自己の建物に内部造作をした場合
概要
自己の建物について行った内部造作(その造作が建物附属設備に該当する場合を除く。)については、その造作の構造が当該建物の骨格の構造と異なっている場合においても、それを区分しないで当該建物に含めて当該建物の耐用年数を適用します(耐通1-2-3)。
つまり、自己所有の建物について行った内部造作は、それが建物付属設備に該当する場合を除き、当該建物に含めてその耐用年数を適用することとされており、新たな建物の取得には当たらないことになります(建物に対する資本的支出となります)。
したがって、例えば、旅館等の鉄筋コンクリート造の建物について、その内部を和風の様式とするため特に木造の内部造作を施設した場合においても、当該内部造作物を建物から分離して、木造建物の耐用年数を適用することはできません。
また、工場建物について、温湿度の調整制御、無菌又は無じん空気の汚濁防止、防音、遮光、放射線防御等のために特に内部造作物を施設した場合には、当該内部造作物が機械装置とその効用を一にするとみられるときであっても、当該内部造作物は建物に含めることになります。
自社の所有する建物(鉄筋コンクリート造)の事務所内に、新たにコンピユーターを設置するための部屋を主として木材を使用し造作したとしても、建物本体とは別に木造建物の耐用年数を適用することができません。
なお、建物を構成するものは、建物の基礎、柱、壁、はり、階段、窓、床及びこれらの仕上施工物のほか、その従物たる畳、ふすま、障子、ドア、リノリウムその他本体と一体不可分の内部造作物の一切とされており、店舗等のシャッター、建物の壁面を構成するショーウィンドー等も建物に含まれます。
他人の建物に内部造作をした場合
概要
法人が建物を賃借し、自己の用に供するため造作した場合(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)には、自己が所有している建物に対して行った資本的支出とは異なりその造作を一の資産として、その造作した建物の耐用年数およびその造作の種類・用途・使用材質等を勘案して合理的に耐用年数を見積もることとされています(耐通1-1-3)。
そして、その合理的に見積もった耐用年数により償却します。
なお、同一の建物についてされた造作は、その全てをまとめて一の資産として償却をしますから、その耐用年数は、造作の種類別に見積もるのではなく、その造作全部を一の資産として総合して見積もることになります(耐通1-1-3注)。
他人の建物についてなされた内部造作は、①建物本体の所有者と内部造作を施した者が異なること、②構造体を基礎として算定されている建物の耐用年数を造作部分のみの場合について適用することは相当でないことを理由として、その内部造作を「一の資産」として耐用年数を合理的に見積もることとするものです。
合理的に見積もった耐用年数
現行の耐用年数省令における耐用年数の算定の基礎は、昭和26年の「固定資産の耐用年数等に関する省令」です。
〇東京地裁平成17年1月21日判決(税資255号-23(順号9904))の「固定資産の耐用年数等に関する省令」に関する判示
昭和26年の「固定資産の耐用年数等に関する省令」は、建物の耐用年数について、建物本体のほかに、建物附属設備に該当するものを除いた個々の内部造作を総合して算定した上、更に建物の構造及び用途の違いを勘案して、具体的な建物の耐用年数に差を設けており、店舗用なら店舗用、旅館用なら旅館用というように用途にふさわしい内部造作を想定して算定したものである。 そうすると、「固定資産の耐用年数等に関する省令」においては、建物附属設備に該当しない建物の内部造作については、その構造のいかんを問わず、本体である建物に含めて償却されることが想定されていたと認めることができる。そして、このような算定方式は、現行の耐用年数省令における耐用年数の算定の基礎となっていることが認められる。 |
具体的には、以下のようにして鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造の建物(事務所・店舗用)の耐用年数が算定されました。
金額/1万円 | 耐用年数 | 金額/年数 | |
---|---|---|---|
防水設備 | 135 | 20 | 6.7 |
床 | 720 | 30 | 24.0 |
外装タイル | 720 | 50 | 14.4 |
窓サッシ | 1,260 | 30 | 42.0 |
構造体その他 | 7,165 | 150 | 47.7 |
計 | 10,000 | 134.8 |
以上により、耐用年数は10,000/134.8=74.1・・・75年を耐用年数としています(75年は当時で、平成10年に50年となりました)。
つまり、建物は防水設備、床、外装、窓、構造体の主要な5部分から成り立っているとし、各部の耐用年数を総合して制定されたものであるということになります。また、建物附属設備に該当するものは除かれています。
この考え方を踏まえて、他人の建物に内部造作をした場合の合理的に見積もった耐用年数を算定するのがよいと思います。
具体的な造作の耐用年数の見積り方法については、まず造作工事費を個別に分類し、各部分ごとにそれぞれの造作工事費の金額を確定し、次に各部分ごとに使用可能期間を見積った上で総合耐用年数の算定方式にしたがって行うのが原則です。
「審理専門官情報第23号 大阪国税局個人課税審理専門官 平成19年1月26日 他人の建物について行った内部造作に係る減価償却」より
合理的に見積もった耐用年数の計算例(単位:円)
金額 | 耐用年数 | 金額/年数 | |
---|---|---|---|
ショーウィンドー(建物一体型) | 5,000,000 | 16年 | 312,500 |
その他の内装部分(木造) | 2,000,000 | 22年 | 90,909 |
計 | 7,000,000 | 403,409 |
以上により、耐用年数は7,000,000/403,409=17.3・・・17年となります。
賃借期間を耐用年数ができる場合
造作した建物について賃借期間の定めがあり、その賃借期間の更新ができないもので、かつ、有益費の請求または買取請求をすることができないものについては、その賃借期間を耐用年数として、これらの造作を償却することができます(耐通1-1-3但し書き)。
ところで、減価償却資産として計上した造作について未償却残額があるうちにその賃借建物を明け渡して返還した場合に、その造作の買取請求ができないときは、その未償却残額を除却損失等としてその返還した事業年度において損金の額に算入することになります。
なお、建物の返還の際に造作の買取請求ができる場合には、法律上は買取請求と同時に造作の所有権が家主に移転し、造作の時価に相当する金銭債権が生じるから、この金銭債権の額を益金に計上するとともに、造作の未償却残額を損金に計上することになります。
建物附属設備に造作した場合
建物附属設備に造作した場合には、その建物附属設備の耐用年数により、その造作を償却します。
例えば、減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第1の「建物附属設備」の「店用簡易装備」に該当するものである場合には、3年がその法定耐用年数になり、同別表第1の「建物附属設備」の「可動間仕切り」に該当するものである場合には、「簡易なもの」については3年、「その他のもの」については15年がその法定耐用年数となります。