
1,000,000 200,000 1,200,000
合計 3,000,000 500,000 3,500,000
(備考)
 令和〇/〇/〇、Aに対し100,000円の配当をした。

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