法人税がかかる所得の算出方法は、次のとおりです。
 益金-損金=所得

 そして、損金の額に算入すべき金額には、売上原価や販売管理費などがあります(法法22)。しかし、売上原価と販売費及び一般管理費では、損金算入の計上に違いがあります。

売上原価の見積計上

 売上と売上原価には、明確な対応関係があります。そのため仮に、売上原価となるべき費用の額が事業年度終了の日までに確定していない場合であっても、見積計上が認められます(法基通2-2-1)。

 なぜなら、売上原価が確定したときだけに、損金計上を認めるとなると不都合が生じる場合があります。例えば、今期に売上計上をするが、それに対応する売上原価は確定してないので次期に計上した場合、その事業年度において売上と売上原価が対応しなくなります。

 しかし、売上と売上原価には、明確な対応関係があります。そのため、例え、売上原価が確定していなくても、売上に対応する売上原価は見積計上して、同一の事業年度において対応させるということです。

販売費及び一般管理費の債務確定

 売上と販売費及び一般管理費にも、対応関係はあります。売上をあげるために、販売費及び一般管理費を使っているからです。

 しかし、売上と売上原価の関係のような明確な対応関係はありません。そのため、見積計上は認められず、厳密に債務として確定したものだけが損金算入することができます。債務確定とは、以下の3つの要件を全て満たしている場合です(法基通2-2-12)。
 ①契約等で債務が成立している
 ②役務の提供等の具体的な給付があった
 ③金額を合理的に算定できる

法人税法基本通達

(売上原価等が確定していない場合の見積り)
2-2-1 法第22条第3項第1号《損金の額に算入される売上原価等》に規定する「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価」(以下2-2-1において「売上原価等」という。)となるべき費用の額の全部又は一部が当該事業年度終了の日までに確定していない場合には、同日の現況によりその金額を適正に見積るものとする。この場合において、その確定していない費用が売上原価等となるべき費用かどうかは、当該売上原価等に係る資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に関する契約の内容、当該費用の性質等を勘案して合理的に判断するのであるが、たとえその販売、譲渡又は提供に関連して発生する費用であっても、単なる事後的費用の性格を有するものはこれに含まれないことに留意する。

(債務の確定の判定)
2-2-12 法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。
(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。