株主総会

概要

 株式会社においては、取締役は、貸借対照表、損益計算書等の計算書類を定時株主総会に提出します(会社法438①)。そして、その提出された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければなりません(会社法438②)。

 なお、法人税の申告書は、原則として各事業年度終了の日の翌日から2月以内に提出しなければなりません(法法74①)。 そして、その法人税の申告書には貸借対照表、損益計算書等を添付しなければならないことになっています(法法74③、法規35)。

 よって、3月末決算の会社が法人税の申告書を仮に5月25日に提出した場合、それより前に定時株主総会が開催されていたことになります。5月25日に法人税の申告書を提出した場合、5月26日以降に定時株主総会が開催されたということはないということになります。

 定時株主総会が開催された場合には、忘れずに、定時株主総会議事録を作成しておきましょう。

確定申告書の提出期限の延長の特例

 定款等の定めにより、各事業年度終了の日の翌日から2月以内に当該各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、所轄税務署長に申請することで法人税に係る申告期限の1か月延長特例が認められます(法法75の2 ①)。

取締役会設置会社

 取締役会設置会社においては、計算書類(貸借対照表、損益計算書等)は取締役会の承認を受けなければなりません(会社法436③)。

 取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に対し、取締役会の承認を受けた計算書類を提供しなければなりません(会社法437)。

 法人税申告書別表一の「決算確定の日」の欄には、定時株主総会の開催日を記載しますが、取締役会の承認により決算を確定させて定時株主総会前に申告書を提出する場合には、取締役会の承認日を記載することになります。

合同会社の場合

 会社法では、合同会社における計算書類の承認に係る規定を置いていません。ただし、合同会社は定款自治が働きますので、定款で計算書類の承認について記載すれば、その通りに承認するということになります。

定時株主総会議事録を作成していなかった場合

 定時株主総会議事録を作成していない(そもそも、定時株主総会を開催していない)中小企業は、結構、多いでしょう。

 定時株主総会の承認を経ていない決算書類に基づいて行われた法人税の確定申告は有効なのかで争われた福岡地裁平成19年1月16日判決(訟務月報53巻9号2741頁)では、有効と判示され、控訴審の福岡高裁平成19年6月19日判決(訟務月報53巻9号2728頁)でも有効とされ、確定しています。

 ですから、定時株主総会議事録を作成していなくとも、法人税の申告には影響がないということになります。

 ただし、定時株主総会では計算書類の承認だけではなく、役員給与の支給額(改定)も定められるのが一般的です。役員給与の支給額(改定)を明らかにするためにも、定時株主総会議事録の作成は必須といえます。

 また、定時株主総会議事録がないと、税務調査の際に問題となることもあるでしょう。ですから、定時株主総会議事録は作成しておきましょう。

福岡地裁平成19年1月16日判決(訟務月報53巻9号2741頁)要旨(棄却)(控訴)

① 会社は、法人税の申告に当たり、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づき所定の事項を記載した申告書を税務署に提出しなければならない(法法74①)。この規定の趣旨は、法人税の課税所得については、会社の最高の意思決定機関である株主総会又は社員総会の承認を受けた決算を基礎として計算させることにより、それが会社自身の意思として、かつ正確な所得が得られる蓋然性が高いという点にある。そうすると、同規定の「確定した決算に基づき」とは、株主総会又は社員総会の承認を受けた決算書類を基礎として所得及び法人税額の計算を行う意味と解すべきである。

② しかしながら、我が国の株式会社や有限会社の大部分を占める中小企業においては、株主総会又は社員総会の承認を経ることなく、代表者や会計担当者等の一部の者のみで決算が組まれ、これに基づいて申告がなされているのが実情であり、このような実情の下では、株主総会又は社員総会の承認を確定申告の効力要件とすることは実体に即応しないというべきであるから、株主総会又は社員総会の承認を経ていない決算書類に基づいて確定申告が行われたからといって、その確定申告が無効になると解するのは相当でない。
 したがって、決算がなされていない状態で概算に基づき確定申告がなされた場合は無効にならざるを得ないが、当該会社が、年度末において、総勘定元帳の各勘定の閉鎖後の残高を基に決算を行って決算書類を作成し、これに基づいて確定申告した場合は、当該決算書類につき株主総会又は社員総会の承認が得られていなくても、当該確定申告は無効とはならず、有効と解すべきである。