暗号資産

概要

 ビットコインETF(上場投資信託)での譲渡所得は申告分離課税の対象となる可能性はあると思います。ただし、国税庁のオフィシャルな発表がされるまで、慎重な行動が必要だと思います。

 石破総理は「暗号資産による所得に20%の税率を適用することに国民のご理解が得られるか、家計が暗号資産を購入することを、国として投資家保護規制が整備されている株式や投資信託のように推奨することは妥当なのか、などの課題があり、丁寧な検討が必要と考えている。また、暗号資産をETFの対象とすることについては、暗号資産を国民にとって投資を容易にすることが必要な資産とすべきかどうかを踏まえ検討する必要がある」(令和6年12月2日衆議院本会議)と慎重な姿勢を示しています。

 よって、国内の証券会社を通じてのビットコインETFの購入は、直近では期待できないと思います。

 仮定として、日本の居住者が国外の証券会社(日本の金融庁に登録されていない業者)を通じて、ビットコインETFを購入、譲渡したとします。

 この場合、申告分離課税の対象となる可能性はあると思います。その場合、おそらくは、日本の居住者が国外の証券会社を通じて、上場株式等を譲渡した場合の所得税の取扱いと同じようになる可能性はあると思います。

 日本の居住者が国外の証券会社を通じて、国外上場株式を譲渡した場合の所得税は申告分離課税となります。

 ただし、譲渡損失の(配当との)損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けることはできません。

 このようになった場合、譲渡損失が出た場合は、繰越ができず損失の切捨てとなってしまいますが、譲渡益が出た場合、申告分離課税となり20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)の税率ですみます。

 ただし、国税庁のオフィシャルな発表がされるまで、慎重な行動が必要だと思います。なお、国税庁のオフィシャルな発表がされた場合の注目すべき点は以下となります。

(1)ビットコインETFでの譲渡所得は申告分離課税なのか、それとも総合課税なのか?
(2)国内の証券会社(日本の金融庁に登録されている業者)を通じて譲渡した場合と海外の証券会社(日本の金融庁に登録されていない業者)を通じて譲渡した場合の違いはあるのか?ある場合は、どのような違いがあるのか?
(3)暗号資産の売却取引は総合課税のままなのか?

ビットコインETFを国内の証券会社を通じて購入できるようになった場合

 ビットコインETFを国内の証券会社を通じて購入できるようになるのも時間の問題だといえます。直近では期待できないと思いますが、個人的には、5年、10年かかるようなことでないと思います。

 特定口座(源泉徴収あり)でビットコインETFを購入できれば、税率の安い申告分離課税の対象となり、また、面倒な所得・税金計算をする必要がないため、投資家にとっては非常にありがたい話です。

 さらに、nisa口座でのビットコインETFを購入できれば、税額0円となります(もっとも、譲渡損が生じた場合は、切り捨てとなりますが)。

 よって、ビットコインETFを国内の証券会社を通じて購入できれば、多くの投資家にとってトクをする話なのですが、ソンをする人もいます。

 ビットコインETFが国内の証券会社を通じて購入でき税金の面でトクとなる一方、暗号資産(ビットコイン)そのものの売却取引は総合課税のままであるとなった場合、日本の居住者は、暗号資産そのものを買うと税制上損となります。

 よって、日本の居住者は、暗号資産(ビットコイン)そのものを買わずに、証券会社を通じてビットコインETFを購入するという流れになるでしょう。

 つまり、暗号資産そのものを買う日本の居住者は、ぐっと減るでしょう。そうなった場合、国内の暗号資産取引所は大ダメージを受けるでしょう。

 もっとも、証券会社系列の暗号資産取引所の場合は、暗号資産そのものの取引が大幅に減っても、ビットコインETFの取引が証券会社でできるので問題ないでしょう。

 一番大ダメージを受けるのは、暗号資産に関する事業をしている新興、中小企業でしょう。経営が成り立たなくなり倒産するところも多くでるでしょう。

 個人的には、国内の暗号資産取引所を通じて売買した一定の暗号資産(ビットコインなど)に関しては、申告分離課税の対象とすべきなのではないかと思います。

 ビットコインETFや暗号資産の所得税の取扱いは、今後、注目すべきことといえます。

関連記事