概要
公的年金等とは、税法上、「雑所得」として所得税・住民税の課税の対象となります。
ここでいう公的年金等とは、国民年金や厚生年金、共済組合から支給を受ける老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金、老齢共済年金)、恩給(普通恩給)や過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金、確定給付企業年金契約に基づいて支給を受ける年金などのことをいいます。
この公的年金等の中には、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)と障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)が入っておらず、遺族年金と障害年金は所得税・住民税が課税されません。
所得税
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等(源泉徴収の対象となっている)の「収入金額」が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の「所得金額」が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません(所法121③、公的年金等に係る確定申告不要制度)。
年金受給者の確定申告手続に伴う負担を減らすため、このような「公的年金等に係る確定申告不要制度」が設けられています。
「収入金額」が400万円超である場合は、他に所得がなくても、確定申告が必要です。
「収入金額」と「所得金額」は違う概念ですので、間違わないように注意が必要です。「所得金額」とは「収入金額」から必要経費などを差し引いた金額です。
なお、確定申告の必要がない場合であっても、例えば、生命保険料控除や損害保険料控除、医療費控除など各種の所得控除の適用による所得税の還付を受けるための確定申告をすることはできます。
確定申告をする場合は、雑所得以外の所得金額が20万円以下である所得についても申告をする必要があります。
源泉徴収の対象とされない米国年金など国外年金を受給している方は、公的年金等に係る確定申告不要制度の適用となりません(つまり、確定申告が必要です)。
住民税
上記の所得税における公的年金等に係る確定申告不要制度に該当する場合であっても、住民税には申告不要制度がないため、原則として、住民税の申告が必要となります(地法317の2①本文)。
ただし、公的年金等に係る所得以外の所得を有しなかった方で、申告において各種所得控除等の適用を受けない方又は所得割の納税義務を負わないと認められる方のうち市町村の条例で定めるものについては住民税の申告は必要はありません(地法317の2①ただし書)。
各種所得控除等の適用を受けない方とは、「公的年金等の源泉徴収票」に記載されている控除(社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除、基礎控除等)以外の各種控除の適用を受けない方のことをいいます。
例えば、生命保険料控除や損害保険料控除、医療費控除などの各種控除の適用を受けたい場合は申告をする必要があります。
通常、「公的年金等の源泉徴収票」に記載されている控除(社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除、基礎控除等)以外の各種控除の適用を受ける場合には、所得税の確定申告をすると思います。
所得税の確定申告をした場合には、税務署から地方公共団体に確定申告書等がデータで送信されますので、別途、住民税の申告書を提出する必要はありません。
遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)と障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)
老齢基礎年金(国年法15一)及び付加年金(国年法15四)以外の給付に対しては租税等を課さない旨規定されています。(国年法25)。
また、老齢厚生年金(厚年法32一)以外の保険給付に対しては租税等を課さない旨規定されています(厚年法41②)。
よって、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)と障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)は、所得税・住民税が課税されません(所法9①三、所基通9-2)。
同時に2つ以上の(基礎)年金給付の受給権を取得したときは、受給権者はそのうちの1つを選択し、他の年金給付は支給停止となります(国年法20①)。
例えば、老齢基礎年金と障害基礎年金の年金給付の受給権を取得していても、どちらか1つを選択する必要があります。
老齢基礎年金と障害基礎年金の年金給付の受給権を取得した場合、ほとんどの方が、障害基礎年金を選択します。
その理由は、老齢基礎年金より障害基礎年金を受給したほうが受給額が大きくなることが多いという理由はありますが、障害基礎年金は非課税であるという理由もあります。