敷金
敷金については、契約において、修繕箇所が無い場合には退去時に全額返済される場合には、支払ったときに、全額「敷金」として計上します。
そして、退去時に修繕箇所があり負担する場合は、負担金額を「修繕費」等で処理します。
(例1)事務所を借りる際に、敷金100万円を支払った。
(答1)敷金 100万円 現金預金 100万円
(例2)事務所を退去する際に、修繕費10万円を負担した。
(答2)現金預金 90万円 敷金 100万円
修繕費 10万円
なお、契約によっては退去時に、修繕箇所が無い場合でも、一定額が返還されない場合があります(敷引き)。
この場合は、あらかじめ返還されないと決められた一定額は、実質的には敷金ではないため、下記、礼金に準じて経理処理する必要があります。
礼金
通常、礼金は敷金と違い、将来返金されません
そのため、礼金は、原則として、税務上の繰延資産である「資産を賃借するための権利金等(法令14①六号ロ、法基通8-1-5(1))」として、下記、「建物を賃借するために支出する権利金等の償却期間」で償却することになります。
建物を賃借するために支出する権利金等の償却期間
細目 | 償却期間 |
---|---|
(1) 建物の新築に際しその所有者に対して支払った権利金等で当該権利金等の額が当該建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、実際上その建物の存続期間中賃借できる状況にあると認められるものである場合 | その建物の耐用年数の7/10に相当する年数 |
(2) 建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金等で、契約、慣習等によってその明渡しに際して借家権として転売できることになっているものである場合 | その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数 |
(3) (1)及び(2)以外の権利金等の場合 | 5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間) |
(注1) 上記の償却期間に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。
(注2) 償却限度額は、繰延資産の額を償却期間の月数で割ったものに、その事業年度の月数を掛けて計算した金額となります。
ただし、事業年度の中途での支出の場合は、「その事業年度の月数」は支出の日から事業年度末までの月数となります。この場合、月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数はこれを1か月とします。
(注3) 繰延資産の償却費を損金算入する場合には、確定申告書に繰延資産の償却額の計算に関する明細書(別表16(6))を添付する必要があります。
経理処理
税務上の繰延資産に該当する場合は、税務上の取り扱いのため、会計上は「長期前払費用」などで経理処理をします。
一般的に多いケースは、上記「(3) (1)及び(2)以外の権利金等の場合」であり、原則5年で償却しますが、契約更新時に再度、更新料の支払いが必要な場合には、賃借期間で償却します。
なお、税務上の繰延資産の金額が20万円未満である場合は、その支出する日の属する事業年度において損金経理をすれば、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます(法令134)。
(例1)事務所を借りる際に、礼金10万円を支払った。
(答1)支払手数料 10万円 現金預金 10万円
(例2)事務所を借りる際に、礼金40万円を支払った。
(答2)長期前払費用 40万円 現金預金 40万円
(例3)礼金40万円を支払ったが、2年後に更新料を支払う契約であるため、今期決算で6月分(全体は24月分)を償却した。
(答3)減価償却費(支払手数料) 10万円 長期前払費用 10万円
なお、賃借期間が2年であっても、契約更新時に再び更新料等を支払うことを必要としない契約の場合には、償却期間は5年となります。
保証金
本来、保証金は、将来返還されるものですが、その金額のうち一部返還されないものは、返還されないことが確定した都度、権利金等に振り替わったものとして、税務上の繰延資産である「資産を賃借するための権利金等(法令14①六号ロ、法基通8-1-5(1))」として処理することになります。
例えば、保証金1000万円を支払い、5年間にわたって毎年20%ずつ償却されるような契約をした場合は、毎年200万円の権利金の支出があったものとして支出の効果の及ぶ期間をもとに償却することになります(法基通8-2-3)。
仲介手数料
建物の賃借に際して支払った仲介手数料の額は、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができます(法基通8-1-5(注))。
(例1)事務所を借りる際に、不動産業者に仲介手数料10万円を支払った。
(答1)支払手数料 10万円 現金預金 10万円